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   準決勝

○第一試合 真アグニ−HMS・レゾリューション

 南 鮪は聊か不満だった。
 何で俺の相手はどいつもこいつも、気の強い女か変態男しかいないんだ? しかも今度は女王様と来た。さすがの俺も、この女には手を出せねえ。多分、殺される――と。
 だが、イコプラバトルは別が。ギッタギタのグチャグチャのドロドロにして、「助けてください、鮪様〜」と言わせてやるぜ!!

「HMS・レゾリューションの整備はバッチリよ。ライザ、頑張って。これに勝てば決勝よ」
「うむ」
 グロリアーナは愛機を手に、鮪の前に立った。
 鮪の何か企んでいるような顔に警戒しつつ、グロリアーナはHMS・レゾリューションをフィールドへ投げた。
「ファイッ!」
 真アグニがフレイムスロワーを構えたのを見て、グロリアーナは大型ビームキャノンを撃った。
『中央で炸裂! 真アグニ、インシネレイターを連発! 一発、二発……レゾリューションは避ける!』
 避けながら真アグニへ近づいていたHMS・レゾリューションは、機龍の爪で真アグニの背を大きく裂いた。
「やった! ライザ!!」
 ローザマリア・クライツァールは飛び上がった。
「くそっ!」
 真アグニがぐるりと機体を回転させる。
「ライザ! 逃げて!!」
 HMS・レゾリューションは、後ろ向きのままぐんぐん下がる。
「行かせるかよ!!」
『真アグニ、四度、インシネレイター!』
 炎が帯のように伸び、HMS・レゾリューションをぐんぐん追う。
『当たったか!?』
 尚も攻撃を続けようとする真アグニを持ち上げ、大鋸が双方のダメージを確認する。
 HMS・レゾリューションの機体の表面塗装が溶けていた。一方真アグニの背はざっくり裂かれ、火花が散っている。
 どう見ても、真アグニのダメージが大きい。
「勝者、HMS・レゾリューション!!」
「やったあ! ライザ!」
 ローザマリアがグロリアーナに抱きつこうとするが、彼女はそれを遮った。
「まだ優勝ではない。喜ぶのは早い」
「くっそおおぉぉぉぉ!!」
 地面に拳を叩きつけて悔しがる鮪に、すっと手が差し伸べられた。
「昨日の敵は今日の友。さあ、その心を覆う衣を脱ぎ捨て、俺様と共に己が肉体をさらそう!!」
「待て! それならばオレと一緒に女装をしよう! 非常識は楽しいぜ!」
 顔を上げた鮪の目に、変熊 仮面の股間と親指を立てる天空寺 鬼羅のスカートが映った。
「誰がやるかああああ!!!」
「「ぐはあっ!」」
 鮪の見事な両腕アッパーが変熊仮面と鬼羅の顎を捉え、宙を舞う。地面に落ちた変熊仮面の股間に、鬼羅のスカートが被さった。

  ×真アグニ−HMS・レゾリューション○


○第二試合 シュヴァルツ・カイザー・ピングイーン−クェイル

「凄い凄いフェル!」
 十七夜 リオに抱きつかれ、フェルクレールト・フリューゲルは笑みを浮かべた。
「そう?」
「うん。だって次勝てば、決勝だよ! ここまで来るとは……改造した甲斐があった!」
 リオは胸に拳を当て、じん……と感動しているようだ。
 リオは実家が町工場で、幼い頃から機械弄りをしていた。宇宙工学に興味を持って最新技術を学ぶため天御柱学院に入学。今はイコンや機晶技術を転用できないか模索中だが、職人気質で機械・整備に関しては、梃でも譲らないほど頑固になるのは血筋だろうか。
 そんなリオにとってイコプラは子どもの遊びにしか思えなかったが、いざやってみるとこれが楽しい。遊びだけに何でも出来て奥が深い。結果、あれやこれやギミックをつけたのがシュヴァルツ・カイザー・ピングイーンである。
 作ってみて実感したのが、自分はパイロットではなく職人だ、ということだった。実際、自分が操縦していたらここまで来ることはなかっただろう。
「フェル! こうなったら決勝まで行って、優勝だ!」
「分かった。任せて!」
 フェルクレールトもにこやかに返事をした。

 クェイルの体当たりを、シュヴァルツ・カイザー・ピングイーンは寸前で避けた。そのまま遠ざかり大型ビームキャノンで照準をつける。
 しかしその間に間合いを詰めたクェイルは、アサルトライフルで攻撃。続けて、アサルトライフルとバズーカを同時に弾切れを起こすまで撃ち続けるという技に出た。
 シュヴァルツ・カイザー・ピングイーンの装甲に霰のように弾が降り注ぎ、凹み、剥がれた。
「シュヴァルツ・カイザー・ピングイーン!」
 リオの悲痛な声が、フェルクレールトの耳に届いた。
「心配しないで」
 フェルクレールトは呟く。
 弾が切れ、クェイルはシュヴァルツ・カイザー・ピングイーンから離れた。
 シュヴァルツ・カイザー・ピングイーンは、大型ビームキャノンを撃った。クェイルの足元に着弾する。
 攻撃しようとして、セレンフィリティ・シャーレットはぺちりと額を叩いた。
「しまった。弾がない」
「全弾使ったの!?」
 セレアナ・ミアキスは唖然とする。「何やってるのよ?」
「仕方ないわ。最後はやっぱり力技よ!」
 シュヴァルツ・カイザー・ピングイーンが再び大型ビームキャノンを発射した。ビームは、クェイルに届く前に、爆発した。クェイルのアサルトライフルに当たって。
「クェイル、二ポイント! 勝利!」
 大鋸が高らかに宣言する。
 セレンとセレアナはハイタッチで喜び合った。
「よし、これで決勝だ!」
 フェルクレールトは泣きそうな顔になった。
「ゴメン、リオ……負けちゃった……」
「何の、フェル。よくやったよ。よく戦った。予想以上だった」
「でも、でも……」
「シュヴァルツ・カイザー・ピングイーンは、また直せば大丈夫。またやろう。僕が作るから、フェルが操縦して」
 よしよしと頭を撫でられ、フェルクレールトはぎゅっとリオに抱きついた。
 リオは優しい。
 フェルクレールトは彼女が大好きだ、と改めて実感した。

  ×シュヴァルツ・カイザー・ピングイーン−クェイル○


○第三試合 ストライクイーグリット−???

「あれ? おい、数が合わねえぞ」
 大鋸は指折り数えて首を傾げた。
「次の試合、選手が一人しかいねえ」
『ああ。だから、翔の不戦勝だ』
 あっさりと放送席のアリサが告げる。
「何ぃ!?」
『人数が足りないんだ。引き分けもあったからな』
「だったら俺様が出るぜ!!」
『却下』
「何でだ!?」
『ここでそなたが出れば、不公平になる。翔はこの大会の常連で皆勤賞だ。だから、シードにする』
「おいそれ、エコヒイキじゃねえのか!?」
『うるさい。決勝やるぞ』
 というわけで、アリサの独断と偏見と贔屓により、辻永 翔、不戦勝で決勝進出。
「本当にいいのか?」
 翔本人も首を傾げた。そもそもこんなことをしなくても、勝ち抜く自信がある。
『いいんだ!』
 そなたが出なければまた混乱する――そう説得されて、翔も渋々承知した。

  ストライクイーグリット 不戦勝