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リアクション
一方。
「俺はただの傭兵なのだが。友人に頼まれたからには仕方がない」
大金持ちが席を外している隙に、屋敷に忍び込んでいる者たちがいました。
自分たちだけで秘宝を手に入れようと目論む龍滅鬼 廉(りゅうめき・れん)たちです。
路地裏のアジトから仲間たちを引き連れ、地下水路を通って屋敷の厨房へ。
せっせと食事の準備をしている召使たちを眠らせ、屋敷の廊下へと出ます。
「……!」
不意に、背後に気配を感じて廉は振り返ります。
「動くな!」
まさか、先客がいて物陰から武器を突きつけられるとは思ってもみませんでした。不覚とはいえ、相手はかなりの使い手のようです。
「くっ……!」
「何者だ。この屋敷の警備兵か?」
声は尋ねてきます。
答えるフリをして、スキをつくり、廉は武器の範囲から逃れます。
「……」
相手と向かい合うと、向こうも忍び込んできた賊のようでした。
「秘宝は俺がいただく。引っ込んでいてもらおう」
低い声でそう告げてきたのは、秘宝奪取の盗賊役天城 瑠夏(あまぎ・るか)です。
「そうはいかん。こちらも仕事でな」
ニヤリと廉は笑います。
「あの秘宝は特別なのだ。お前が手に入れられる代物ではない」
「知った風なことを……。それで、どちらに行けばいい?」
「ふん、容易に教えるはずがなかろう」
「いや、……本当に、俺はどっちに行けばいいんだ……、というか、ここどこ?」
「……?」
「くっ、道に迷ったらしい。この屋敷のトラップは侮りがたい」
「お前……、何しに来たんだ?」
難しい顔でじっとりと冷や汗をかいている瑠夏に、廉は半眼になります。
「……」
「……」
放っておいて、廉は先に進みます。
瑠夏がついてきます。見事な手並みで。
「ついてくるな」
「はぐれると帰れなくなる」
「……本当に迷ったのか?」
「人生を迷ったわけじゃないから大丈夫だ」
「帰れ」
「帰らない、というか帰れないと言っているだろう!」
できることなら勇者たちと合流したかったところを、こんなのと合流してしまうとは……。
廉が様子を見ていると、天井裏から声がします。
「……怪しい者どもが屋敷の周辺をうろついておる」
屋根から忍び込もうとしていた勅使河原 晴江(てしがわら・はるえ)が伝えてきます。
「俺達以外の侵入者か?」
「それが、違うようじゃぞ。……あれは、酒場の主人?」
馴染みの酒場の主人のルーク・カーマイン(るーく・かーまいん)が、この街に怪しい影を招き入れているように見えます。
「どうする? ただごとではないようじゃが?」
「……俺達は、俺達の仕事をすませよう。ところで暖かい恰好はしてきたか?」
「ぬかりはない。目的の場所で合流じゃ」
そういうと、晴江は気配を消してしまいます。先回りしするつもりでしょうか?
「……」
廉は、秘宝の置いてある部屋へと向かいます。トラップなど彼女にとってはあってなきが如し。屋敷内ですのでモンスターも現れませんし、楽勝です。
瑠夏がその後に続きます。トラップは前の女性が解除してくれるしモンスターは現れないしで、楽勝です。
「……」
後は鍵を解錠して扉をあけるだけ。
……と。
「サーチ完了。敵影を確認しました」
いきなり横合いから攻撃が飛んできます。
「……!」
かわした廉がそちらに視線を向けると、秘宝の護衛が装備を整えて待ち構えていました。
「秘宝を狙う賊を強制排除します!」
警告を発しながら攻撃をしてくるのは、屋敷の番人ヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)です。
「番人か。おれに任せておけ!」
これまでのお礼とばかりに瑠夏が力強く請け負います。
引きこもっていたときにゲームをやりまくっていたからこの手の敵は倒せるはずです、多分……。
「……いったん退却しよう。敵の襲来のようじゃ」
考えられない助言とともに天井から出現したのは、晴江です。
「あの程度の敵に引き下がっていては何もできない」
番人を見やりながら言う廉に、晴江は物陰から首を横に振ります。
「街の外に魔王軍が集結している。誰かが引き寄せたようじゃ。この屋敷に向かってくる」
「……もしかして、さっき言っていた酒場の主人? まさか……」
廉が小さく驚いた時。
ものすごい地響きとともに、周囲が大きく揺れます。
「構わぬ。今のうちだ」
廉は、影から影へと疾ります。
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