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リアクション
御弾 知恵子(みたま・ちえこ)は遺跡での騒ぎを聞きつけ、やってきたのだった。
「何?あたいのセーラー服ライバルが奈落人に乗っ取られた? ほー、そいつは面白そうじゃあないか! それもヒヒーンとか言ってるとか! ハハハ!愉快じゃないか!」
御弾は一人、勝手に瑛菜をライバルと決め付けているのだった。
「セーラー服アイドルは一人いりゃあいいのさ!」
相野 シャクシャイン(あいの・しゃくしゃいん)が言う。
「なんでも、福豆で馬頭を追い出すのだとか」
「ほほー、節分の要領で豆をぶつけりゃ治るってのかい! いいねいいね、やってやろうじゃない」
シュクシャインがつと御弾に向きなおると、熱心に説き始めた。
「我々アイヌの生活圏であった東北以北ではですね、節分の時は落花生を投げるのですよ!
これは撒いた豆をそのまま食べることができる、雪の中に撒いても拾いやすいなどの合理性を兼ね備えた行為なのです!」
「んー。なんかしっくり来ないけど、食べ物粗末にしないのはいいな。うん、試す価値はあるかもね」
こくこくとシュクシャインは頷く。
「我々パラ実生にとって馴染み深い大荒野では、少しの食べ物もムダにするのは禁物!その精神に通じる行為とも言えますね」
「んじゃ落花生買って行こうか!」
「はい、殻つき落花生でお願いします!」
上杉 菊(うえすぎ・きく)が、馬頭をじっと見つめて言った。
「わたくしに策が御座います」
召集を終わって合流したアテナ、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)、それにマガダ・バルドゥ(まがだ・ばるどぅ)らは、上杉の周りに集まった。。
エリシュカがマガダをチラッと見て言う。
「はわ、アテナ……もしかして瑛菜も変なのに体を取られちゃった、の?うゅ、たいへん、なの」
どこ吹く風といった調子のマガダは、のんびりと爪を磨いていた。
「馬ならば思い切り走りたいと言う欲望に抗えない筈。ましてや久し振りの娑婆と言っているなら尚更身体を動かしたいはず。200m走の挑戦状を叩き付けてみてはどうでしょうか」
ちょっと言葉を切って、続ける。
「ゴールと言うポイントに馬頭を誘い込んで撃退する、競技を逆手に取った作戦です」
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が上杉の提案を聞いて言う。
「速いって言っても人間レベルだし、どこまで通用するかわかんないけど、全速全開で行ってみるよ!」
ローザマリアもうなずいた。
「いい提案だと思う。瑛菜を傷つけたくないし」
マガダが言った。
「それではワタシはローザを着ることにいたしまショウ」
ローザとマガダの輪郭が重なる。九本の狐の尾と狐の耳を持ち、波打つ白銀の髪、ヴァイオレットとゴールドののオッドアイの美女がそこに佇んでいた。
「ちぎのたくらみを使いまショウカ」
見る間に5歳前後の幼い九尾の狐娘に変身した。エリシュカがつぶやく。
「きょうのローザは、ローザじゃないみたい、なの……なかに変なのがいる、の」
ミルディアが、
「あたしは細かい動きは難しいし、ヘンに小細工をするのも苦手だから、待ってるメンバーで豆をぶつけてね!」
そう言って準備運動を始めた。エリシュカがすかさず、どこからともなく競技用の石灰とライン引きを持ち出してきて線を引きコースを作りはじめた。
陽太が言う。
「では俺のほうは根回しを使って、ゴールしてきた馬頭に連携して豆を投げる段取りをしましょう。ガードラインを使えば、万が一暴走されたときに盾にもなれますし」
エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が、大量の福豆をゴールわきの岩陰にに積み上げながら言った。
「奈落人…全く、どいつもこいつもロクなことしませんわね」
アスカも、ゴール部分に豆を持ってやってきた。
「豆はねー、大量に買ってきてたから存分に使っていいわよ〜」
本音はゴールしてきた馬頭を描こうと言うものだが。
ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は積み上げられた豆を見て言った。
「えーっと、この豆をぶつければ良いの?」
山積みされた豆をひょいひょいとつまむアスカを見て、ノーンもつまんでみた。
「あっ、美味しいね、これ!」
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、瑛菜を見やって目を見張った。
「アテナの呼び出しに来てみたら……この前はパートナーの話しなかったから気付かなかったけど、熾月瑛菜、か。まぁ、友達だしなぁ」
ばらりと下がってきた髪を後ろに追いやりつつ、
「んじゃ俺は、動きを鈍らせられないかやってみるよ」
エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が長い銀髪をさっと振った。
「ならば、わらわも豆をぶつけようぞ」
紫月 睡蓮(しづき・すいれん)は、はにかむような様子で言った。
「唯斗兄さんが動きを止めたら、私も豆をぶつければいいの・・・かな」
プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が頷いて言う。
「それでよいのですよ。思いっきりぶつけましょうね」
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