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THE RPG ~導かれちまった者たち~

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THE RPG ~導かれちまった者たち~

リアクション

「閣下、このような場所までわざわざご足労いただきありがとうございました」
 闘技場の観客席で、工作を働く忍者紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、この街の支配者武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)扮する大貴族にかしこまります。
「閣下にぜひ見ていただきたいと思いまして」
「なに、構わぬ。良い余興だ。俺の街で面白いことをしている輩がいると聞いてはいたが、まさか魔王軍の幹部モンスターまで寄せ集めていたとはな。このカジノ……これは魔王軍と戦う、俺への挑戦か?」
 幸祐は、深い複雑な笑みを浮かべます。
「まあいい、俺は寛大だ。民草の娯楽のためにならとこれまでは敢えて目をつむってこのカジノを放置いたが。……しかし、これはこれで面白い。次の掛け金はいくらだったっけ?」
「1億VGが倍々になって、次は64億VGです」
「ふむ。1億VGなど俺にとっては小遣い程度だが、遊びとしてはこんなものだな」
「配当から見るに、次の戦いもモンスター側が勝つでしょう。倍率は2倍ですから」
 プログラムを見ながら唯斗は幸祐に助言します。
「なら、次の配当は64億の倍の128億VGか。濡れ手に粟でやめられんな、ふふふ……」
 そこへ、慌てたドン・小次郎がやってきます。
「こ、これはこれは閣下。ご機嫌麗しゅう」
「うむ、お前がこのカジノの責任者か。大義である。とことんまで遊ばせてもらうぞ。もちろん、まだ続けるんだろうな?」
「い、いえ、それが……」
「俺は正当な客で、ルールに則って賭けを楽しんでいる。何か問題でも?」
「……こ、このようなリスキーな遊びは閣下にとって毒でございます。なにとぞご自重を」
「俺は構わんぞ。もしもの時でも、最初の賭け金のたった1億VGぽっちを失うだけだ。娯楽の時間を買ったと思えば悪くない」
「と、とはいうものの、額が額でございます。次もし、勇者側が勝つようなことがあるなら……」
「おや、次は勇者側が勝つのですか? このカジノにイカサマはないと聞いていますが」
 同行していたローデリヒ・エーヴェルブルグ(ろーでりひ・えーう゛ぇるぶるぐ)が目を丸くします。
「ですが、そういうことなら、私は勇者側に賭けてみましょう。遊び金の1億VG」
 
 次のオッズ
 スーパーデーモンキング  2倍
 勇者           60倍

「おいおい、ローデリヒ。それはいくらなんでも無謀すぎだろ。お金を粗末にするのもたいがいにしろ」
「すいません。ギャンブルは初めてなものなので……」
「やれやれ、まあいい……。さあ続けようか、オーナー。モンスターが勝てば俺の配当128億VG、勇者が勝てばローデリヒの配当60億VG。もちろん用意はできているんだろ?」
「……」
「それとも、賭けを拒んで俺と戦ってみるかい? 帝国軍VSカジノの傭兵というカードも、それなりに良い見世物になるだろう」
「……」
「……ここまでになさいませんか、閣下」
 黙ってしまった小次郎を見て、唯斗は仲裁に入ります。
「このカジノはともかく、この舞台を作りだした、そしてめげずに戦いに挑んだ勇者たちも見ていただきたいのです」
「……ふふ。おまえの狙いは最初からそれだろう? 小細工しやがって」
「恐れ入ります、閣下」
「ふん、秘宝のことは考えておこう。今の配当金の64億VGを清算するだけで、十分におつりがくる」
 幸祐は立ち上がります。
「今回のことはこれで見逃してやろう、オーナー。商売に励み、たっぷりと税金を納めろよ」
「……あ、ありがたきしあわせにございます」
 さしものドン・小次郎も国家権力の最頂点には敵いません。ぷるぷると震えながらも引き下がります。
 勇者たちは、解放されました。
「あとで挨拶に来るように伝えておけ。健闘をたたえる」
 来場していた魔王軍のモンスターを討伐し64億VGを手に入れて、幸祐たちは颯爽と立ち去って行きました。

「お疲れ様。見事な負けっぷりでしたね」
 セフィーが姿を現します。隣には、最初に敵として戦った盗賊ボス役のオルフィナも。
「あなたたち、グルだったんですか?」
「まあ、そういうことです。……はいはい、そんなに怒りなさんな。あなたたちの力になろうと思っていたのですが、このままでは確実に魔王に勝てないと思いましてね」
「だからって、こんなやり方は……」
「ふふ、怒るのは見込みのある証拠だ。力がほしいか、勇者たちよ。私と契約してクリスタルを手に入れよ」
 一転して厳しく力強い口調になるセフィーに飲まれるように、勇者たちは目を丸くします。
「私たちも仲間に加わろう。この力、存分に使うといいぞ」
 期待は裏切らない、というセフィーの雰囲気に、勇者たちは彼女たちも仲間に加えることにします。戦力は少しでも大きいほうがいい。

 セフィーが仲間に加わった。
 オルフィナが仲間に加わった。

 こうして、闘技場イベントは無事(?)終了したのです。