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マホロバで迎える大晦日・謹賀新年!明けましておめでとう!

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第四章 初詣4

 東光大慈院の広場に人が集まってくる。
 誰が用意したのか『新春! 羽根突き大会』の横断幕がかけられていた。
「随分、賑やかでやんすね。文化の違いってやつですかね」
「ええ、皆さん。とても楽しそうね」
 葦原明倫館総奉行ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)葦原 房姫(あしはらの・ふさひめ)の姿もある。
「あ、鯉サンも来てた。羽根突きやるデスか?」
 ティファニー・ジーン(てぃふぁにー・じーん)瑞穂 睦姫(みずほの・ちかひめ)といっしょに観戦し、そこで南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)のパートナーオットー・ハーマン(おっとー・はーまん)を見つけた。
「……ティファニー殿。遊郭はどうされた?」
「お店は今日はお休みでデスヨ。もうじきミーもデビューできるかもって、テンチョが言ってたデス。あ、割引券あげマスヨ。来てくださいネ」
「ム……それがしそういうつもりでは……」
 オットーは多少前かがみになりながらそれを受け取る。
「こ、これは無罪でござる。ティファニー殿を汚れた場所からお救いすべく、参上するでござる……って、きいてないでござるな。おい!」
 羽根突きは既に始まっており、光一郎の圧勝である。
 現示は睦姫に顔を墨でバツ印を書かれながら、悔しがっていた。
「おかしい、ぜってえおかしい。居合いの達人の俺がここまでやられるわけがねえ」
「はははッ! もうじきゲンヂきゅんは俺様の(検閲により削除)で(検閲により削除)じゃん。姫ならぬムコはじ○……くくく」
 現示はさっと青ざめて、再び羽根を打ち込む。
 が、光一郎が返した後、羽根は現示の手元をすり抜けカラ振りした。
 オットーの目がキラリ光った。
「ムム、これは『ドラゴンアーツ』によるレンジ攻撃! 光一郎め、こっそり羽根を叩き落すとはなんというイカサマ! 断固許しがたい!!」
 オットーは羽子板を手に取ると試合に乱入した。
「新年早々神前で罰あたりな! 天誅でござる!!」
 そう叫び、羽根を持ち振りかぶるオットー。
 今度は、手の内をばらされた光一郎が押されている。
 彼の顔も墨が塗られていった。
「俺様の美しい顔に墨とは……おい、そこの人! 代王のそっくりさん、加勢しろ!」
「え……? 俺?」
 羽根突き大会場の端で貞継チルドレンと遊んでいた酒杜 陽一(さかもり・よういち)は、無理やり大会に引きずり込まれていた。
「待て、俺も今あの子たちと羽根突きをやっててだな……あいつら、ガキの癖につえーよ。こっちが加勢してほしいくらいだ」
 陽一は子供たちと一緒に童心かえって楽しんでいたが、流石は『天鬼神の血』を引く子供である。
 小さくともその兆候が見える。
「それだったら、羽根突き大会。仕切りなおしてタッグマッチというのはどう? もちろん『ご褒美』つきよ」
 インスミール魔法学校から来た強化人間ジル・ドナヒュー(じる・どなひゅー)
 しばらく観戦していた彼女は次のような提案をした。
「ここに居る女性たちのバストサイズを計る権利をかける。どう?」
「のった」
 陽一は即答し、羽子板を構えてる。
 沸き立つ男陣営。
「え……私はちょっと」と、房姫。
「女性人権団体がでてくるでありんすよ」と、ハイナ。
「そんなの、あなたたちで勝手に決めないでよ!」と、睦姫。
「ミーは事務所通してクダサイ」と、ティファニー。
 女性たちからは次々と抗議の声が上がったが、男たちはさっさと持ち場に付いている。
「『ご褒美』がでるんじゃ、しょうがねーな。さあ、とっととはじめようぜ!」
「じゃあ、組み分けとルールはこうね。まず、それぞれ組み分けを行って、女性はチームに付き応援する。負けたチームを応援した方がバストサイズを公表する。対決は七回戦勝負。良い?」
 ジルの問いかけに一斉に賛同の声が上がる。
 ご褒美の内容をききつけて続々と人が集まってくる。
「異議なーし!」
「異議なぁーし!!」
「はやくはじめてくれ〜!!」
「どっちも負けやがれ〜!!!」
 羽根突き大会会場が異様な熱気と盛り上がりを見せた。
「じゃあ、応援者がどのチームに付くのか、くじ引きよー!」



