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リアクション
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、光学迷彩やブラックコート、光学モザイクなどを駆使して、密かに城内に侵入していたが、戦闘の気配に、その場へ向かった。
そうして、回廊を走る衛兵を見付け、密かにヒプノシスを使って眠らせる。
「誰か先行してるのがいるみたいね!」
反対側から走って来るイルヴリーヒ達は、眠る衛兵達を越えて進んだ。。
足を止めずにそれらを見やりつつ、そう言った明子の言葉に、俺だ、俺。と呟く。
それにしても、とエヴァルトは思った。
前に侵入した時は、もっと、龍騎士並の強さを持った衛兵がいたように思う。
今回は、その気配を感じなかった。気のせいだろうか、と首を傾げた。
「来たわね」
リカイン・フェルマータは、身廊の中程で、シルフィスティと共に待ち受けていた。
「派手にやらせて貰うわよ」
シルフィスティは、薄く笑いながら、宮殿用飛行翼を使って一気に突き進んで来たジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)が、自分達を見とめて、床に降り立つのを迎える。
「……ここは、フィス達くらい、止められないとね!」
小さく呟きながら、ふ、と笑うと、シルフィスティから仕掛けた。
サイコキネシスによって、ヨーヨーが宙を飛び交う。
中には超伝導ヨーヨーも忍ばせてあった。
「そんなもの、通用しませんよ!」
声に、びり、と肌に突き刺さるような威圧を感じる。
ジーナは剣の魔力を使って、派手な炎の魔法を仕掛けた。
同時に魔法を重ね掛け、中空にビシリとヒビが入ったかと思うと、そこから漏れ出る光が降り注ぐ。
光に貫かれたヨーヨーは、次々ぼとぼとと落下した。
「……やるわね!」
シルフィスティは苦笑する。にこ、とジーナも笑った。
なるほど、ジーナの思惑は読めた。――自分と、同じだ。
「それじゃ、遠慮無く、やらせてもらうわ!」
(始まりました)
「わかった」
崖上の宮殿での戦闘が始まったことを知らせるジーナのテレパシーに、陽動と退路の確保の為、街門外に待機していたパートナーのドラゴニュート、ガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)と精霊のユイリ・ウインドリィ(ゆいり・ういんどりぃ)は、打ち合せ通り、門に機晶爆弾による爆撃を仕掛けた。
次々と、爆音が上がる。
「――素直じゃありませんね、ガイアスさん」
それにしても、と、黙々と仕事をするガイアスに、ユイリは苦笑した。
「折角ここまで来たのですから、合流して共に決起すればよかったのに」
ガイアスは、フンとそっぽを向いた。
「……ジーナが、イルヴリーヒとやらを信じるに足ると判断したのだ。我も協力することに異論などない。
折角ここまで一人できたのだ、一段落するまでは我等抜きで頑張らせてみるのがよかろう」
親心ですね、とユイリは笑う。
「先生からのお達しで、調べものの為とか言っていた気がしますけど」
「それでもだ」
「……まあ、確かにジーナの成長の為には得難い機会ではありますが」
ユイリはそこで、言葉を止めた。
夜目にも、集まってくる兵士達が分かる。
「それでは、こちらも頑張って混乱させましょうか。ジーナの為に」
見境がなくなってきたシルフィスティの様子に、リカインは内心で慌てた。
「フィス姉さん、やりすぎよ!」
リカインはジーナの魔法を封じたが、ジーナは怯まず武器攻撃を仕掛けてくる。
折角こちら側で行動しているのに、連れ戻されかねない、とリカインは心配した。
「ちっ、始まってやがる!」
そこへ、回廊の方から背後に回り込んで来たアストライト達が現れ、挟み撃ちにされて、リカインは撤退することにした。
シルフィスティを半ば無理矢理引きずるようにして、
「ちょっ! 折角ここまで来たのに逃げるのかよ――! ケンカすんじゃないのかッ!」
という背後からの華花のギリギリの言葉を、冷や汗をかきつつ聞き流し、リカインは戦いを切り上げて戻った。
「もう、どうして邪魔するのよ」
私室まで連れ戻されて、シルフィスティは抗議する。
「だって」
「折角派手に戦ってたのに。
周りのルーナサズ兵を怖気づかせる為の演出だったのよ」
「……そうなの?」
「向こうもそのつもりで、派手なのばかり使って来たじゃない」
まあ、戦ってる内に見境がなくなってきたのは、本当だけど。
付け加えた言葉に、やっぱりじゃない、とリカインは呆れた。
「周りの護衛は引き受けるから、本命はよろしく」
正直、まさか本当に正面から突っ込むとは思ってなかったけどね、と伏見明子は思ったが、とりあえず強いのは任されることにした。
最奥の聖堂に飛び込む。
ひっ、と、レイ・レフテナンが声にならない悲鳴を上げた。
奥の壁際の台座に乗った、不思議な色合いの巨大な球体――『霊珠』の前に、男が立っている。
そしてその両脇に、ずらりと護衛騎士が並んでいた。
イルヴリーヒの表情が険しくなる。
「……誘われたってこと」
明子が苦笑を漏らした。
中央にいる痩せぎすの男が、慇懃に笑う。
「……最近、シャンバラくんだりから人が入り込んでいたり、賑わしかったですしな。
近々いらっしゃると思ってお待ちしておりました。
