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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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 羽入 勇(はにゅう・いさみ)はミケロットに
「ミケロットさん、これはボクが彼女達が転校して来た時に、美少女転校生2人組の記事の取材をして写した物なんです。ねえ、みて下さい。笑っている真珠の写真が沢山あります。貴方達といて真珠さんはこんな風に笑っていましたか? ボクは大切な人には笑顔でいて欲しい。真珠さんを大切に思っているなら彼女が笑顔でいれる場所に送り出してあげるべきなんじゃないですか?」
 黙り込むミケロット。整った顔に愁眉の影が差す。ヘイゼルアイの瞳がまるでミケロットの気持ちを揺れる感情を表すかのように、光で色とりどりに変える。
「本当はこんな事は言いたくないけど…貴方はルクレツィアさんの身代わりに真珠さんを傍に置きたいのですか? それが本当に彼女の為なんですか?」
「…違うよ。ただね、僕の独り言として聞いて欲しい。ヴァレンティノ家の血は特別だ。『黄金の血』と呼ばれている。言葉は悪いが、近親間での結婚が多々行われ、外部の血を余り入れようとはしない。そのため、血がとても濃い。…ケセアレ様には、正当な血の継承者がいない。真珠だけが、次に繋がる『黄金の血』の正しい継承者だ。だから、ケセアレ様はあのように執着されている。…君達には理解出来ないだろう。愚かしい血の継承にとりつかれていると。でも、そのために何代もの人間が血を紡いできた。ケセアレ様は、本当は分かっている、愚かしいと。…それよりも、僕らは三人で生きてきたんだ。ケセアレ様、ルクレツィア様、そして僕。三人は幼い頃から、必死で助けた合って生きてきた…『ヴァレンティノ』と言う名の牢獄の中で」
「…『黄金の血』の意味、なんだか、よくわかりません。でも、ボクは信じたいんです。貴方の優しさを。前にも言ったけど皆の相談にのってくれた三池惟人は決して偽りの姿では無いと思うから…れに『ヴァレンティノ』が牢獄というなら、そこへ真珠さんを引き戻すのはおかしいです」

 北条 円(ほうじょう・まどか)もそれに続く。
「ねぇミケロットさん、貴方は真珠さんの現状が気に喰わなくてそちら側に加担したそうですけれどケセアレさんが言っている事を鵜呑みにするなら今そっちがやろうとしてる事は藤野家が真珠さんにした事と大きく大差があるのかしら? 真珠さんを真珠さんとして扱わない、それを貴方は望んで其方側に加担したの? 真珠さんが真珠さんらしく過ごす事を望むというのなら、無理に人生のレールを敷かず、彼女の意志に任せるべきよ…だって、彼女はもう子供じゃないのよ。盾としての誰かを必要せず自分の脚で立って歩めるし、たとえ躓いても、お姉さん達や私達が彼女の肩を支える」

 そこに緋山 政敏(ひやま・まさとし)リーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)も駆けつける。
 アンジェラ隊はどうやら、二人にミケロットを上手く説得させたがっているらしく、わざと二人をミケロットの方へとばれないように通してやった。
「どうして、あなた達じゃないといけないんですか」
 戦っている素振りをするために政敏の背を守りながら、雷術で出来るだけ他の敵を近づけないようにしつつ、リーンはミケロットに問いかける。
 
 
 政敏も
「ミケ先輩、どんな理由であれ、『自分でありたいと思っても、自分でなければならない』って事にはならないだろ? 初恋の人を諦めた時、それでも幸せで居て欲しいと。思ったんじゃないのか? なら分かると思う。言葉だけで伝わって欲しいけど、それが引っかかっているのなら、俺みたいな奴を信じてくれなんて言わない。でも、『此処に来た』真珠を大切に思う奴らを信頼してくれよ。それこそが、アンタ達が信じたかった『願い』じゃねーのか!」
 ミケロットに光条兵器を向けるがミケロットは動じない。というより祥子に向けていたシャープシューターも降ろしている。
「…君は、そのリーンって子が死んだらどうする? すぐに忘れられるかい? …僕にとってもケセアレ様にとっても、ルクレツィア様は生きるために必要な人だったんだ。僕らの幼少期は酷く孤独で苛酷だった。親の愛を知らず、それでも『ヴァレンティノ』のために鍛錬を重ね、人も殺した。でも、ルクレツィア様はそんな僕らをいつも励ましてくれた。…それを真珠に求めるのは、間違っているだろう。だけれど、君達には分からない『孤独』と言うものを、僕らは三人で共有していたんだ。だけれど、その形が崩れた時、ケセアレ様は大きな間違いを起こした。ルクレツィア様を自らの手で殺してしまったあのとき…あのときはさすがの僕でも、ケセアレ様を殺そうと思った。けれども、真珠がいる。ああ、そうだよ。僕らは真珠にルクレツィア様の代わりを求めた。そうしなければ、生きてはこられなかった! 真珠は僕らの希望でもあったんだ!」

