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シャンバラ鑑定団

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シャンバラ鑑定団

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    ★    ★    ★
 
「それでは、エントリーナンバー8番、葦原島からお越しの宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)さんです」
 シャレード・ムーンに呼ばれて、宇都宮祥子がステージに現れる。
「今日は、珍しい物をたくさん持って来たよ。ちゃんと鑑定してね」
「では、お宝を拝見しましょう」
 シャレード・ムーンが指示すると、日堂真宵が大谷文美と一緒に、何やら大きいワゴンを押してきた。
「オープン!」
 掛けられていた布が取り払われると、そこにはいくつものレアアイテムがならべられていた。
 智慧の硫黄ナラカの果実黄金の枝賢人の印章コリマの霊槍ホーリーシンボルといった物々である。
「これらは、より高みを目指そうとして集めた物です」
 一つ一つに関して、依頼者が入手の困難さのくだりから丁寧に説明し始めてくれた。だが、さすがに長いので、ここでは割愛させてもらう。依頼者の想像では、それぞれのアイテムごとに価値基準が違うのではないかということであった。だとしたら、なぜこれらのアイテムが、同じカテゴリの中に収まるのかということである。
 ともあれ、これだけの物を集めるのは並大抵ではなかったということだけは充分にうかがえる。これは期待できるか!?
「うんうん、大変でしたでしょうねー。では、種類が多岐にわたっていますので、それぞれの専門の先生たちに鑑定していただきましょう」
 シャレード・ムーンに呼ばれて、織田信長、エリシア・ボック、ノーン・クリスタリア、エクス・シュペルティア、紫月睡蓮たちがゾロゾロと現れる。ワゴンのそばでは、東朱鷺が警備として無言で威圧的に立っていた。また南鮪のようにお宝を頭から被られでもしたら大変だということでの配慮である。
「いいなあ、あんなにたくさん。一つぐらいくれないかしら」
 双眼鏡でアイテムたちを間近にのぞき込みながら、ルカルカ・ルーが言った。
「さて、どうやら鑑定が終わったようです。それでは、まず、希望金額からお聞かせいただきましょう」
 鑑定士たちが席に戻るのを確認して、シャレード・ムーンが言った。
「では380ゴルダで」
「はい、分かりました。それでは、まずはオープン・ザ・プライス!」
 1000!!
「おお、いい線の金額が出ました。では、解説をお願いします。織田先生、いかがだったでしょうか」
「うむ。まず大まかにいうと、これらは転職アイテムと呼ばれる宝飾品に該当するものなのだよ。はっきり言って、これらの品物そのものの価値はほとんどないと言っていいであろう。言ってしまえば、これらの品物は、そのものの価値よりも、これらの所持者の価値をこそ証明する物であると言えるのだよ」
「まあ、そうですわね。ホーリーシンボルは若干魔法がかかっているようですが、他の物は何に使うのかさえはっきりしないですから。あるいは、はっきりしすぎていて、突き詰めると面白くないというか……。まあ、とりあえず、ナラカの果実は食べてみるとか、コリマの霊槍で何かをツンツンしてみるとかされました?」
ごめんなさい、さすがにそれは……」
 エリシア・ボックの言葉に、宇都宮祥子が、得体の知れないものを食べるのはちょっとという顔をする。
「じゃ、ワタシ、食べてもいい?」
 思わず横から口を出したノーン・クリスタリアが、エリシア・ボックにぺちっと叩かれる。
「そうですね。織田先生は、これでプスッとやっちゃったんですか?」
 コリマの霊槍を指さして、紫月睡蓮が織田信長に訊ねた。
「ふっ、それは、やってみれば分かるというものだよ」
 ちょっと意味ありげに織田信長が口の端を綻ばせた。
「実際、これらのアイテムは、他人に認めてもらうために必要な物ではあるが、これがすべてではない。使う使わないに意味があるとも言い切れない物なのだな。本人に相応の力があって、初めて意味を成すのだよ。それがなければ、これらは単なる果実や結晶にすぎないであろう」
「なんだか、色々と難しいアイテムみたいですねえ。でも、さすがにこれだけ揃うと壮観です。お宝の持ち腐れにならないように、ちゃんと使ってあげてくださいね。では、ありがとうございました」
 
    ★    ★    ★
 
「続いては、エントリーナンバー9、魔法少女ストレイ☆ソアさんです」
 シャレード・ムーンの紹介で、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)がおずおずとステージに上がってきた。
ごめんなさーいっ! 今は、ストレイ☆ソアじゃなくて、ソア・ウェンボリスなんです……」
 小さな声で、ソア・ウェンボリスが訂正する。
「申し訳ありません。でも、そのかかえているぬいぐるみを見たとたん、魔法少女という単語が……」
 ちょっとブルンと身を震わせて、シャレード・ムーンが謝った。
「それで、依頼品はどちらでしょうか」
「はい、このぬいぐるみ妖精です」
 ソア・ウェンボリスが、かかえていたぬいぐるみ妖精をズイと突き出した。
「ええと……、こういうのは佐々木先生、お願いいたします」
 シャレード・ムーンに呼ばれて、佐々木弥十郎があわててやってきた。なぜか、手には祓い串を持っている。
「これは……。いつこれを手に入れたんですかぁ〜」
「ええと、街を歩いていたら、勝手についてきて……」
 ちょっと不安そうに、ソア・ウェンボリスが佐々木弥十郎に答えた。
「そうですかぁ。わかりましたぁ」
 何やら、佐々木弥十郎がちょっと考え込む。
 ――分かりましたじゃないよ。なんとかしろよ、おい。
 伊勢敦が、佐々木弥十郎の中で悪態をついた。
「わーい、かわいー」
 思わずもふもふしようとするノーン・クリスタリアを、エリシア・ボックがあわててやめさせた。
「強い魔力を感じますわ。この闇は、一味違いますわよ
「だな。なんでこんな危ないもん持ち出すんだ?」
 紫月唯斗が、エリシア・ボックに同意して、彼女たちを下がらせた。
嫌な感じがします……えっとー……な、なんかえらいことになってますぅ!?
 ちょっとビビったソア・ウェンボリスが、ぬいぐるみ妖精をかかえたまま後退った。
「そんなことはないよ。だって、ソアは、ちゃんと魔法少女になってくれたじゃないか」
 ぬいぐるみ妖精が、ソア・ウェンボリスに呼びかけた。
今の、聞いたな……
 紫月唯斗がつぶやいた、鑑定士たちを集めてぼそぼそと相談を始めた。
「ええと、いいでしょうか。では、希望金額をお願いします」
「えっと、5000ゴルダでお願いします」
 シャレード・ムーンにうながされて、ソア・ウェンボリスが答えた。
「それでは、オープン・ザ・プライス!」
 4989!!
「ふ、不吉な……。いえ、おおよそ予想通りでしたね。よかったですね」
「な、なんだか、微妙に納得が……」
「ええと、理由は……聞かないでください」
 祓い串をバサバサ振り回しながら佐々木弥十郎が総括した。
「ありがとうございましたー」