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リアクション
1.準備
空が茜色に染まってきている──
時間にはまだ早いが、設営準備を始めようとする人影がちらほら見える。
本日のイベントの舞台となるべく洞窟の前で、先に来ていた小谷 愛美(こたに・まなみ)とマリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)に、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が声をかけた。
「もう来てたんだぁ」
「入り口で参加者の案内と蝋燭を渡す準備をしてたんだ」
「なるほどね。あ、そうだ。これ」
美羽は、用意してきた浴衣を手渡した。
「おそろいだよ!」
「裾が……短いわね」
愛美の言葉に、マリエルが赤くなって頷く。
「超ミニ浴衣だよ! 三人の脚線美で、男子生徒の視線を釘づけにしちゃおう!」
「着る、の?」
「当たり前」
「恥ずかしいよぉ」
純情なマリエルは両手で顔を覆った。
「マナ〜、一緒に肝試し回ろうよー」
朝野 未沙(あさの・みさ)がひょっこり顔を覗かせた。
「一緒に札取りに行こうよ〜。マリエルさんと行っただけで、肝試しはまだなんでしょ? 相方を変えて行ってみようよ。もしかしたら、洞窟の中で運命の人との、素敵な出会いがあるかもよ?」
「あぁ〜…でも、お化け役として、洞窟の何処かに息を潜めていようと思ってたの」
「ええ? そうなんだ?」
「お姉ちゃん、どうするの?」
朝野 未羅(あさの・みら)が首を傾げる。
「未那お姉ちゃんは?」
「え? え? え、私?」
急に話を振られて、朝野 未那(あさの・みな)は慌てた。
「私は…お化けは全然怖くないですぅ。でも、火の玉だけはダメなんですぅ〜。マリエル様〜、御手隙なら私と一緒に奥まで行って貰えませんかぁ〜?」
「ごめん、受付担当しようと思って」
「そうですかぁ……」
ひどく残念そうに未那はうな垂れる。
「マナがお化け役するなら一緒に付いて行こうかな…」
「それだと面白味が無くなっちゃうわ」
愛美が笑いながら未沙に言った。
「う〜ん…ちょっと考える」
未沙はこれからの行動を思案し始めた。
「愛美おねえちゃんはステキな人ときもだめしにいかないんですか?(にこにこ)」
ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が後ろから尋ねてきた。
「なんだか洞窟はくらくてこわいけど、がんばってみんなが仲よくなれるようにおどかすですよ」
「うん、お願いね」
夏らしく、グレー地で可愛らしい白いオバケ柄の浴衣を着たヴァーナーは、袖を嬉しそうに振った。
「みんなにたのしんでもらうためにおどかします! カップルがキャーってひっついたら成功です♪」
(あんまりこわいのとくいじゃないので、こわがらせてても、ボクもこわかったりするけど、がんばるです)
ヴァーナーは自分に言い聞かせるように大きく頷いた。
「本当に愛美やマリエルは入らないの?」
「ええ」
「………」
芦原 郁乃(あはら・いくの)はつまらなそうに俯いた。
(あれ、でも……)
愛美とマリエルは片づけで入ってくるはず…
(そこを狙って驚かせて、それから種明かしするというわけ 驚くかな?怒らないよね?フ・フ・フ楽しみだなぁ♪)
郁乃は誰にも気づかれないように笑った。
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