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●AM7:00

 慌しく日々は過ぎ、【2020年 薔薇の学舎 芸術祭】の朝は晴天に恵まれた。
 一同はオペラハウスの劇場前に集合する。
 誰もが小さいと思っていたオペラハウスは、想像していたよりは大きかった。
 ジェイダス校長が造る物にスケールの小さなものなどは存在しない。はじめてその建物を見た者はそう認識した。パーティーのできるホールを劇場の下に配置し、単独の調理室と配膳準備室などを備えたオペラハウスは立派なものだった。
 白く繊細な印象の建物は、秋の色に染まる学舎の敷地内で明るく輝いているように見えた。
 オペラハウス前に列を組んで並び、先頭には当日参加を申し出たイエニチェリのメンバー、メサイア、ルドルフ、藍澤 黎(あいざわ・れい)の三名が並ぶ。
 藍澤は不穏分子への抑制効果を期待し、白いタキシードを着用していた。シルクハットは手に持ち、手袋をはめている。礼服は一般的に黒が多いが、白を着る事によって自分を目立たせた方が、視覚効果的にも良いと判断してのことだ。警備の者と分かるよう剣は上着の下に帯剣している。
 ルドルフは黒のタキシードを着込んでいた。いつもの仮面は外している。
 メサイアは藍澤にと同じように白いタキシードを着ていた。本来なら、朝からの正装はモーニングである。しかし、ここにいるイエニチェリのメンバーは本日の忙しさを想定して、タキシードの着用を決めていた。モーニングよりそちらの方が見目に良いことは確かだが、忙しいのもまた確かである。
「何もなければ良い…」
 藍澤は呟いた。
 最近は事件が多すぎる。
 それを聞いたルドルフは、杞憂だと返した。
「何も起きないようにするのが、僕たちの役目だ」
「そうだ、ルドルフ殿。我々の役目は…守り、成功させること」
「あぁ…」
 藍澤の様子に、ルドルフは微笑んだ。
 なにより、音楽科の生徒たちに華を持たせてやりたかった。

「これより、本日の班分けを行います。基本、希望通りの編成としました。別紙にて、担当部署の人数編成と名前を明記してあります。まず、副実行委員長にルドルフ・メンデルスゾーン。補佐にヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)…」
 メサイアは次々に名簿を読み上げ、班を分けていった。
 藍澤の後ろにはオケのメンバーが並び、中継用の機材を担当するスタッフ他、会場スタッフ担当者たちはルドルフの後ろに並ぶ。
 警備担当者の発表と共に、詰め所の説明、タシガンに駐在し警察機構を担う【鋼鉄の獅子】小隊の説明をメサイアはした。
 その後に、小隊副隊長ルカルカ・ルー(るかるか・るー)からの挨拶が続く。
「では、各自担当部署に移動してください。なお、サービスに携わるバトラーとメイドは、サービスに夢中になりすぎないで下さい。見るべきはお客様です。安全確保のため、衛生のため、クリンネスを第一としてください。これは、すべての担当部署にも言えることです。危険防止になりますので、徹底してください。以上、解散とします」
 最後に、メサイアが注意事項を述べた。

 オペラの成功を願い、一同は持ち場へと各自向かっていった。