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とりかえばや男の娘

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とりかえばや男の娘

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「お……おのれえ……何たるふがいない奴らだ……」
 あっという間に倒されてしまった忍び達を見て、柳川吉安は歯噛みをする。
 すると、背後から一人の青年が現れて言った。
「ふふふ。そんなに落ち込む事はございませんよ」
 それは、先日の古寺襲撃の際現れ、知らぬうちに消えていた、あの黒髪のマホロバ人の青年である。
「こちらには、まだ、可愛い配下がおります」
「可愛い配下だと?」
「そうです」
 青年はうなずくと、手にしていた扇を地中に向けて囁いた。
「斬鬼に鈍鬼出て参れ」

 その声に答えるがごとく、地響きがする。そして、地割れとともに2匹の鬼が出現した。全身黄色の鬼と煤けた鉛色の鬼である。鉛色の鬼は、目が一つしかないが、古寺に出現した者よりも巨大だった。
 一方、黄色の鬼はそれにくらべれば小柄で、比較的人の形に近い外見をしている。しかし、大きな刀を手に抱えていた。

「よーし、いい子だ。あの者を、殺れ」
 青年が竜胆を指差し、犬にでも言いつけるように命令する。
 すると、鉛色の鬼が巨大な拳を竜胆めがけて振り上げた。
 うなり声を上げて拳が迫ってくる!
「……!」
 潰される!
 竜胆が目を閉じたその時、一人の少女が現れ、両手で鬼の拳を受け止めた。
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)だ。

 陽子は渾身の力で鬼の拳を受け止めると、気合いとともに突き飛ばした。
 その勢いで、鬼の体が後ろに傾ぐ。
 思わぬ妨害に驚いたのか、鬼はその一眼で陽子を見下ろした。しかし、すぐに怒りに憑かれたようで、うなりを上げ陽子につかみかかろうとした。両手で掴んで潰す気らしい。
 陽子は、とっさに後ろに飛びすさると、凶刃の鎖を振り上げた。鋭い刃が鬼の足に刺さり、その体を毒が犯し始める。体が大きい分、毒の周りは遅いが、焼け付くような痛みに鬼はまずます怒り狂い、陽子を踏みつぶそうとした。しかし、それより先に曇天の隠気を展開! 陽子の体を雲が包み、みるみるうちにその姿が見えなくなる。
 鬼の足が虚しく地を打ち、大きな地割れを作った。
 倒すべき相手を見失った鬼は、混乱して暴れはじめた。体に回りはじめた毒も鬼の理性を奪っているようだ。やみくもに地を打ち、あちこちに地割れを増やしていく。
 その度に、地が揺れ。あまりの恐ろしさに竜胆は震え上がった。
 そこへ、白くてフワフワとした可愛らしい幽霊が現れた。陽子がレイスの朧さんと呼んでいるアンデッド:レイスだ。
 奇妙な事に、朧さんに近づかれた途端、鬼が震えはじめた。一見可愛い朧さんだが、レイスとしての能力を駆使した時は、近寄ると身の毛もよだつような気分になるのである。巨大な鬼も例外ではなかった。
「チャンス!」
 陽子は小さくつぶやくと、怯える鬼の首に向かって凶刃の鎖を飛ばした。鎖は鬼の首に巻き付き、ぎゅうぎゅうと締め付けはじめる。鬼は、雄叫びを上げて鎖を握ると、それを引きちぎろうとした。
「やはり、一筋縄ではいかないようですね……」
 陽子は小さくつぶやくと封印解凍を唱えた。普段は抑制している、陽子の力が封印を破ってほとばしる。
 ギリギリと鎖が鬼の首を締め付け、鬼は口から泡を吹きはじめた。凶刃の鎖に塗られた毒も効いて来たようだ。
 やがて、鬼は白目を剥いて、そのままその場に昏倒してしまった。


 鉛色の鬼が倒されてしまうと、黄色の鬼……斬鬼が竜胆を狙って飛び出してくる。
 そこへ、緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が飛び出して来て、チャージブレイクを展開。行動予測で鬼の出方を窺う。
「見えた!」
 透乃はそう叫ぶと、一気に間合いを詰めて疾風突きを展開。顎や鳩尾等の急所を狙って拳を入れる。
「ウギャア……!」
 鬼は、悲鳴を上げ刀を落とした。すかさず透乃はその刀を蹴り上げる。刀は放物線を描き、透乃の後ろに落ちた。
 素手になった鬼は、両腕を広げて透乃に襲いかかって来た。透乃はその両手を自らの手で受け止め、力比べのような体勢になる。
 しかし、小柄とはいえ、並の人間よりは遥かに大きな鬼だ。透乃はどんどん圧されて行く。
「おまえ、結構、強いね」
 透乃はつぶやくと、烈火の戦気を展開。透乃の闘志が炎のような闘気となって身体に籠もり、頭にどんどん集まって行く。やがて透乃の頭の周りにピンク色の炎のようなものが揺らぎはじめ……次の瞬間、透乃は、素早く鬼の懐に入り、思い切り頭突きを食らわせた。その勢いで鬼が一瞬よろめく。その隙を見逃さず、透乃は鬼の刀を拾い上げ鬼の首めがけて一閃。鬼の首が胴体から離れて首無しの体が地面に倒れる。