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    ★    ★    ★
 
「次のおハガキは、ラジオネーム、仮面の便利屋さんからです。
 シャレードさんこんばんわ、はじめてハガキを書きます
 はい、初めましてー。
 最近、諸々の事情があって契約した強化人間がいるのですが、どうも彼女と上手くコミュニケーションがとれません。いや、彼女的にはコミュニケーションを取っているつもりなのでしょうけど、その方法があまりに過激すぎて困っています
 価値観の違いなんて生易しいモノではなく、彼女は隙あれば俺の命を狙ってくるんです!
 それって、まずいんじゃないのかなあ。
 寝ている最中は勿論、学校や人ごみでも所構わず、休日などひどい時には一日中襲いかかってきて気の休まる暇がありません
 自分も腕に自信がある方なのですが、相手は見た目可愛い女の子なので力づくで何とかすると周囲から白い目で見られてしまいます
 強化人間はヤンデレ! 何てふれこみがありますが、奴の場合にはデレがありません! むしろ殺です、ヤンサツです!
 あんな拷問マニアのイカレサイコ女と今後、どう付き合っていけは良いのでしょうか?
 俺の平穏な生活の為に何かお知恵をお貸しください
 だいたいあの女は…
 あら、ハガキがここで切れてます。どうしちゃったのかなあ。もしかして、ついにやられちゃったとか。はは……、ほんっとうシャレになんないですよー。なんだか血みたいな物もハガキについてるしー。
 強化人間ってよく分からないんですけど、イコンとか。天御柱学院って、まだ秘密が多いですよね。そのうち分かるときが来るのかなあ。
 仮面の便利屋さんはパートナーが強化人間なんですから、何か分かったらまた教えてくださいね。頑張って、その日まで死なないでいてくださいね。私との約束ですよー」
 
    ★    ★    ★
 
「俺は死なん!」
 包帯でグルグル巻きにされた仮面の男が、ラジオを聞いているベッドの上で叫んでいた。
「ふふふふふ……。まだ、壊れちゃだめだよ……」
 そんな彼を、窓の外からじっと見つめる影があった……。それにまだ彼は気づいてはいない。
 
    ★    ★    ★
 
「さて、次のお悩みは、神和 綺人(かんなぎ・あやと)さんからのものです。
 もうすぐ恋人の誕生日なのですが、誕生日プレゼントで悩んでいます。
 どんなものをプレゼントしたら、女の子は喜んでくれるのでしょうか?
 そういえば、お悩みのハガキがもう一通来てました。こちらは、ペンネーム、恋する破壊娘さんからです。
 もうすぐ恋人の誕生日なのです。でも、誕生日プレゼントに何を贈ったら良いのか分かりません。
 ちなみに恋人は可愛くて優しくて、おっとりしているようで戦闘では頼りになって…
 ええっと、この後えんえんとおのろけが続くので……。読んでられますかい!
 みんな、恋人へのプレゼントは悩んでるんですねえ。うんうん。私だって悩みますもの。
 プレゼントは、どんな物でも心がこもっているのが大切だって言いますけれど、やっぱりそれだけじゃだめなんですよね。目に見える物がすべてとは限りませんけれど、やっぱり目に見えると、人は安心するんです。特に女の子はそう。
 だから、プレゼントって、とっても大切で、とっても嬉しい物なんですよね。
 悩んだら、あなたの一番そばにある物を贈ればいいんじゃないのかなあ。相手に、それがあなただと分かるような物を。
 それぐらいアピールしなくっちゃ」
 
    ★    ★    ★
 
「なんだか、今、凄く聞き覚えのある名前を聞いた気がしたのですが……」
 麦茶を飲んでいた神和 瀬織(かんなぎ・せお)が、ラジオの投稿に気づいた。
「ああ、そういうものは、気がつかないふりをしてやるのが情けってもんだ」
 地道に家計簿をつけながら、ユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)が顔もあげずに言った。
 当の本人である神和綺人は、顔を真っ赤にしている。しかし、もう一方の当事者であるクリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)まで同じような投稿をしていたとは、さすがにユーリ・ウィルトゥスも聞いてはいなかった。
 似たもの同士、放っておけば自然と収まるところに収まるものだ。
「ねえ、お悩みコーナーまだやってる?」
 そこへ、風呂上がりの上気した肌でクリス・ローゼンが駆け込んできた。
「まあまあ、そんなにあわてないで、まずは駆けつけ一杯」
 そう言って、神和瀬織が、麦茶の入ったコップをクリス・ローゼンに手渡した。
「あ、ええ、ありがとう」
 一気に麦茶をあおると、クリス・ローゼンは上気したうなじの後れ毛を軽くかきあげた。
 それを見て、神和綺人がちょっと見とれる。
「それで……」
「まだ続いてるが、どんなハガキが読まれたんだっけか?」
 聞き返すクリス・ローゼンに、ユーリ・ウィルトゥスがわざわざ話題を振った。
「確か、プレゼントをどうしたらいいかっていうハガキでしたね」
 それを受けて、神和瀬織が答える。
「ええっ、それでどうだったの!?」
「それは、綺人に聞いてください」
 クリス・ローゼンの問いに、少し楽しそうに神和瀬織は神和綺人へ話を振った。
「僕に説明させる気か!?」
 焦る神和綺人に、男二人がうんうんとうなずく。
「聞かせてよ、アヤ」
 クリス・ローゼンが身を乗り出して神和綺人に顔を近づけた。
「ええと、プレゼントって言うのは……」
 真っ赤になりながら、神和綺人は話し始めた。
 
    ★    ★    ★
 
最近になって念願のサングラスを手に入れた。
 サングラスなんて何処の店にも売っていると思うだろ?
 違うんだ。
 えっ、違うんですか?
 俺も最初はそう思っていたんだが、パラミタ各地の学校を捜し歩き、正規のルート(購買)では入手出来ない事実を知ったんだ。
 うーん、普通の学校ではサングラスなんて使いませんから、売ってませんよね。
 そう、結局は荒野に生きるパラ実生から直に奪い取らなければいけない戦利品・・・勇者の証。
 俺はこいつを手に入れるのに半年も費やしてしまった。
 長かった・・・本当に長かった。
 御苦労様です。
 しかし最近になって、そんな俺のアイデンティティーを奪い取ろうとする奴が現れたんだ。
 奴は言う・・・「この世に『サングラサー』は一人居れば十分!お前の時代はもう終わったんだ!」と。
 冗談じゃない!
 このサングラスを手に入れるのにどれだけの時間と労力を費やしたと思っているんだ!
 俺は戦う!この俺の存在意義を掛けて、どちらかのサングラスが砕け散るその時まで!!
 ペンネーム、あなたの街のサングラサーさんからです。
 空京の消印ですね、このハガキ。
 空京でこれだけサングラスに固執する人って、一人しかいないと思うんですが。某冒険屋の人かな。いつもおハガキありがとうございます。
 それにしても、蒼空学園さんのメガネさんのように、サングラスその物が本体だとか言われているわりには、そのサングラスってパラ実の人から奪った物だったんですか。ちょっと意外です。
 魔道書さんたちみたいに、仮面が本体だとか、パンツが本体だとか、バットが本体だとか言われる人はたくさんいて、人間体は仮の姿という噂もありますが、サングラサーさんは、サングラスが本体じゃなかったんですね。ちょっと残念です。
 あっ、でも、もう一人のサングラサーさんって誰なんでしょうね。うーん、やはり、蒼空のメガネさん? でも、あれはサングラスじゃないですからねー。誰なんだろう。そのへん、対決の結果なんかも、次は聞かせてくださいね、お願いします」