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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

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【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!
【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード! 【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!

リアクション

 朔夜達の記念撮影の折、絶賛パレード中であったのは、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)、ドラキュラの仮装をしたルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)、魔女の仮装をしたセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)、狼男ならぬ狼女の仮装をしたヨン・ナイフィード(よん・ないふぃーど)で達あった。ミイラ男やケンタウロス、綿毛兎やパラミタペンギン等の従者やペットを引き連れての豪華なパレードの殿には、魔女っ子帽子とマントと至ってシンプルな仮装をした{ICN0003224ジャイアントピヨ}が空も飛ばずに一緒に歩いていく。
「ドリックオアドリ−ドォォォォ! お菓子くれない悪い子はいねぇがー! 悪い子はいねぇがー!」
 鬼の面、ケラミノ、ハバキを身に付けたアキラが出刃包丁を片手に、沿道で見物していた子供に迫る。
「ビエェェェェーーーンッ!!」
 アキラの仮装に恐怖した子供が泣き出す。
「やめんか!」

―――スパコーンッ!

 ルシェイメアが、なんか激しくズレた事をやっているような気がするアキラを追っかけて後ろからそのドタマをハリセンでどつく。
「ルシェメイア? 何するんだ?」
「子供を泣かすなと言っておる。第一、貴様……なんじゃその格好は……」
「なまはげ」
 何故かか自信満々の顔でどうだ!と言わんばかりに言いきるアキラに、ルシェメイアが溜息をつく。
「当日まで秘密と言って作っておったのが、まさかこんな仮装じゃとはな」
「ああ! とっておきは隠しておくものだぜ!」
 仮面の下で笑うアキラ。当然、鬼の面は笑っていない。
 実は、「当日まで秘密」と隠れてコソコソ作っていたので、パートナーたちもアキラがなんのコスプレをするのか知らなかった。
「アホか貴様は。ハロウィンパレードじゃぞ?なまはげで参加する奴がおるか」
「なんでさ? 別にハロウィンだからってこのコスプレじゃなきゃいけねーなんて決まりがあるわけじゃーねーだろ?」
「いやそれは確かにそうじゃが、なにもなまはげでなくともいいじゃろうに……。そもそも、なぜなまはげなのじゃ?」
「なんとなく」
 アキラがガンとして引かないのでルシェイメアももう好きにすればよいと諦めていた。
 みんなでコスプレしてパレード集合場所へ集まった時も、ハロウィンの仮装の中、一人なまはげなアキラはかなり浮いていた。
 アキラが鬼の面を付ける前までは、「子泣きジジイ?」「いや、一揆だろ?」と言った声も他の参加者から聞かれたものである。
「(他にもなんか奇抜な仮装をしてる人がいればいいけど)」と考えていた明であるが、見渡す限りでは彼に勝るコスプレはいなかった。
 それに本人も薄々とは気付いていたのだが、「いまさら後には引けねぇ」とあえて気にせず気付かないフリを決めこんだのである。でも、内心はちょー不安でビクビクなのは、パートナーの一部にはバレていた。
 アキラはパレードの間ずっとこんな感じなので、ルシェイメアは彼の世話焼きに奔走され、とてもお菓子をもらっている暇は無さそうだ。
 ルシェメイアの代わりに、セレスティアとヨンが見物客たちからお菓子を貰う役割を買って出ていた。
「トリックオアトリート!お菓子をくれないとイタズラしちゃいますよ?」
 そう言いつつもヨンはルシェメイアが監視するアキラが気になる様子だが、同じくお菓子を貰っているセレスティアが「大丈夫ですよ」とヨンににっこり微笑みかける。
 セレスティアの「大丈夫」とは、自分の心情を察し色んな意味での「大丈夫」だと言う事を、ヨンもなんとなく察する。その言葉に一応の安心を得たヨンは虹を架ける箒で周辺を飛び回り、虹色の尾をふりまき煌びやかに周りを彩り始める。
 ピヨは鳴いたり歌ったり、クルクルと回ったり踊ったりしながら行進し、時に誰かに、何かに当たらないように注意してカクテル光線を模したビームアイを発射し演出していた。
 パレード中は周囲も他の山車や沿道のライト等で明るく、鳥目のため暗いと駄目なピヨでも、イザという時のため、事前に考えていたアキラの誘導は必要は無さそうであった。
「悪い子はいねぇがー! 悪い子はいねぇがー!」
「えぇい! やめんかと言うておる!!」