 ……くじ引きの結果、房姫・ハイナが光一郎・陽一チームを、ティファニー・睦姫が現示・オットーチームを応援することになった。
「それがし負ければ、ティファニー殿が公衆の面前で汚されてしまうのか! これはなんとしても勝たねば……!!」
「そうデスヨ! 勝ったらお雑煮作ってあげマース。勝ってくださいね」
「ティファニー殿のお雑煮だと!? やらせはせん、やらせはせんぞ(ごごごごご……)」
 闘志を燃やすオットー。
 睦姫も現示にはっぱをかける。
「日数谷、わかってると思うけど。負けたらお仕置きです」
「は、はい。睦姫様……無論で、す(どきどきどき……)」
「ははーん。この俺様に勝とうなんざ、一億と二千年はええーじゃーん(ニヨニヨ……)」
 光一郎は余裕だが、陽一は少し悔しそうにしていた。
 影武者となるため、高根沢 理子(たかねざわ・りこ)に姿を全身改造したとはいえ、現在の彼女のサイズは陽一は知らない。
「バストサイズがご褒美とは(くっそ……)もしかしたら、絶賛成長中かもしれないじゃないか(くっそ……)。なんでこの場に理子がいないのか……(くっそ)!」

「では、はじめーー!!」
 ジルがピーッと笛を吹いた。

●『新春! 羽子板対決結果』
ダイスD6×2 
出目の数を足して多いほうが勝ち
(実際にマスターがダイスを振っています)

現示・オットー(チーム):光一郎・陽一(チーム)
ティファニー、睦姫(応援者):ハイナ、房姫(応援者)

一回戦 現オ1+4○ 光陽2+2
二回戦 現オ2+2  光陽4+5○
三回戦 現オ5+5○ 光陽3+3
四回戦 現オ4+3  光陽6+6○
五回戦 現オ6+1○ 光陽1+1
六回戦 現オ2+6  光陽5+4○
七回戦 現オ4+5▲ 光陽6+3▲

――(ここまで引き分け)――


「なんだー!? この少年飛翔的展開は!」
「次か、次で決まるのか!?」
「マスター、フェイクじゃないよな?(まじで振っています)」
 騒然とする会場。
 そして――




――(最終戦)――


八回戦 現オ5+5○ 光陽5+1

「うおおおー勝ったぞー!!!」
 現示とオットーが羽子板を投げ捨てて互いに抱擁しあう。
 睦姫とティファニーはほっとした表情だ。
 がくりと膝を突き、うな垂れる光一郎。
「試合には負けたが、勝負には勝ったじゃん……?」
 彼は肩を震わせていた。
「ハイナ総奉行のバストサイズを合法的にゲットできたんじゃん。ふはは……俺様、天才だな!」
「く……何にせよ、正月から負けるのは気持ちいいもんじゃねえな」
 陽一は羽子板を投げた。
 その懐から、さっき引いたおみくじがひらひらと舞い落ちる。
「……ん? そういえば、引くだけひいて、みてなかったな。どれ」

『大吉――人の仕事を手伝ってあげよう。あなたが窮地に立ったとき、必ずその人が助けてくれるはず』

「……嘘だ!!(実際にマスターがダイスを振っています)」
 陽一は歯噛みしたが、人々の関心はすでに『ご褒美』のほうへと移っていた。

卍卍卍


『ご苦労……良い仕事ぶりだね、ジル』
 ジルは境内の片隅で両手を耳に当てて座り込んでいた。
 彼女の頭の中に、ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)の意思が届いてくる。
『ボクは今、肉体を失ってザナドゥの監獄から出られない。でも「精神感応」を通じてジルと交信できるようだ……』
 ブルタはそれによりジルをマホロバで操り動かすことができていた。
『ジル……それでハイナの胸のサイズは? は、早く教えてくれよ!』
「落ち着いてよ。そんなに興奮したら、電波届かないじゃない。えーと、耳かっぽじってよくきいてね。ハイナ総奉行の胸のサイズは……」
 ……ごくりとブルタの息をのむ音が伝わる。

「……123cm Pカップ」

 ブホッ!

「ちょっと、噴き出さないで! ノイズ入ったじゃない!」
『ぴぴぴぴ……ぴカップ!!』
「ちなみに房姫様は72cm AAカップで、一部の人たちの間で盛り上がってたっけ……ブルタ、聞いてる?」
『ぐへへへ……ハイナが123cmなら、い泉 美緒(いずみ・みお)タンは……き、期待できるぞ、これわあ!!』
 ブルタは彼にとって、もっとも重大かつ有益な情報を手に入れることが出来た。
 ひとり監獄生活も当分不自由しなさそうである。