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リアクション
「倒したか?」
十兵衛達が走ってくる。
そこに、竜胆を連れたヴィアスが縁の下から出て来た。その姿を見て、ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)がホッとしたように胸を撫で下ろす。
「無事でよかったぜ……!」
「いや、まだ安心するのは早い」
十兵衛が言う。それとほぼ同時に……
ぐにゃり……
一同は、地面が曲がったような感覚に襲われる。
「わ……わわ……なんか。地面が揺れてるよ? 地震かな?」
レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は頭を守るようにして言った。
「慌てるな! これは敵の幻術だ」
十兵衛が言う。
「幻術じゃと? では、この近くに術をかけているものが隠れておるという事じゃな」
ミア・マハ(みあ・まは)は、そうつぶやくと『神の目』を唱えた。強烈な光が発し、隠れていたものの姿を暴かれる。
するよ、闇の中、あちこちに隠れていた忍び達の姿が露になる。
「おのれ」
隠形の術を破られた忍び達は、一斉に襲いかかって来た。
「お姫様には手を出させないぞ」
レキは黄昏の星輝銃を構え、迫り来る忍び達に向かって発砲。
しかし、忍びの動きはあまりにも早く、あっという間に目の前に迫ってくる。レキは『たいむちゃん時計』を装備した。レキの素早さが上がり、忍びの動きがスローに感じられる。その感覚のまま、レキは忍びの攻撃を『スウェー』で避け、カウンターで『財天去私』を畳み込んだ。必殺の拳に打たれ、忍びの体が吹っ飛んで行く。そのレキを狙い、別の忍者が布の四方を持って、むささびのごとく飛空しながらレキに襲いかかってくる。
それを察知したミアが、素早く天に手をかざして叫んだ。
「天のいかづち!」
稲妻が滅ばしり、敵の体を撃ち抜く。
「五月蠅い蠅は落とすに限る」
落ちて来た忍びを見て、ミアは満足げにつぶやいた。
さらに襲いかかってくる敵に向かい、ミアはファイアストームを展開する。
レキは『エイミング』で狙いを定め、遠距離から攻撃してくる相手を次々に倒して行った。
「何をしている! 早く竜胆を探し出さんか!」
本堂の縁で六角道元が叫んでいる。
「里見村の者の話では、青みがかった黒髪の、それは美しい女にばけておったと聞く。刹那殿の千里眼でもそのような姿であったそうだ。青みがかった黒髪の女を捜せ!」
「はは……!」
下っ端の忍者達が叫ぶ。
その言葉を聞いて、蒼は思った。
……どうやら、竜胆さんが変装してる事はばれていないようです……!
とすれば、自分がとる行動は一つしかない……そう、決心して蒼は叫んだ。
「探すまでもありません! 私が、竜胆です」
「蒼さん……」
竜胆が青ざめた。
「しっ!」
十兵衛は竜胆を制する。
「蒼殿の思いを無駄にする気か?」
「しかし……」
「おぬしが竜胆だと?」
六角はまじまじと蒼を見た。
遠目だが、確かに青みがかった黒髪の美しい女だ。
蒼は言った。
「これ以上、皆様に危難が及ぶ事に耐えられません。どうか、私を捕らえるかわりに皆様をお見逃し下さい」
「いいだろう」
道元はうなずいた。そして、下っ端の忍び達に向かって叫んだ」
「竜胆を捕らえよ!」
「はは……!」
下っ端の忍び達が、小太刀を手に蒼に向かって走って行く。
「蒼さん!」
竜胆が鳴きそうな声を上げた。その口を十兵衛が塞ぐ。
「蒼殿は、我々が助けるから、あなたはここでじっとしておれ」
「でも……」
まだ、何かを言いたげな竜胆を後に十兵衛は駆け出した。
「俺も行くぜ!」
ラルクがその後を追って行く。
「まて! 竜胆殿を離せ」
十兵衛は道元に向かって呼ばわると、刀を抜き忍び達の中に斬り込んで行く。太刀を正面に構え、神速の打ち込み! 並みいる忍び達を一刀で次々になぎ倒して行く。
「やるね、十兵衛さん! 後ろは俺にまかせろ」
ラルクは叫ぶと、疾風の覇気を展開。ラルクの体内に宿る気の力を開放され、風のように早く動けるようになる。
そして、ラルクは十兵衛の後ろにいる敵の眼前に割り込むと、ドラゴンアーツを展開。襲いかかってくる敵を次々と投げ飛ばして行く。
「お主もやるじゃないか」
十兵衛が刀を振りながらラルクに言った。
「まあね……」
ラルクは得意げに笑う。そこへ、別の忍びが襲いかかって来る。
「へ……! 俺からしてみたらお前らなんか止まって見えるぜ?」
ラルクはそういって、忍びの額をちょんと叩くと、鳳凰の拳でみぞおちを連打。
「ぐふ……」
うめき声とともに忍びが倒れる。
さらに、十兵衛の脇を襲う敵に神速で近づき、その腹を思い切り蹴り上げた。忍びは悲鳴を上げて地面に叩き付けられる。
だが、しかし……
「もうよい!」
道元が叫んだ。
「竜胆を捕らえた。もう、目的は達した」