まさか弟君、あなたが来るとは思っておりませんでしたが」
「……兄でなくて残念だったな」
低い声でイルヴリーヒが言うと、全く、とテウタテスは肩を揺らしてくくくと笑った。
「聖霊が眠ったまま、次の継承者を選ぶ様子が無い。
生きているとは思っていましたよ。
民に圧政を強いれば、必ず出てくると思っていたのですが。
まあ、弟君、あなたも生きているのでしたら死んでいただかなくてはならないところでしたからな」
イルヴリーヒの目元が、ぴくりと動いた。
「……そうか。やはり、兄上は生きているか」
生きている。そう信じていたが、確証はなかった。
聖霊が眠る霊珠も、自分の目で確かめたわけではない。
胸の内に、安堵が広がる。一瞬目を閉じ、すぐに開いて、テウタテスを睨み付けた。
「しかし、まさかお一人でいらっしゃるとは、私も舐められたものだ」
「私もいるわよ」
くつくつと嘲笑ったテウタテスに、明子がムッとして呟いた。
「貴様を討つ役目を、他の者に任せるつもりは無い!」
「大きく出ましたな。あなたにできますかな?」
剣を抜いたイルヴリーヒに、テウタテスはにやりと笑って持っていた錫杖を構えた。
「――何!?」
走り込んだイルヴリーヒは、ぎょっと目を見開いた。
ぼう、と床に魔法陣が浮かび上がり、明子はぞくりと悪寒を感じて、咄嗟にその魔法陣から出た。
そこへ護衛騎士が斬りかかってきて、明子はすかさず周囲の護衛騎士達に、まとめて則天去私を仕掛ける。
「あんたたち……! こんなヤツに従ってるなんて、人としてどうなのよ!?」
「明子さん!」
背後から、レイの叫び。
はっとして明子はイルヴリーヒを見た。
魔法陣の真ん中で、イルヴリーヒが傷だらけで倒れている。
「私が十年間、漫然とこの地位に甘んじているとでも思っていましたか。
今や私は龍の力すら使える。
ただひたすら殻を削り続けてきただけの、能無しのお前達とは、違うのだ!」
「……それは……許されない、大罪、だ」
「はっ! ほざくがいい!」
横の騎士から剣を受け取り、振り上げるテウタテスに、動けないイルヴリーヒは目を閉じた。
ここまで協力してくれた者達に、申し訳無い、と思う。そして
(申し訳ありません、兄上……)
明子は、とどめを刺そうとするテウタテスを阻もうとするが、まずいタイミングで護衛騎士が攻め込んできた。
攻撃を弾き返しながら、間に合わない、と思う。
「イルヴリーヒ様!」
叫びと共に、テウタテスの前に飛び込み、振り下ろされる剣に裂かれたのは、タルテュだった。
意識を失いかけていたイルヴリーヒは、愕然と目を見開く。
倒れるタルテュに、テウタテスも意表をつかれた。
そして、そこに生じた僅かな間を狙い、煙幕ファンデーションが投げ込まれる。
テウタテスが怯んで一歩引いただところに、エヴァルト・マルトリッツが飛び込んだ。
魔法陣に踏み込んで、ずしりと体が重くなり、一瞬顔をしかめたが、素早くイルヴリーヒを担ぎ上げて、魔法陣を走り出た。
ちら、と明子に目をやる。
「明子さん……!」
「解ってるわ!」
レイに促されるまでもない。明子は適当に攻撃を受け流し、殿でその場を撤退した。
◇ ◇ ◇
床に、拘束されたままの一人の青年が転がっている。
「やっと会えたわ、兄君。随分雰囲気が変わったのね」
ネヴァンは、くすくす笑いながら、その青年の前に膝を付き、顔を隠す髪を払いよかした。
「テウタテス様には、渡さない……。
神の如き力も、杖も、あたしのもの」
くすくす笑って、ネヴァンは身を起こす。
「ああ、厄介だわ。
契約者だなんて、シャンバラは面倒なことになっていたのね」
ネヴァンは立ち上がり、意識を失ったままのキアンを見下ろして、微笑んだ。
「あなたには、死んで貰うつもりでいたのだけど。
多分、この後、面倒なことになりそうだから。
あたしの杖でも事足りるかもしれないけれど、手は多い方がいいでしょう?
あの子と共に、あたしを護ってね」
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担当マスターより
▼担当マスター
九道雷
▼マスターコメント
ハルカ「お待たせなのです。第2回のお届けなのです!」
ラウル「どうも」
ハルカ「はかせも無事に見つかったのです。ありがとうなのです」
ラウル「いやあ……申し訳ない」
ハルカ「あっという間に、次は最終回なのですね」
ラウル「何だかあちこち大変なことになってるね?」
ハルカ「皆、頑張ってなのです」
ラウル「大変なことになってる人もいるね?」
ハルカ「そあさん、頑張るのです――!」
ラウル「まあ、頑張って」
ハルカ「さて! 次回最終回は、エンディングアクション大募集なのです」
ラウル「通常アクションの他に、『全部終わった後』を仮定して、エンディング用のアクションを書いてもいいよ、という、九道のシナリオでは何だか恒例の企画だね」
ハルカ「はー終わった家帰ってお茶飲んでのんびり〜、とか、何でもいいのです」
ラウル「まあ、ダブルアクションになっちゃうんだけど」
ハルカ「今回だけ特別なのです」
ラウル「でも、リアクションに採用されるのはどちらか片方、という場合も多いので、要注意。
メインアクションじゃなくて、エンディングアクションの方だけ採用される場合もあるかも」
ハルカ「あと、質問コーナーもあるので、何か訊きたいことがあったら、書いてくださいなのです」
ラウル「そんな訳で、次回もよろしく」
ハルカ「楽しみにしてるのです!」