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THE RPG ~導かれちまった者たち~

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THE RPG ~導かれちまった者たち~

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 ところで。
 ゲーム初頭から冒険をはじめ泉で出会った勇者たちよりも、先に魔王の城へと入り込んでいる者たちがいました。
 最初から魔王城探索のみが目的のレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は、魔王などそっちのけで、ダンジョン攻略を楽しんでいます。
 といいますか、すでに目的地にたどり着いています。
「たぶんあれだと思うのですけど……」
 廊下の陰、いかにも秘宝が隠されているような扉の前で彼女は思案します。
 秘宝の眠る部屋を守っているらしい中ボスがいるのです。そいつは、殺る気マンマンのオーラを漂わせてこっちを見ています。
 範囲内に入ってこない以上は攻撃してこないようですが、突撃してみましょうか……。
 と。
「どうしたんだ?」
 やってきたのは、最初の暴走の地点で巻き込まれてしまった辻永 翔(つじなが・しょう)と、その一行です。
 彼らも勇者といえば勇者ですが、半ばチートみたいなものです。なにしろ、ヴァーチャルシュミレーターをいじっていたのが翔なわけですから、内部プログラムもおおよそ見当がつきます。
 攻略本あり、必要アイテムをすべて持って魔王の城の入り口から冒険を始めたみたいなものです。
 これはヒドい。とは言え、翔はいたって真面目で丁寧に解いていきます。それもそろそろ終わりかけですが。
「テキパキ進めてさっさと帰るぞ」
「え〜、もう冒険終えちゃうの? もっと楽しもうよ」
 同行していた桐生 理知(きりゅう・りち)は、とても残念な様子。辻永 翔のことが大好きで彼と冒険できれば、他の勇者などどうでもいいのです。といいますか、彼女にとっては彼が勇者。
「ねえ、権くん」
「……あのな。デフォルトの名無しの権兵衛は、改名したんだ。今はちゃんと自分の名前ついてるだろ」
「わかってるわよ、クスクス」
「とにかくな、巻き込まれた他の契約者たちは早く出たがってるんだ。さっさと片付けるぞ」
「じゃ、仲間も来た事だしさっそく秘宝ゲットといってみましょ〜」
 レティシアは、秘宝を守る門番にさっそく突撃です。
「……来たか!」
 迎え撃つは、最後の秘宝の守護者、橘 恭司(たちばな・きょうじ)です。
「俺を他の敵と同じと思ってもらっては困る。魔王より強いんだぜ」
 ハッタリではありません、魔王がアレですから。
 接近戦や遠距離戦をたくみに交え、また必殺特技も使ってくる強敵です。
「翔くん傷つけたら許さないから!」
 理知も戦闘に加わります。
「あんまり豪快に暴れたら、嫌われちゃうぞ」
 理知のパートナー北月 智緒(きげつ・ちお)は、お姫様キャラの理知のイメージが壊れないか心配でフォローのために参戦します。
「黙ってたら、本物のお姫様にみえるのに。ねえ……」
 辻永 翔に振ってみます。彼は……。
「その程度でイメージは崩さないさ。どちらでも彼女は彼女だろ」
「ありがとう! 頑張るよっ!」
 ちょっと心配だった理知は元気を出して突撃します。
「……くっ」
 恭司はさすがに一人では攻撃を支えきれずに、ダメージを受け撃沈します。
「……負けた、か。まあいい、その強さなら、秘宝を手にするにふさわしい」
 そう台詞を残して、秘宝の番人だった恭司は消えていきます。残念です、頑張ったのに。相手が悪すぎました。
「鍵開けは私に任せて」
 理知が扉を開くと、その部屋には秘宝が鎮座していました。美しいオーブです。
「……」
 一同はちょっと沈黙します。
 部屋で独りの女の子が寝ているではないですか。
 魔王の手下Aの織田 帰蝶(おだ・きちょう)です。
『起こすなbyニート』のたて看板。
「zzzzzz」
「……どうするんだ、これ?」
 困惑気味の翔。
「放っておいていいと思うわ。起こすのかわいそうだし。立て看板もああいってるし」
 プニプニと帰蝶の頬をつついていた理知は言います。
 これでいいのでしょうか、魔王……。
 まあ、それはともかく。
「秘宝、手に入れましたよ〜」
 レティシアがオーブを掲げると、それは光を放ち始めます。
 離れていても秘宝同士が共鳴し、不思議な魔力を充溢させ謎の道を切り開くのです。
「魔王はどうしようか?」
「他の勇者に任せておけば?」
 それまで黙っていた、魔法使い役のイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)が、読み込んでいた資料から目を上げ、言います。
「状況はだいたい理解したわ、翔君。私もプログラム関係の知識はあるし、残り二つの秘宝も他の勇者たちが回収済み。あとはコアとなるクリスタルを呼び出すだけよね。クリスタルの破壊は……」
 イーリャは隣にいるパートナーにして勇者役も担えるジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)に目をやります。
「なにをハイになってんだか、この劣等種が。ウザいんで早く進めて欲しいんだけど」
 彼女もやる気十分のようです。
「翔君はどうするの?」
 イーリャの質問に、彼は頷いて。
「進もう。早いに越したことはない」
 その言葉に従って、彼らは最後の門を開きます。