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またゴリラが出たぞ!

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 そして、また別のテーブルに目を向けてみる。
 こちらでは『冒険屋』と言うコミュニティの新年会……の下見が行われているところだった。
「冒険屋ギルドが出来てから約1年。メンバーも100人近い大所帯となったから、お店にも困るなぁ」
 店内を見回しながらノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)が言うとレン・オズワルド(れん・おずわるど)は頷いた。
「おまけに美食家気取りの馬鹿にこの辺の店が閉店においやられていたからなおさらだ」
 それにしても……とほかのテーブルに目を向ける。
「ようやくやってる居酒屋を見つけたと思ったら随分見知った顔が多いな……」
「あの、レンさん。やっぱり複数回に分けてやった方が良いかな?」
「ふむ」
「だとしたらグループ分けはどうしよう? 学校別? 世代別? それとも仲良しグループごと??」
「分けるとメンバーが揃わないかもしれないからなぁ……」
「だよねぇ。うーん、先にメニューを見させてもらおっか。あ、すみません。お料理メニューはどちらにあります?」
 横にいる店員に尋ねるも反応がない。
「……って話聞いてます?」
 それもそのはず相談をまかされたはずの八ッ橋優子はほぼシカトで携帯でツイッターしている。
 あわててメイベル・ポーターがフォローに入った。
「ご、ごめんなさい。私が対応しますぅ。優子さんはどこか一目のつかないところに行っててください〜」
「あっそう」
「ええと……そうですねぇ、それだけ大人数ですとぉ、当日はお店を貸し切りというかたちにしたほうがいいかもですぅ」
「貸し切りだって、レンさん」
「構わんさ。そのほうが皆羽根を伸ばせるだろう」
「あの、コースはどんなのがあります? 学生さんが多いので安めのコースがあると嬉しいです。それと飲み放題のメニューはソフトドリンクだけのがあると嬉しいな。あ、チョコレート・フォンデュの付くコースなんてあるんだぁ」
「……妙なところで会うな」
 見知った顔を見つけて、天津 麻羅(あまつ・まら)は声をかけた。
「麻羅さん! と言うことは……あ、支部長! お疲れ様です!」
 麻羅のうしろにいる火軻具土 命(ひのかぐつちの・みこと)……の連れているパラミタペンギンに話しかけた。超複雑。
 何を隠そうこのペンギン、冒険屋ギルドのカナン支部長なのである。『ドージェ様』と言う立派な名前も付いている。
「支部長は相変わらずいい毛並みしてますね!」
「ペンギンがいるのですぅ……、お店の規則じゃ動物の連れ込みはええと……どうだったんでしたっけ?」
「あ、店員さん! 支部長用の生魚ってありますか?」
「は……はい、今お刺身をお持ちしますですぅ」
 そんなやり取りを眺めつつ、麻羅は日本酒をあおった。
「……で、おぬしらは新年会の相談か?」
「はい。こちらのお店に決まりそうですけど。麻羅さんはこちらでなにを?」
「ああ、あやつがどうしても鍋を食べたいと言うのでな」
 そう言う彼女の目線の先に、契約者の水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)の姿があった。
「ふふふ、どんなに良い食材でもスープによっては生かせない事もあるわ。チゲのような辛口のスープに繊細な味の食材は合わない。でもこれを使えばどんな食材にも合わせられる万能のスープを作れる……そう、この『味○素』で!!」
 鍋に張った湯に粉を振りかけると、なんかどっかでかいだことのある……家庭的な匂いがしてきた。
「完璧ね」
 それから、奥座敷のアゲハ達に目をやる。
「待ってて! 今最高のスープを届けるから!」
 そう言って立ち上がった彼女だが、ふと相棒たちがレンと話してるのを見て驚く。
「……って、あら? いつの間にか冒険屋ギルドの幹部会になってる!?」
「そんなもん作るのに集中しすぎじゃ。折角だから、わしらも料理の下見をしていこう」
「え……、私、冒険屋じゃないのに……?」
「なにをいまさら……、何度も冒険屋として動いてるではないか」
「う……」
「そんな顔をするな。ほれ、わしのとっておきの酒を分けてやる、こいつを飲んで楽しく幹部会と洒落込もう。旨い酒があれば料理なんて割とどーでもいいのじゃ。わしのお勧めの辛口日本酒『乾坤一』の味は格別じゃぞぅ……」
 ※未成年にアルコールを勧めてはいけません。
「まぁいいけど……、向こうの人は呼ばないの?」
「向こうの人?」
 緋雨の目線の先には同コミュニティ所属、フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)の姿があった。
 幹部会があると聞いてやってきたのだが、何故か怒りに満ちた表情で騒いでいる鍋将軍たちを見つめている。
「なんなの連中! 呼んでもいないのにしゃしゃり出てきて! ウザイにもほどがあるわ! しかも自分のことを将軍だなんて厨二妄想症候群じゃないかしら! 帝王や魔王を名乗らないあたり小心者もいいところだわ!」
「その基準もどうかと思うけど……」
 緋雨の突っ込みも届かず、今度はああっと叫んだ。
「なんなの!? 凄い勢いで鍋を引っかきまわし始めたわ! いつまでかき混ぜ続けるつもりよ! まさか突発性鍋掻き混ぜ中毒患者なの? このままじゃ遠心力で鍋の中身が全部飛び散っちゃう! あいつらいったいどういうつもり!」
 どうも将軍が気になってしょうがないらしい。
「しかも店員さん呼びつけてる! なんかスープの文句言ってるし……ふん、どうせ自分たちの仕切りが悪かったんでしょ、人のせいにするなんてサイテー! まるでガキ大将……ゴウダー症ね、早くゲキジョウバーン剤を投与しないと!」
 興奮したフレデリカは立ち上がった。
「お、おい……どこに行くんじゃ?」
 麻羅が問うと、空大病院の新年会を指さした。
「スーパードクター梅にあいつらの診察をお願いしてくる!」
 ととと……と駆けていくと、もにゃもにゃとドクターと会話し、またととと……と戻ってきた。
……犯罪者は通報しろって言われた
「まぁ……、そりゃそうじゃろうな」