 真人はそのミケロットに淡々と告げる。
「貴方の気持ち、すこし理解出来ます。ですが、今のまま、真珠を泣かせる事が貴方達の望みなのですか? それで貴方達の欲しいものが得られるのですか? 自分の考えや思いだけを押し付けることが愛情なのでしょうか? 今一度、冷静になって考えてください。貴方達の大切な人が本当に幸せになるにはどうすれば良いのかを。未来を切り開き前へと進もうとする真珠の強さに、過去と妄執に囚われて後ろを向き立ち止まった貴方やケセアレの強さが敵うわけありませんよ」
「…どうやら話は平行線のようだ」
 首を横に振るミケロット。
 にゃん丸は真珠に
「真珠、ミケロットを救いたいなら力を貸すぞ」
(一刻も早く脱出しなければならない…が、このままでは彼女の心も決着がつかないだろう)
「周りを見ろ真珠。これが今まで君が築いた絆だ」
 自分達の退路のため懸命に戦ってくれる仲間達。
「…ミケロットさん、お願い。姉様と伯父様を止めて。あなたはこの戦場にいることがふさわしい人じゃないと思うの。だってそんなに悲しい顔をしているのだもの…私と一緒に伯父様と姉様を止めて下さい」
 懇願する真珠にはかなげな笑みを浮かべるミケロット。
「…真珠、君はやっぱりルクレツィア様の娘だね。…でも、ルクレツィア様本人ではない。…良く分かったよ。君の姿を見れば見るほど、血は濃いと思わされる。でも、君は君の道を歩んでいくべきだと、僕はずっと心が揺れていたよ。でもね、分かって欲しいとは言わない。でも、ケセアレ様の恐ろしいまでの孤独を察して欲しい。愛する妹を自分の手で殺してしまった苦悩を。あの方は孤独なんだ。だから僕はいくよ。真珠、さようなら」
 ミケロットはそういうと、二丁のシャープシューターを構え、爆薬を同時に生徒達を傷つけないように、しかし煙幕代わりにして眼前から姿を消してしまった。

 その一方、煙幕のむこうがわではケセアレと赫夜の戦いが続いているのがうっすらと見えてくる。赫夜が星双頭剣を持ちながらも、ケセアレに足蹴にされる。
「剣を選んでいるうちは素人だ!」
 赫夜に斬りつけるケセアレ。
「止めて、伯父様!!」
 叫ぶ真珠が駆け出そうとするが
「来るな!」
 止める赫夜。
「お前は絶対にくるな!」
「ねえさま…」



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 鈴木 周(すずき・しゅう)は展望台で気絶していたが、弥涼 総司(いすず・そうじ)からの『周、起きろ…立つんだ…周』というエロパシーではっと目をさます。
「お、俺、一体…なにを…なんか凄いエロいことがあったような…あわわわわ」
 弥涼 総司(いすず・そうじ)からのエロパシーで大体の事情を飲み込むと、
「うっしゃ! そういうことなんだな! おっとっと。浮遊島もガッタガタじゃねえか! ようし! 俺にまかせておけっつーの!」
 と起き上がると格納庫へ走りだし、慌てている船員達に声をかけまくった。
「なあ、あんたら、非戦闘員なんだろ? 報酬は(御神楽 環菜(みかぐら・かんな)校長から)はずむ! 船乗りのプライドとして、まだ島に残ってる連中をみんな、助けて欲しいんだ!」
 明るく求心力のある周に敵でありながらも、似たような匂いを感じ取ったのか、
「…しょうがねえ、いいぜ。報酬も弾んで貰えるってなら、ことはOKだ…俺たちも船乗り。ただし、最悪、浮遊島が崩れ始めたら、逃げ出すしかない。それは織り込み済みにしてもらう。…それに我々の主、ケセアレ様のことも気になる…頼む、様子を知らせてくれ!」
(ケセアレってのは、意外と人気があるんだな…)
「よし、これで帰り支度は整った! あとは王座の間だっけ? いってくるぜ!」



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 弥涼 総司(いすず・そうじ)は『王座の間』にたどり着く。
「のぞき部部長弥涼総司! 超絶のぞき大火山大噴火的嵐を呼んで今! 復活!」
「ワケの解らない子が復活してきたわねえ…」
 頭を軽く押さえるアンジェラの前に立ちふさがる。
「のぞき部には、一度見た乳は二度とは通用しないんだぜ。まして部長であるこのオレにはな…」
 と言いつつ、アンジェラからかもし出される色気と鞭に翻弄されつつある。胸の谷間に目が行ってしまう総司。そして、すでに鼻血全開ゆえにフラフラになっていた。
「そんなにフラフラじゃあ、説得力が無くてよ、のぞき部部長さんとやら」
 アンジェラはふっと鼻で笑う。そのプライドの高そうなところがまた、ぐっと来たのか、血が一気に鼻から噴き出して、貧血気味になってしまう。
「足りなくなった血は、オマエで補う事にするよ」
 アンジェラにスキル【吸精幻夜】仕掛けようとし、血を吸われそうになるアンジェラ。
 だが、そこにマリアが割ってはいる。
「邪魔をする気か!」
「違う! お前の為だ! アンジェラ隊長は低血圧だから、血など吸われると更に機嫌が悪くなってしまい、お前など○○されて大変な事になる!」
 マリアが代わりに血を吸われた。