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マホロバで迎える大晦日・謹賀新年!明けましておめでとう!

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第四章 初詣5

「余興とはいえ、新年から恥をさらしたでありんす」
 ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)の顔はまだ真っ赤だ。
 葦原 房姫(あしはらの・ふさひめ)も半べそをかきながらハイナを慰めていた。
「ハイナはいいじゃないですか……私、なんて……」
 房姫はぺったんこの薄い胸を押さえる。
「せめてもうちょっと……あと少し、あと3cmあれば……」
「あの……」
 二人の前に小柄な女の子が現れた。
 名を北郷 鬱姫(きたごう・うつき)という。
「ハイナさん、その……お年玉……」
 みると、光一郎からふんだくった金を、現示が子供に配っている。
 ハイナは意味が解らずに首をかしげた。
 房姫が説明してやる。
「ええと、昔からお正月に子供に、お年玉といってお金やお菓子をあげる風習があるんですよ」
「ほお、ハロウィンみたいでありんすね。いいでやんすよ、ほい」
 ハイナから渡された金額を見て、鬱姫は小さな声で言う。
「あの……これだけ? 他の子は……もっと貰ってます……よ」
鬱姫は瞳を潤ませている。
「ん〜、そうはいっても……」
 房姫が仕方なく、少し多めにお金を包んで渡してやった。
「でも、あなただけじゃなくて、他の子にも渡してあげてね」
「はい……ありがとうございます!」
 そういってくるりと背を向ける鬱姫。
 彼女はさらにお年玉を集めるため、餅つきをやってる鬼鎧のほうへ走っていった。

卍卍卍


「隼人、テレサ、ミア……誰にとっても幸福に過ごせる一年でありますように」
 風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は東光大慈院で剣の花嫁のテレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)と一緒に参拝していた。
「さ、行こうか……」
「はい、優斗さん」
 二人は並んで歩き、テレサはそっと優斗の手に触れる。
「テレサ?」
「こ、混んでますから、はぐれない様に手を繋いだほうが良いと思って……本当ですよ!」
 テレサは顔を赤らめる。
「あの……優斗さんは何を祈願したんですか」
「うん、家族みんなの幸せだよ」
「家族……」
 テレサは今年こそは優斗と正式にお付き合いしたいと祈ったが、彼はそうではなかったようだ。
 ちょっとがっくりきていると、前方からミア・ティンクル(みあ・てぃんくる)風祭 隼人(かざまつり・はやと)がやってきた。
「あー、優斗お兄ちゃんもマホロバに来てたんだあ。すっごい偶然だね〜」
 優斗とテレサを二人きりにしないように追いかけてきたミアが、優斗の空いたほうの手をとる。
「僕もお兄ちゃんと手を繋ぐもん」
「兄貴……正月からモテモテだな。というか、俺おじゃま虫?」
 隼人はミアにぜひにとせがまれて付いてきたのだが、優斗と合流の為に担がれたのをあえて乗ってやっていたのだ。
 とはいえ、彼女たちの無言の「隼人どっかいけ」プレッシャーに耐える気はなかった。
「いいよ、いいよ。俺は退散するから。ティファニーちゃんに慰めてもらうから! 『必殺仕返し人』ごっごやってもらうから!」
「いや、待て。隼人、お前には居て欲しい。これからちょっとあるから……」
 優斗は間を置いて一呼吸した後、もう一人家族が増えるのだといった。
「兄貴、まさか隠し子……!?」
「ちがっ……二人ともなんでそんな目で見てる? パートナーが増えるんだよ」
 優斗は灯姫(あかりひめ)を紹介した。
 彼は鬼の血を強く引く彼女を守るという約束をし、契約した。
 正直、妹たちを紹介するのは、彼女たちがどんな反応をするか若干の不安があった。
 しかし、新しい家族が出来ることへの希望も膨らんだ。
 当初はもう少し待ってからと思っていたが、灯姫のほうから会いたいといってきた。
 灯姫が率直に言う。
「今まで外の人間と接したことがなかったからな。気が急いた」
「大丈夫ですよ。妹たちは心根の優しい子ばかりです。あ、どうしたの?」
 優斗は妹たちの只ならぬ気配を感じた。
「優斗さん……何でまた勝手に『女の人』と契約してるんですか?」
「お兄ちゃん、『女の人』って浮気!? 書初めで反省文を提出だよ!」
 彼女たちのあからさまな嫉妬心にタジタジとなる優斗。
 隼人に助けを求めたが、弟は口笛を吹きながら既にこの場から逃げようとしている。
「悪いな、用事思い出した。じゃ、しっかりやってくれ」
「隼人、まだ話は……」
「優斗さんはここで反省してください!」
 テレサとミアにすごまれて、優斗は正座をさせられ新年早々の説教タイムに突入する。
「これが新しい家族、か。変わった家族だ……」
 灯姫はぽかんとその様子を眺めていた。
「でも、楽しそうだな……」