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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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「違うよ。虹七ちゃん。君は赫夜さんや真珠さんの宝物だ。だから傷付いて欲しくない…コハクくん、彼女らを護って大型飛行艇まで連れて行ってくれ!」
 佑也の言葉にコハクは頷く。
「行こう。メイベルさんたちにも連絡を入れて、撤退の準備をするよ!」
「ええ」
「赫夜は佑也さんが死守してくれるよね? 約束してくれる?」
 アリアの言葉に佑也は
「必ず守る」
 そう答えるとアリアや美羽はこくり、と首を縦に振るとその場から撤退を始めた。
 その姿をみた赫夜はほっとする。 
 赫夜はアッサシーナ・ネラに扮して居た折、使っていた爆薬の残りを隠し持っていたらしく、それを思い切り、ダンツオ隊に投げると激しい爆音が鳴り響く。これでほぼ、ダンツオ隊は全滅に近い状態になったはずだ。
(これ以上、爆破を続けると浮遊島自体が危ないな…)
 赫夜はそう壊れた壁の影に隠れつつ、真珠の姿を探すと、にゃん丸とリリィの側におり、そしてすこし離れたところにミケロットを見つけた。
「ミケロット…」
 一瞬警戒するが、ミケロットが三人に危害を加える様子がないのを見て、ある種の確信が赫夜の中には浮かんだ。
「ミケロットには、真珠を傷つけることはできない…このような事態だからこそ、だ…」
 はあはあ、と息を継ぐと安心したのか、星双頭剣の光も一層強さを増す。
(死なない。私は死なない…そう約束したんだ! みんなと!)
 そう強く思いながらも、何処かで赫夜は死をも覚悟していた。これほどまでに人を殺した自分が、生きて幸せになるのは許されないような気もしていた。
(…でも、生きる。…私は生きる…神様がいるかは分からないけれど、神様がいいよって言ってくれるまで、私は生きてみせる…なにより、私には愛する友と妹がいる…!!)
 そして赫夜はまた、立ち上がった。
「セルバトイラの赫夜だ! 逃げも隠れもしない! かかってくるがいい! ケセアレとその部下達よ!」

第2章 心の影 

「みなさん、下がって!」
影野 陽太(かげの・ようた)自身は「五色に光る耳あて」を耳栓がわりに使用して防音し、武装「音波銃」の出力を調整して、可聴域の限度に近い高音を広域照射で大広間中に反響させて、戦いを少しでも収めようと努力していた。
「ぐああ!」
 部下達の耳には酷く反響したらしい。特に肉体改造を施していたネッリ隊はダメージが大きいようで、しばらく動けない。
「ケセアレさん! 俺たちの話を聞いて下さい!」
 音響を落とすと、陽太はケセアレに向かって説得を始める。
「真珠さんも、ルクレツィアさんもこんなことを望んではいないでしょう!? それでもまだ、赫夜さんと戦う意味ってあるんですか! 何があなたをそうさせているんですか!」
 ケセアレにも聴覚にもダメージがあったようだが、それほど気にはならなかったようだ。
「…それを私がお前達に話さなければいけない義務などあるのか? 話合いなどの段階ではないのだ。赫夜自身も私を殺すつもりでいるだろう。みよ、あの赫夜の全身から発せられる殺気を。お主らには関係の無い話だ…」
 陽太はケセアレには一切、話が通じないことを肌で感じる。恐らく、ケセアレは自分が死ぬか、赫夜が死ぬか、その両方の結果しか望んでいないようだった。
 それでも正悟は腹の虫が治まらないようだった。
「違うね。俺たちは赫夜や真珠の友達だ! 関係ないわけじゃない!あんたが真珠の両親を殺したのは消えない事実だろ。どんな事情であろうと家族を殺した時点でもう救いはねぇと俺は思うけどな…!」
 浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)
「ケセアレ・ヴァレンティンノ…貴方が手元に置いておきたいのは真珠様じゃなくて妹のルクレツィア嬢なのではないですか? それなのに、妹をもう手元に置けないから真珠様を代替物にする? 寝言は寝て言って下さい。…ただ、どうしても解せないのは、どうして其処まで妹の事に確執しているんですか? ただ溺愛してるだけ、じゃ正直納得が出来ないんですよね…溺愛しているだけにしては妄執的過ぎる。正直、私の頭ではその理由までは推測することが出来ません。…だから、話して下さい。それほど時は残されてませんが、それでも全く無い訳じゃないでしょう? 決着をつけるのは、お互いの事情を知ってからでも遅くないはずです」