 なまはげと、これに突っ込ドラキュラが通り過ぎていく。余談であるが、アキラの持つ出刃包丁は最初は本物であったが、警備員に安全上の理由からレプリカに取り替えられていた。
「ほらほら、あれは怠け者を懲らしめて、同時に災いをはらい祝福を与えるありがたいものなんだよ?」
 なまはげを見て泣き出す子供を親たちが説得するも、一度植えこまれた恐怖というのは中々とれるものではない。
 そんな子供達も次に現れた山車を見て泣くのを止める。
「猫さんだーー!」
「ネコ、ネコ!!」
「(イイ時に来てくれた……)」
 泣く子供をあやすのに疲弊した親たちに感謝されつつ登場したのは、ハロウィン用に頭をパンプキンヘッドにしたネコトラである。
「はーい! るるメイドのお菓子だよー! 受け取ってねー!!」
 大量のお菓子をネコトラに背負わせた袋に詰めて、パレードで練り歩きながらばら撒くのは、その仮装から名実共にお菓子の魔女を名乗る立川 るる(たちかわ・るる)であった。
「うわー! ありがとう! 魔女のお姉ちゃん!!」
 お菓子の袋を貰った子供に、ネコトラの上でるるが笑顔で手を振る。
「本当は魔女じゃなくて、アヒルの水兵さんにしようかと思ったんだけどねー」
 今回のパレードのために自身で改造したネコトラを運転するラピス・ラズリ(らぴす・らずり)がるるに言葉を返す。ラピスの仮装はるるに合わせてお菓子の使い魔である。
「それは誰かとネタ被りしそうだったからね」
「まー、るるは間に合ってるし、モテ系アヒル口は他の人に譲るよ……と、第一弾のお菓子がそろそろ底を尽きそうね」
 るるがネコトラからばら撒いていたお菓子の在庫を確認し、第二弾を用意し始める。
「今までのは、ほんの小手調べ。これからが本番よ! ……でも、るるの料理の大ファンなあの人は来てないみたいね。ちょっと残念」
「あの人?」
「うん。エリュシオンの……と、セレンフィリティさん。お待たせしました。るるがお菓子を変える間、手はず通りお願いしますね?」
「待ちくたびれたわよ、るる」
 とんがり帽子に魔法の杖と、るると同じく魔女の格好をしてお菓子をばら撒くのを手伝っていたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が、るるの言葉に妖艶な笑みを浮かべて頷く。セレンフィリティの首から下は黒いマントにすっぽり覆われており、それは同乗していたパートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も同じであった。
 妖艶に笑うセレンフィリティに、彼女と対照的に困惑したセレアナが恐る恐る尋ねる。
「セレン……やっぱりするの?」
「大荒野のど真ン中でハロウィンパレード……パラ実らしく豪気というかなんというか、興味がわくじゃない? だからダンサーとして参加したのよ」
「恥ずかしいよ……」
 頭を抱えるセレアナだが、セレンフィリティに促され、ネコトラの中央に移動する。
「(こうやって仮装してお菓子を撒くだけでも恥ずかしいのに、歌って踊れって……)」
 セレアナがそう思うも、付き合いの良い彼女は、俄然燃えているセレンフィリティを見て、「結局こういうことになるのか……」と諦める。
「ラピス! 用意できたわよ!!」
 セレンフィリティの声にラピスが運転席にあるスイッチを入れると、ネコトラの四方に付けられたライトが一斉に点灯し、その光がセレンフィリティとセレアナのみに注がれる。
 やがて響きだしたBGMに、セレンフィリティが静かにセレアナに頷き、二人のマントが同時にオープンされる。
「「「うおおおおぉぉぉーーーーッ!?」」」
 先ほどまで、子供とパレードを楽しんでいた親(主に父親)や沿道の男性陣から歓声があがる。
 二人がマントの下に着用していた衣装は、『セクシー魔女路線』を地で行く、黒いレースの入った、下手すればランジェリーにしか見えない際どいハイレグビキニであった。
 ネコトラの上で、完璧なプロポーションの肢体がライトに照らされ浮かび上がる。二人の白い肌がとてつもなく艶かしい。
「くっ……なるほど、こうきたか!!」
「……パパ?」
 先ほどまで自分とパレードを静かに見つめていた良き父親がガッツポーズと共に一歩前へ踏み出すのを、子供が不思議そうな顔で見つめる。
「確かに、朝やっている戦隊モノの敵の女幹部は異常な露出だ。それは世のお父さん達もファンに取り込もうとする狙いが見え見え……だが、それはイケメンを主人公にして若い奥様を取り込もうとするのと何が変わろうか? いや、同じ!! ならば今、敢えてその策略に飛び込もうではないか!!」
「……パパ、怖い」
 男性陣の熱い視線を集め、BGMのかかるネコトラの上でセレンフィリティとセレアナは妖艶に舞い踊る。セレアナも最初は動きが鈍かったが、半ば照れ隠しとヤケクソの間で、次第にセレンフィリティ以上に激しく乱舞し始める。
「「「うおおおおぉぉぉーーーーッ!!!」」」
「最高に素晴らしい!! ママを連れてこなくて良かった!!」
「パパ……」
 恐らく家では良き父親なのだろう男の変貌に、子供がジト目で彼を見つめる。
 ノッてきたセレンフィリティとセレアナは、即興でハロウィンにちなんだ歌をデュエットし始める。本人達からしてみれば即興なのだが、意外にすごくいい声で歌う二人に、観客が熱狂の渦の巻き込まれていく。

