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【なななにおまかせ☆】スパ施設を救う法

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【なななにおまかせ☆】スパ施設を救う法

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第二章

 夜になり、客足が途絶えスパ施設は静寂が支配する。
 施設の大半が活動を休めている中、未だにラウンジには明かりが点っていた。
 畳が敷かれたラウンジに置かれた、一卓のちゃぶ台を囲むようにしている者達がいた。ボニーとなななも居る。
 彼らは今回スパ再生の手伝いを名乗り出て、現在状況を確認しているのだが、
「……想像以上だな」
シァンティエ・エーデルシュタイン(しぁんてぃえ・えーでるしゅたいん)が呟く。
「うん。交通の便やら色々問題がある上に……財政はどう?」
「はい、【財政管理】をしてみましたが、何度頑張っても真っ赤っかの大赤字でした」
 セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)がにっこりと笑って言う。
「……真っ赤っか?」
「ええ、それはもう見事なまでに」
 なななにセシルがにっこりと笑う。
「私、黒い数字を暫く見てないんですよね、あはははは」
 ボニーが乾いた笑いを漏らす。
「……こ、怖いネ」
 フィオン・オルブライト(ふぃおん・おるぶらいと)がシァンティエにしがみ付く。
「仕方ない、ここまで来ると笑うしかないさ」
 シァンティエはフィオンの頭を撫でて宥めながら耳元で囁いた。
「けど仕方ないで解決はしないからなー……何かいい案は無いかね?」
「乗合馬車がこちらまで来てくれるのならばいいんですがね……」
 叶 白竜(よう・ぱいろん)が溜息混じりに呟く。
「それなら近隣のスパ施設と提携して、スパ巡りみたいなのはどうだい?」
 朝霧 垂(あさぎり・しづり)が提案する。
「近隣……ボニー、一番近い施設でどのくらいある?」
「えっと……徒歩で一日以内には着くと思いますよ?」
 なななの問いにボニーは少し考えてから口を開いた。
「……駄目か」
 垂が項垂れる。流石に遠すぎる。巡るのに近い施設がこの距離では難しい物があるだろう。
「他に交通手段は無いんですかね?」
「馬車しかないですね……申請はしてはいますが……」
 白竜の問いに、ボニーも沈みがちに言う。公共の乗り物であるが故、やはり需要が無ければ通せないのだろう。
「ふむ……教導団の車両とか使えませんかね? 一日に数回でも運用できればやはり違うと思いますが」
「ああ、それいいかもな。団員を護衛につければ訓練になるし」
 白竜の提案に垂が乗る。しかし、なななは渋い表情で口を開いた。
「……ちょっと、難しいと思う」
「何故そう思うのですか?」
「時間が足りないと思う。そういうので教導団が動くとなると、団長もそう簡単に許可は出さないと思うんだ。返済期限はもう一ヶ月切っているし、軌道に乗り出しても間に合わなかったら意味がなくなっちゃう」
「……ふむ、確かに」
 白竜が頷く。
「とりあえず交通の便に関しては置いておきましょう」
「そうだな。となると他には……老朽化に関してかな」
「老朽化に関しては、今日一日見て回りましたが……応急処置が必要な箇所も少なくありませんね。けど全部やるには予算もかかるのが……」
「ああ、その件に関して提案が」
 クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)が手を上げる。
「提案?」
「ああ、老朽化している中でも、比較的危険が少ない場所もあるのだろう?」
「ええ、ありますわ」
 セシルが頷く。
「そこをお化け屋敷にしようと思うのだよ」
「お化け屋敷、ですか?」
 ボニーが怪訝な顔をする。
「ああ、時期的にもいいだろう?」
「あの……場所が場所なんで悪い噂が流れると……」
「その点もご心配無く。ハンスを使おう」
「はい、お任せください」
 ハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)が立ち上がる。
「どうするの?」
「ええ、肝試しに参加したカップルの方には、天使から祝福を与えられる、という風にしてみようかと思います。そうすれば楽しんでいただけるかと」
「それならば……」
 ハンスの言葉に、ボニーが頷いた。
「そういうイベントなら、俺も一つ提案が」
 日比谷 皐月(ひびや・さつき)が手を上げる。
「どんなの?」
「ああ、水鉄砲があってプールもあるならサバゲーができると思うんだ」
「サバゲー?」
「要は撃ち合いだな。参加者募ってやれば、観客も呼べるかもしれないぞ? で、ボニーに一つ頼みたいんだが」
「なんでしょう?」
「優勝者への賞品を何か用意してもらいたいんだ。このスパ関連の物だと宣伝にもなるし。フリーパスなんかあればいいんだけどな」
「……そうですねぇ……回数券ならなんとか用意できますが……」
「あーあたしも欲しいなー」
「……頑張ります」
 シァンティエの言葉に、ボニーが重々しく頷く。
「……後は、そうですね……今話しておきましょうか」
 白竜が少し考える仕草を見せつつ言った。
「何を?」
「ええ、実は借金取りと接触してきました」
「……どうだった?」
「まぁ、よくも悪くも普通、というイメージですかね。こちらに何かする様子は無さそうです。下手に手を出しては回収を望めないのは理解しているようです。まあ、牽制はしておきましたので」
 白竜の言葉に、ボニーが何処かほっとしたような表情をした。
「今の所できることって言ったら、これくらいかな。他にも案がある、って人が明日にも来るみたいだし。やれる事は色々やってみようよ」
 なななの言葉に、皆が頷いた。