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【空京万博】海の家ライフ

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【空京万博】海の家ライフ
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「はい! ラーメン上がったわよ!!」
「こっちも上がりだぜ!!」
「ええい、調味料をよこせ!!」
「それ、ノーンのだよ?」
「……休む暇すらないとはな」
 海の家は、相乗効果も相まってか。過去最大の賑わいを見せていた。
 既にシフトを外れた店員、厨房を一旦爆発させた客すらも呼び戻された店内では、思い思いのラーメンを作る明子、菊、輪廻、ノーン、レイスが次々と客へ出すラーメンを仕上げていった。
「忙しいデース!!」
「はい、お待ちどうさまです!! そっちは塩ラーメンですね? 少々お待ち下さぁぁい!!」
 審査員から店員に戻ったティファニーが叫び、 駆けまわる沙幸の胸が弾む。
 そんな店内の騒然とした様子を蚊帳の外状態で見ているのはセルシウスである。
「ふ……既にこの店は私の手を離れていたようだな……」
「ラーメンを一杯貰おうかな?」
 背後で声が聞こえる。
「生憎、私は店員では……」
 振り返るセルシウスの前に立つのはエポドスであった。
「やぁ。蛮族共の文化をどれくらい無様に吸収したのかなって思ってね」
「……誰だ?」
 セルシウスの言葉に、後退りする程のショックを受けるエポドス。
「ね……寝ぼけるには時間が遅いんじゃないかな?」
 上ずった声のエポドスに、セルシウスが深く溜息をつく。
「貴公も私を知る者か……だが、私は自分自信が何者なのか思い出せないのだ」
「こ……この僕を忘れるなんて……」
 そこに、両手に器を持ったなななが走ってくる。
「はいはい、そこの金と銀!! 立ち食いでゴメンだけど、なななだから許してね!!」
と、二人に強引に湯気の立つラーメンを渡して立ち去る。
「……頼んでなどいない」と言おうとしたセルシウスであるが、お腹がグゥーと悲鳴をあげる。
 厨房に戻ったなななは「え? あれは違う? 元祖塩ラーメンは駄目?」と何やら、ルカルカにお小言を言われている。
「頂くとするか……」
と、立ったままズルズルと麺をすすり……。
―――ピッキィィィィーーーン!!!
 脳みそに電撃が走るセルシウス。
「こ……この味は、この、不味さは……!!!」
 これまでの海水浴場での記憶が津波となり押し寄せる。
「そ! そうだ!! 私はセルシウス!! 栄光あるエリュシオン帝国の設計士!! セルシウスだ!!!」
 記憶が戻ったセルシウスが晴れ晴れとした顔を浮かべ……直ぐ様、曇っていく。
 恐る恐る隣を見ると、
「ズルズルズル……」
 エポドスが無表情でラーメンをすすり上げている。
「(マズイッ!!! エポドスがいるのを忘れていた!!!)」
「ズズズズッ……プハァ!」
 スープまで飲み干したエポドスが、セルシウスに不適な笑みを見せる。
「(マズい……戦場に降り注ぐ弓矢とタメを張ると言われるヤツの口撃が、くる!!)」
「セルシウス……」
「……何だ、エポドス?」
「なかなかの味だ。少しは見直したよ?」
「そうか……って、何ィィィィーーッ!?」
 驚愕するセルシウスを気にせず、エポドスが近くにいた店員の沙幸に「ごちそうさま」と器を返却する。
「(お、思い出した……この男……知識こそ凄まじいものの、極度の味オンチだった!!)」
「……と、もう一杯食べたいところだけど、用事を忘れるところだったよ」
「用事?」
「ああ。蛮族共の崇拝する神というのが、どんなのか。それを見るために、ここでラーメンを食べたんだ」
 エポドスがサッと一枚の紙切れをセルシウスに見せる。
「撮影会参加券……だと?」