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盗まれた機晶爆弾

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盗まれた機晶爆弾

リアクション

   プロローグ

 前夜――。
 最後の車が出て行くのを確認し、ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は、地下駐車場へ降りていった。この駐車場は従業員専用で、残っているのは警備員の車両だけだ。
 予め聞いていた通りに監視カメラの範囲を避け、待ち合わせの場所に辿り着く。
「妙なところで待ち合わせるじゃねぇの」
「この街で人目につかず、カメラにも全く残らない場所は少ないのだよ」
 更に相手の顔が見えない場所となれば、とゲドーは内心付け加えた。
 シルエットになって、相手の顔は分からない。背は高い。髪も短いかもしれない。見たところ男だが、声はやや高いし、スレンダーな女という可能性もある。
 要するにこちらを信用していないわけだ。
 ま、俺様もだけど、とゲドーは思った。
 二人のほぼ中央に、カバンが置かれていた。どこにでも売っている、ちょっとお洒落で手頃な値段の品だ。
 ゲドーはそのカバンを指差した。すると今まで彼の後ろを辿るようにくっついていたグールがのそのそと動き出し、カバンを拾い、またのそのそとゲドーの元へ戻った。
 ゲドーは中身を確認し、
「確かに」
と頷いた。「こいつは俺様の気持ちだ。受け取ってくれ」
 ゲドーの合図で、グールはまた、のそのそと歩き出した。今度は相手へと向かい。
「保険だよ、保険。あんたが捕まったら俺様も困るからな。こいつはなかなか使えるぜぇ? ああでも、全部終わったら返してもらうからな」
「……分かった。ありがたく借りておこう」
 カバンを手に駐車場を後にしたゲドーは、笑みがこぼれるのを押さえられなかった。
 ――さて、このオモチャでどう遊んでやろう?