空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

コンビニライフ

リアクション公開中!

コンビニライフ

リアクション

「翔くんは私と連携するんだから!」
「わ、私が先にテレパシーでOKもらったもん!」
 翔のイーグリットを挟んで、向き合っているのは美羽のグラディウスと理知のグリフォンである。
「……」
「翔、そなたも罪な奴だな」
 イーグリットの中で頭を抱える翔にアリサがそう言う。
 事の発端は裁が一体目を倒すちょっと前に少し遡る。

「アリサ! 俺達も行くぜ!」
 翔はビームサーベルを構える。
 そこにダブルビームサーベル状態の美羽のグラディウスが近寄り、
「翔くん! 連携して一気に蹴散らそうね!!」
「美羽か! いいぜ!!」
 そう言うと、グリフォンから「翔くん! 私と一緒に戦うってさっき言ったよね?」と、理知のテレパシーが入る。
「ああ、戦うぜ!」
「……翔。そなた……」
 アリサが気前よく二人に返事した翔をジト目で見る。


「ねー、ベアトリーチェ?」
 先程から続く不毛な美羽と理知の争いを聞いていた智緒が、美羽のパートナーであるベアトリーチェに通信を送る。
「すみません! 美羽さんがご迷惑をおかけしてしまって……」
「ううん、こっちもごめんね。智緒はグリフォンの操縦担当だけど、今コントロールは理知が取っちゃったの」
「いえいえ、智緒さん。こういう時は周囲を警戒しつつ、心穏やかににするのが一番ですよ?」
と、傍の美羽を見たベアトリーチェは片腕をレバーにおいたまま、漫画をめくる。
「像賊が襲ってくるまでは、マンガを読みながら待機しましょう」と予めコクピットに置いていたのである。

その内容は、というと。
ドージェを失った未亡人マレーナ・サエフが管理人を務める下宿「夜露死苦荘」を舞台に、空大受験を目指す受験生が、管理人さんを巡って繰り広げる恋愛コメディ「めぞん夜露死苦」
暴力とモヒカンが支配する時代に、敢然と立ち向かう世紀末救世主種もみ剣士伝説「キマクの拳」
 ちなみに、キマクの拳と北東の拳は別漫画である。今、彼女が読むのは「めぞん夜露死苦」の方である。
 真面目な優等生のベアトリーチェだが、たまにはマンガも読む。
「でもさ……理知も美羽も核心には触れずによくああも喧嘩出来るよね?」
と、智緒。
「核心?」
「結局、翔の事が好……あ、理知。え? わわわぁぁぁーッ! ……ツー、ザー」
「喰われたのかしら?」
 向こうは向こうで大変そう、とベアトリーチェが漫画を閉じる。
 話を終えた美羽が振り向く。
「美羽さん、やっと攻撃ですか? 盗賊さんもずっと待っててくれたんですよ?」
「ベアトリーチェ? フルパワーモードにして。この最強のグラディウスの力、見せてやるんだから! 理知ちゃんに!!」
「……え?」
 ベアトリーチェが固まり、彼女の眼鏡がずれる。
 さっき、口を理知に塞がれた智緒が再度あんぐりと口を開ける。
「は? 今、何て……?」
「うん。翔くんと一緒に戦う前に、まずは……美羽ちゃんと決着付ける事にしたの」
 ダブルビームサーベルのグラディウスに、ソードを構えるグリフォン。
「「こんなの、絶対おかしいよ!?」」
 智緒とベアトリーチェの声が見事にシンクロする。

 アポロトスもその様子を訝しげに眺めていた。
「仲間割れか……じゃが、チャンスか!!」
「たああぁぁぁーッ!!」
「やあぁぁぁーッ!!」
 グラディウスとグリフォンが遂に激突する。
「やめろ! 何だかよくわからないけど、やめろって!!」
 翔がイーグリットで止めに入るも、既に二人の耳には届いていない。
「おぬしのせいであろう」とアリサが呟こうとして、何かに気づく。
「翔、一機来るぞ!」
「ちっ!」
 シュメッターリングのソードを受け止める翔のイーグリット。
 もう一体が激しく剣戟を競いあうグラディウスとグリフォンの方へソードを持って走りよる。
「美羽、理知!!」と翔が叫ぶも、

「「邪魔しないでっ!!!」」

 美羽と理知の声が見事にハモり、それぞれの剣が最短の軌道でシュメッターリングに刺さる。
 一瞬で三枚におろされる。
「見直したわ理知。少しは、やるようね?」
「美羽も、流石、最強のイコンを持つだけの事はあるわね」
 フフフッと笑いあう二人。一瞬仲直りしたかとベアトリーチェは思ったのだが……甘かった。
「でも、翔くんはさっき、私の名前を先に呼んだもん!」
「あ、あいうえお順なだけよ!!」
「そんなの咄嗟には考えられないでしょ!?」
「わ、私の名前を呼んだ時の方が、声が大きかったもん!!」
「あの……美羽さん? わ、私から一つ提案が……」
 引っ込み思案なベアトリーチェが恐る恐る声をかける。
「何?」
三人一緒に戦えばいいんじゃないでしょうか?
 沈黙が暫し流れた。
「……そうだね」
「うん。それなら私も異論ないよ」
 二人はあっさり同意し、智緒が椅子からずり落ちるのであった。