「なんだと?」
ラルクは驚いて、道元を見る。
確かに、その腕には竜胆に化けた蒼が捕らえられている。
「これ以上の争いは、時間の無駄だ。引け!」
そういうと、道元は蒼を捕らえたまま逃げようとした。
「逃さぬ!」
十兵衛が刀を構えて道元の前方を塞ぐ。
「竜胆ぎみを離せ」
「ふん……」
道元は鼻白んだように言う。
「どうしても死にたいか。愚か者めが」
「その言葉、そっくり返す」
「仕方あるまい……」
道元は蒼の体を下っ端の忍びに預けると、自らも刀を抜き構えた。
「いっそ、ここで、決着をつけるか」
「望むところ」
十兵衛は刀を左手に持ちかえ、右八相に構えた。そこへ道元が斬り掛かっていく。そこを上段から切り下げる。道元は間一髪で後ろに跳躍。宙返りして着地。そこに十兵衛の刃が迫る。道元が刀で受け止める。
一方、蒼はその体を忍びに羽交い締めにされていた。その白いうなじに、忍びの刃が、今まさに斬らんがごとく突き立てられている。
ついに、見かねた竜胆が走り出した。
「もう、争いはやめて下さい!」
そして、かぶっていたブロンドのカツラを外すと、
「今捕まっているのは、竜胆ではありません。私が、本物の竜胆です! その人を離して下さい!」
皆に呼ばわるように叫んだ。
「な……」
一瞬、十兵衛の気がそれた。その隙を道元は見逃さなかった。十兵衛の肩に道元の刃が迫る。衣が裂け、鮮血が吹き出す。とどめを刺そうとした道元の腕を、十兵衛はとっさに刃ではねのけた。
「ちっ!」
道元が腕をおさえる。そこから、血があふれている。
さらに、その肩に一太刀浴びせると、十兵衛はその場に倒れてしまった。
そこへ、ラルクが飛び込んでくる。
「対丈夫か、十兵衛さん!」
その背後から道元が襲いかかってくる。それを神速で避け、ドラゴンアーツを使って道元の腹に打ち込む。
「がはあ……」
道元は腹を抑えて気を失ってしまった。
「十兵衛さん! 十兵衛さん」
ラルクは十兵衛の体を揺さぶった。キズはたいした事ないが、刃に塗ってあった毒が回っているようだ。十兵衛は遠くなる意識の中で言った。
「私の事はいい。それより、竜胆君をお守りしてくれ」
見ると、忍び達が竜胆に向かっているのが見える。
「姫には手を出させぬわ!」
ミア・マハが『ファイアストーム』で応戦。
その横ではレキが黄昏の星輝銃を撃ち続けている。
そこに紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が飛び込んで来た。
「加勢します」
唯斗はそういうと、両手にティアマトの鱗を持ち、構えた。
忍者達は唯斗めがけて、次々に手裏剣を飛ばして来た。それをかわしながら、
「こっちも忍者な訳で手の内は読めるんだよな」
と、高くジャンプし、忍者達の背後に回って後ろからは光条兵器で次々と殴り飛ばしていった。
「ああ……」
竜胆は目の前で繰り広げられる戦いの恐ろしさに耐えられず、大木に身を寄せて震えていた。
そこに手裏剣が飛んでくる。
青ざめる竜胆の前に一人の忍びが姿を現した。忍びは鎖がまを振り回しながら近づいてくる。
「危ない!」
唯斗が竜胆の前に立ちはだかった。
「邪魔だてするな!」
忍びはそういいながらじりじりと近づいてくる。しかも、不気味な事に近づくごとに体が分かれて行く。
「分身の術ですか」
唯斗がつぶやいた。
「その通り。どれが本物の我か見破れまい!」
忍者の言葉に、唯斗が目を閉じる。
「どうした? 目など閉じて。早々とあきらめたか?」
あざけり笑う忍びの者。しかし、その言葉を受け流して、唯斗はひたすら感覚を研ぎすました。やがて、闇の中に相手の気配が見えてくる。
「そこだ……!」
唯斗は叫ぶと、目を閉じたまま、気配のする方へ疾風突きを繰り出した。相手の急所にあたり、分身の術がとけてその場に悶絶。
「……あ……ありがとうございます」
礼をいう竜胆に向かって唯斗は答えた。
「困ってる奴がいるなら助ける。それが男さ」
その頃、蒼は忍者に捕らえられたまま本堂の裏に連れて行かれていた。
「ちくしょう。騙しやがって」
忍者がいまいましげに言う。
「どうしてやろうか」
そして、蒼の首筋に刃を突き立てた。
その時。
「その人を離して下さい」
スーツ姿のエメが現れる。
「な……なんだ? お前は」
「その人は、私の大切なパートナーです。返して下さい」
「ふざけるな」
忍者は蒼を離してエメに襲いかかって行った。
エメがプリンス・オブ・セイヴァーをふるう。忍者はそれをとんぼ返りでかわして笑った。
「そんな攻撃で俺様が倒せると思ってか?」
そこまで、言った後忍者の顔が急に歪んだ。そして苦悶の表情を浮かべる。
「ぐ……ぐは……」
忍者は首筋から血を流して倒れた。
「丸腰と思って、油断したのですね」
蒼がナラカの蜘蛛糸を手につぶやいた。
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