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●会議後

「なあ、待ってくれよ」
 オペラとパーティ開催について会話をしてみたいと思っていた冴弥 永夜(さえわたり・とおや)は、会議後、メサイアに声をかけた。
「おや、貴方は…えっと、冴弥さんでしたね」
「そうだ。冴弥でいい…」
「では、冴弥と呼ばせていただきます。俺のことはメサイアと…」
「ああ…わかった。このオペラとパーティな。貴賓を呼ぶ時点で、何か意図があると思うんだよなぁ」
 冴弥の言葉に、メサイアは笑みを浮かべるばかり。
「そうですか?」
「だってそうだろ? タイミングよすぎる。しかも、地球側の貴賓はいないし。タシガンだけってなぁ」
「気のせいですよ」
「気のせいだったら良いんだけどな。ところで、メサイアが考えるイベントの形はどんなものなのか教えてくれよ」
「はい?」
 不意の質問にメサイアは立ち止まり、冴弥の方を振り返った。
「俺が考える…イベントの形?」
「そうだよ。あるんだろ、そういうの。校長に任されている以上、何らかのイメージを持っているんじゃなかと思ってさ」
「イベントの形…そうですね」
 メサイアは考え込むと、ふ、と笑って冴弥を見た。
「理想は、生徒が一丸となって行動できること…でしょうか」
 メサイアは答えた。
「生徒が一丸となって?」
「えぇ、そうです。全員が自らの意思で行動し、団結できるような、そんなイベントがいいです。各自の力が大きなものでも、繋がっていかなければ、そんな力は…空しいものです」
「そうか…繋がりねえ」
「はい…人は独りで生きていくことは出来ませんから。それは人々の中にありながら、孤島で生きていくようなものです」
 幸せであってほしい。
 そう言ってメサイアは微笑んだ。
「そうか…まぁ、メサイアが楽しむ余裕ぐらいあってもいいと思うけどな。これからが忙しいぞ」
 冴弥は言って笑う。
 彼なりにメサイアを気遣っているようだ。
「そうですね」
「あ、おまえ…自分のことを忘れてただろ?」
「ふふ…忘れてましたよ」
「おいおい、大丈夫かよ」
「えぇ、気をつけますね。俺はすぐに疲れてしまうようで…眠いとダメなんです」
「睡眠不足に弱いのか」
「そうなんです。前に、執務室にいらしたジェイダス様に起こされてしまいました」
「それは…ヤバくないか?」
 校長に起こされると聞いて、冴弥は目を見開いた。
 ファイルの背を整った指で揃えつつ、メサイアは困り果てた子供のように眉を下げて言った。
「書類や本をたくさん読むもので…どうしても、疲れるみたいです」
「そうか…しかたないな。気をつけろよ。俺はおまえの考えるイベントを実現する為に助力を惜しみたくない」
 冴弥は自分のイベントに対する思いを告げる。
「本当ですか?」
「気にするなよ。少しでも諍いの沈静化に繋がれば良い、と俺は思うんだけどな」
 冴弥は窓の外に見えるタシガンの街を眺めながら呟くように言った。
「現状を考えて関係の亀裂が酷くなるなんて…好ましくないしな」
「ありがとう、冴弥」
 メサイアはその思いを受け止め、頭を下げる。
「冴弥と一緒に仕事ができるのが、嬉しいです」
 メサイアは冴弥に向かって微笑んだ。