『悪戯なカボチャ』
作詞:GO・M  歌:セレンフィリティ&セレアナ
ねぇ、私にくれないの? 
今日はハロウィン。悪戯OKな日
いつもカボチャみたいに鈍い貴方
お菓子をくれないと悪戯しちゃうわ
悪戯待ってる? それとも私にくれるの?
貴方にあげられるモノなんて あまりないもの
だから トリック・オア・トリート!
(トリック・オア・トリート!)
私をあげる 沢山あげる
けれど トリック・オア・トリート!
(トリック・オア・トリート!)
私に頂戴 可愛い悪戯


「トリック・オア・トリート?」
「トリック・オア・トリート!」
 歌詞の一部を客との掛け合いにして盛り上げていくセレンフィリティとセレアナがネコトラから飛び降りていく。
 それと交代するように、第二弾のお菓子を補充したるるは、再びネコトラの上からそれをばら撒き始めていた。
「るるの第二弾は、ハロウィンならではのマジカル☆ミラクル☆お星様よ!」
 そう言ってお星様モチーフのお菓子の入った袋をばら撒き出するる。
 中には大荒野から伝播し、今やエリュシオンでも大人気らしい『ヒトデのキャラメリゼ』、ちょっとつまむのに最適な『オクラのキャンディリボン』、おまけで『スターフルーツの輪切り』も少し混ぜてある。
「ここで食べるより、家でじっくり味わってねーー!」
 るるが投げるお菓子の袋をキャッチした観客が、彼女の言葉に従う中、
「くーわーせーろーー!!」
 ダッシュでその一つをもぎ取った影。
「クマラ……今、お前、他の人の頭の上を踏み台にしたろ?」
 見ていたエースが呟く。
「エース! お菓子は人の命より重いんだよ!!」
「……」
 他の観客と違い、クマラは素早く袋からお菓子を取り出してバクつく。
「うん。星の形をした……キャラメリゼだね? でも素材は何かなぁ……モグモグ………!?」
 みるみる顔色が変わっていくクマラ。
 しかし、エースは花飾り(紙で作った向日葵の花の様なメダル)を近くに来たセレンフィリティとセレアナにプレゼントしていた。尚、素敵なダンサーと認めたためか、それとは別に魔界の花(青紫の薔薇)も1輪あげていた。
「お嬢さん、花をどうぞ?」
「ありがとう?」
 セレンフィリティはエースに妖艶に笑って、その貰った花を胸の谷間に挿す。
「す……凄い。そんな受け取り方をされたのは初めてですよ」
 驚くエースの隣で、クマラが悶絶している。
「す……凄いにゃ……噛めば噛むほど、甘いキャラメルの味を押しのけて潮と磯の香りが……」
 喉を押さえ苦しむクマラにエースは気づかない。
 その頃、ネコトラを運転するラピス・ラズリも、ノリノリなBGMに合わせて体でリズムを刻んでいた。
「盛り上がってるなぁ……よぉーし! 僕もミラクル運転テクニックで盛り上げるよ!!」」
 不安を感じたのかるるが運転席を覗き込む。
「ラピス? 何をするって?」
「僕が改造したこのネコトラ。仮装だけだと思ってた?」
 意味ありげに笑うラピス。
「実は、更にウィリー走行で二足歩行を実現したのさ! 二足歩行だよ! すごいでしょ!?」
「ちょっと、もう運転はるるがするから! あなたはお菓子の方を……」
「いやいや、ここは機工士や技術官僚の経験もある僕が!!」
 ラピスはそう言って、運転席にあったレバーを引く。
 ガタガタと揺れたネコトラが立ち上がっていく。
「うわぁぁぁーー揺れるー! 倒れるー! 危ないからハンドル貸して!」
「違うよ、これがネコトラの真の性能だもん!」
 ウィリー走行で二足歩行モードに変化したネコトラが、千鳥足の様にパレードを歩き始める。
 既にネコトラから飛び降りてお客さんからお菓子をもらったり、くれない人には、頬を軽く触れたりとちょっとお茶目に悪戯をしていたセレンフィリティが、そのネコトラを避ける。
「(危なッ……ん?)」
 セレンフィリティの視界に、華麗にるるが投げたお菓子を食べたクマラがその味にフラついているのが見える。エースはクマラの心配そっちのけでセレアナに花飾りをプレゼントしている。
 フラつくクマラの手には、花飾りらしきものが握られている。
「(オイラも踊りの上手な人にはエースと同様花飾りあげようと思って作ったにゃ……キャンディーでネックレス状の紐つくって真ん中に紙の花。この飴ちゃんがダンサーへのごほうびにゃ……)」
 クマラも折角作った花飾りをあげに行こうとしていたのだ。
 フラフラとセレンフィリティの方へ向かうクマラだが、るるのお菓子の影響で前後がふらついている。
 そこに、大きく踏み出したネコトラの前足が降りてくる。
「危ない!!」
 客の誰かが叫ぶ。
 ハッとしたエースが「クマラ!!」と叫ぶ。

