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【相方たずねて三千里】懇親会でお勉強(第1歩/全3歩)

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【相方たずねて三千里】懇親会でお勉強(第1歩/全3歩)

リアクション

3.仮面舞踏会が始ま……え?

「我の事を憶えているかね? ちーとさぷり買い占めたり、お仕置きと称して色々やったはずなんだが」
 と、目の前に立つ毒島大佐(ぶすじま・たいさ)を見て、トレルは園井の姿を探しはじめる。
「ちょっと園井ー? 何でこいつ入れたんだよー? 今すぐ追い返してー!」
 しかし、残念ながら園井の姿は見当たらなかった。さっきまでは視界に必ず入っていたはずなのだが。
「ああ、しっかり憶えてるみたいだな。今回は何もしてないようだから、特に何もする気はないぞ」
 と、大佐。わざわざ言うところが怖い。
「……で?」
 逃げ腰になりながらトレルが問うと、大佐は言った。
「パートナースキルが見たいんだってな。せっかくだから、4つ程見せてあげようじゃないか」
「い、いや、遠慮します」
「遠慮するな」
 大佐は少し距離をとると、光条兵器を出現させた。刃は無色透明だが、輪郭が光っているのでその形が分かる。
「これが光条兵器だ。普段は片手剣サイズだが、思いっきり振ると……」
 言いながら大佐は剣を振るった。途端に蛇腹剣となった光条兵器がトレルの頬を掠める。
「っ! 助けて、園井ぃ!」
「わざとではないんだから、そう怖がるな」
 大佐は光条兵器を仕舞うと、次に超感覚を発動させた。
「これが超感覚だ」
 虎耳と虎の尾が大佐の身体に、にょきっと生えてくる。
「……と、虎」
 いかにも大佐らしい、と、トレルは思う。
「次はドラゴンアーツという技なんだが、ぶっちゃけ怪力になるスキルである」
 と、大佐はトレルを椅子ごと持ち上げて見せた。
「ちょ、まっ……」
 どすんと床へ降ろされ、トレルはもう怯えるしかない。
「最後はバーストダッシュ。短距離を高速で移動できるスキルである。でも、見てるだけじゃ分かりにくいから一緒に行こうか」
 と、大佐はトレルを無理やり抱えると、場内を跳びまわり始めた。
「ぎゃあああああああ!」
 それはさながらジェットコースター。乗り物に絶大の信頼がないだけに、恐ろしいことこの上ない。
「どうだ? よく分かったであろう?」
 ようやく解放されたトレルは、今すぐ部屋に引きこもりたいのを我慢して言う。
「よ、よく分かりました……あ、ありがとう、ございます」
 契約する時には、必ずこの人に勝てるような強い相手にしよう。そう心に誓うトレルであった。
 
 目賀家の厨房に入り込んだ佐々木弥十郎(ささき・やじゅうろう)は、あるデザートを作っていた。
 今日は髪の毛を下ろしており、普段とはまったく違う雰囲気である。
 出来あがったそれを皿へ盛りつけ、用意した手紙を添える。
 ――そして、弥十郎は精神感応で繋がっている兄へそれを託した。

「いつも弟がお世話になってます」
 そう言って佐々木八雲(ささき・やくも)はクレープシュゼットを差し出した。
 トレルは八雲の顔を見つつ、それを受け取る。
 見ると、そこには手紙らしきものが添えられており、トレルは最初にそれを手にした。そこに書かれていたのは「次に会ったらよろしくね」と、いう文章だった。
 ちょうど疲れて甘いものを欲していたトレルは、クレープシュゼットを一口食べてみる。途端に柑橘類特有の甘酸っぱさが口の中に広がり、思わず顔をしかめた。
「お世話になりすぎているのでお礼をしました」
 と、にっこり笑う八雲。
 そう言えば見たことのある人だと思ったら、蛇の人だ! 弟、と言っていたから、目の前にいるのはその兄だろう。
 すると、八雲がトレルからスプーンを取り上げた。
「でも、こうして食べると美味いだろ?」
 と、すくったバニラアイスをトレルの口元へ運ぶ。思わず口を開けてしまえば、先ほどとは違った甘みが広がる。
「美味しいです、とっても」
 感激のあまりトレルはそう言うと、クレープシュゼットにがっつき始めた。お嬢様とは言い難い食べ方だが、見た目が幼いだけに大して違和感もなかった。
『気に入ってくれたようだよ』
 と、弟へ言えば、すぐに返答も返って来る。
『それは良かった。契約について知りたがっているようだから、話してあげると良いんじゃないかな?』
「契約について話が聞きたいんだって?」
「え、うん」
「そうだな……死にそうな時に弟の顔が見えてさ。気がついたら契約してた。左目は無いけどね」
 どうやら八雲は、強化人間らしい。
「でも、安いもんだろ。そのおかげで今も生きてられるんだから」
 トレルは早くもデザートを食べ終えていた。
「ごちそうさまでした。弟君、すごいね」
 と、トレル。
『お前のこと、すごいって褒めてるぜ』
『はは、それは嬉しいなぁ』
 すっかり機嫌の良くなったトレルを見て、八雲は手を差し伸べた。
「食後の運動に、良ければ僕と一曲どう?」
『ちょっと、兄さん……』
 弟の呆れる声がしたが、八雲は気にしなかった。
 トレルは少し考えたが、園井もまだ戻ってきていないようだし……と、頷く。
「一曲だけね」