 そう、説得する。
「何度も言っているだろう。話をする筋合いはないと。真珠は私の姪。ルクレツィアは私の妹。我々は『黄金の血』のヴァレンティノ家だ。我々の血は特別なのだ。外のものとの血の交配は、基本許されない。それほど貴いのがヴァレンティノの血だ。もう、その『黄金の血』も真珠しか継ぐ者が居ない。そしてルクレツィアはヴァレンティノの、そして私の太陽だった。ここまで話してやったのは、お前の瞳に孤独が宿っているからだ…お前も私と同類の匂いがするな」
 ニヤリと笑ったケセアレに、翡翠はぐっと息を飲む。
「良いです…それでは無理矢理にでも、全部話して貰いましょう!」
 二丁拳銃で次々に弾丸を撃ち込む翡翠。
 白乃 自由帳(しろの・じゆうちょう)は翡翠のサポートのため、雷術を使用。ケセアレを感電させようとし、さらに禁じられた言葉と紅の魔眼を使用して威力を高めていた。
 しかし、それらを全滅に近くなったダンツオ隊が防ぎ、ケセアレ自身にまで届くことはなかった。
 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)はケンリュウガーの衣装をつけたまま、特技の【説得】をフル活用して、
「待ってくれ。命を奪うことは軽い。けれど、命を背負うことは重い…生徒のみんなも暴走しないでくれ…!ここにいる全ての人に、死を与えることでは罪を帳消しに出来ない。ケセアレを殺しても、誰を殺しても、復讐の連鎖は続くだけだ! ケセアレは捕獲し、裁判にかけるべきだろう!? 赫夜、お前はそう思わないか」
「綺麗事の理想主義者だな。私がおめおめと裁判などにかかるとでも思っているのか?」
 ケセアレが嘲笑する。
 だが、生徒達の心には何か届くものがあったようだ。
 しかし、その一方で赫夜は
「…ケンリュウガー殿、済まない。あなたの言う通りだ。しかし、今だからこそ分かった。私とケセアレとの戦いに誰も踏み込んで欲しくない!! …ここまで巻き込んで置いてすまない。みんなを安全な場所まで下がらせて欲しい! 特に怪我人は早く退いて!」
 と頼む。
 赫夜はケセアレを睨み付けたまま、そう告げる。その体からは激しい闘争心のオーラが出ており、周りの生徒達も圧倒される。
「赫夜さんを殺すなんて馬鹿な真似は、絶対にさせない。これ以上、真珠さんから大切な人を奪うような真似はさせない。それに…決めたんだ。赫夜さんの笑顔を、必ず護り抜くって!」
 佑也は怪力の籠手で一気に攻め込んだ。しかし、それをケセアレは「カンタレラ」で防ぐ。
 赫夜に攻撃が及ばないようにとバックアップにあたっていた玲、正悟らもケセアレに挑む。
「赫夜さん! この戦場から離れてくれ! ここから真珠さんと逃げてくれ! こんな戦いは無意味だ!」
「そうはさせるか! 小僧め!」
 ケセアレの肘鉄が佑也に入る。
「がはっ!」
 佑也がはじき飛ばされる。
「駄目だ! 佑也さん! それだけはあなたの言うことでも聞けない! これは私の戦いだ! それにあなたがいなくなったら、私はどうすればいい!? 私は戦う。私の運命と戦う! これは私の運命だ。逃れられない。そして私は逃げない!だから、あなたは無茶をしないで! 私のために絶対に生きて! 私はその代わり、絶対に死なない!」
 と説得し返す赫夜。赫夜と佑也の目が合うと、赫夜の紅い瞳は輝きを増し、まるで輝石のように光を放った。
 だっと赫夜が床を蹴ると、ケセアレの頭上から、星双頭剣を振り下ろすとくるり、と星双頭剣を廻すと、血を吐いていた佑也の前に立ちはだかる。
「赫夜さん、暴走しちゃ駄目だ!」
 佑也が叫ぶが
「佑也さん、私は暴走などしてはいない…ただ、やはり私は十二星華なのだろうな…そして思い出したことがある…『ひい様』を守るために、たくさんの人々を殺してきたことを…所詮は血塗られた自分を私は呪うよ。…星双頭剣を持つ限り、私は十二星華の人殺しだ。だが、嘘はつけない。私は今、自分の血がたぎるのを感じている。それが私、セルバトイラの赫夜の本性なのだと、今、はっきりと分かった」
「赫夜さん!」