―――ズズーーンッ!!

 目を閉じていたクマラ。
「貴公、危ないところであったな?」
「あれ……? おじさん?」
「お兄さんだ」
 クマラはネコトラのに下敷きなりかけたところを、トーガを着た男に救われていた。
「あ、ありがとうにゃ……」
 男はクマラが手にしたヒトデのお菓子と、ネコトラの中でラピスに怒っているるるを見て、
「ヒトデは恐ろしいものだ。貴公も気をつけるがいい」
 それだけ言って雑踏の中に姿をくらませていく。
 るるはネコトラの運転席で二足歩行モードをラピスに解除させていた。
「今のはネコトラダンスなのに……」
「言い訳でしょ? それ……ん? あの金髪のトーガの人は?」
 るるがチラリと見たのは幻か、他人の空似かわからない。ただ、男はるるに見つかる前に素早く姿を消してしまっていた。

 ネコトラの騒動等我関せずで、すっかり気分も解放的になってきたのか、セレンフィリティと悪ノリし、観客を誘惑してからかっていたセレアナが、人目憚らずいきなりセレンフィリティと妖艶で激しいキスを交わしたりする。
「うおぉぉ! パパも何だか燃えてきたぞーー!! トリィッッッーク・オア・トリィィートォォォ!!」
 子供の目を抑えながら父親が大熱狂している。
「パパ……」
 目を塞がれた子供は、やけに大人びた態度で自分の父親の狂態を観察していた。
 セレンフィリティはそんな父子の元へもやって来る。
「うおおぉぉぉ!! 女神キタコレ!!」
 歌いながら熱狂する父親をチラリと見たセレンフィリティは。その手前で呆然とする小学1年生くらいの子供にわざとしなだれかかり、潤んだ瞳で誘惑してみる。
「ウフフ……坊や、あたしと遊ぶ?」
「……私、女の子だよ」
「あら、ごめんなさい? でも……どっちでもいいのよ、あたし」
 セレンフィリティがボーイッシュな少女の髪を撫で、
「貴方、綺麗になるわよ。そうしたら五年後にはこのパレードに出られるわ?」
「うん……いつか、パパを取り戻すわ」
 そうしてセレンフィリティは、気分屋ならではのテキトーさ加減で、最後まで大いにパレードを楽しんだ。
 一方のセレアナはと言うと……。後日、その模様がデカデカと写真で載った雑誌をコンビニで見て赤面し、「若気の至り……」と後悔するのであった。