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リアクション
……。
「え〜っと。まず名前入力にゃ。とても大切にゃ」
……。
くろねこ ***
くろねこ にやー
「……にゃ〜! 名前入力間違えたにゃ。『くろねこ にゃー』が『にやー』になってしまったにゃ! もうダメにゃ〜」
ここはツギノ村。
名前入力の時点でバタバタと騒いでいるのは、夕夜 御影(ゆうや・みかげ)でありました。
見るからに残念そうな先行きが思いやられる猫耳の娘さんであります。
ですが、物忘れのひどいのは勇者としての重要な特性であります。『忘れる』ってコマンドもあることですし。
名前入力で失敗したことなどすぐに忘れて、御影は意気揚々と宣言します。
「にゃーは最強の黒にゃんこなんだにゃ! 魔王を倒すために勇者として旅立つにゃ!」
「良くぞ言いました、勇者、くろねこ にやーさん。伝説の勇者である貴女がそう決意してくれる日を待っていましたよ」
御影をサポートするために現れたのは、ルクレーシャ・オルグレン(るくれーしゃ・おるぐれん)です。
彼女は、このゲームの重要な僧侶役として配置されてこのツギノ村にいたのです。
この村はサイショの村と同様、のどかで小さな村です。
御影やルクレーシャはここでのんびりと暮らしていたのですが、突然魔王を倒しに行きたくなったのです。
僧侶としてすでに旅の準備まで出来ているルクレーシャは大切な宝物を御影に託します。
「魔王は恐ろしい力を持っています。あなたに伝説の剣を渡しておきましょう」
なんといきなり伝説の剣のお出ましです。これは頼りになりそうです。
その名もエクスカリニャー。長年厨房で練成されたお玉です。
御影はエクスカリニャーを装備した。攻撃力が5下がった。
「にゃー! 最強にゃ! これで魔王もイチコロにゃ!」
御影も大喜びです。装備したお玉をぶんぶんと振り回します。きっと魔王にも美味しいスープを振舞ってあげられるでしょう。
……誰か、彼女らを助けてあげることが出来る仲間はいないのでしょうか。
いました。
「うちの子がお世話になります、僧侶さん」
御影の保護者のオルフェリア・アリス(おるふぇりあ・ありす)です。
彼女が目の中に入れても痛くないほどかわいがっている御影が、勇気を出して魔王を倒しに行くといっているのです。どうして放っておけましょうか。
「私も同行します。一緒に魔王を倒して世界に平和をもたらしましょう」
オルフェリアは、今日のこの日のために用意してあった名刀を持ってきます。
伝説の名刀マサムニャ。どんな硬い皮でもむける皮はぎです。これで魔王の頭皮でも削いでやることにしましょう。
オルフェリアはマサムニャを装備した。攻撃力が8下がった。
そんな装備で大丈夫か? ……大丈夫、問題ない。三人は頷きあい、力を合わせることを誓います。
「さあ、出発しましょう」
オルフェリアの号令の元、勇者たちは出発します。
とりあえずの目的は、第二の秘宝を手にいれること。
聞くところによると、街に住む大金持ちがその秘宝を所有しているらしいので訪ねてみましょう。
これまで育った村を名残惜しげに去った勇者たちは、草原を抜け森を越え進んでいきます。
いったいどこへ向かっているのでしょうか。それは、風にでも聞いてみて下さい。
しばらく歩くとモンスターに遭遇しました。
お待ちかねの戦闘です。
「にゃー! 勇者さまの力見せてやるにゃ!」
ボコボコボコ……。
モンスターを倒した。
チャララ〜ラ〜ララッチャラ〜。
万歳で勝利の喜びを表します。
この辺りのモンスターでは勇者たちの養分にしかならないようです。
気をよくした御影たちは、何度か戦闘を繰り返しながら、橋を渡り向こう側の陸地に到着します。
またモンスターが現れました。
「何度現れても同じにゃ」
バックアタック!
「……あれ?」
モンスターの先制攻撃らしいですが、余計な説明文は出ずにダメージの数値がキャラクターの上で弾んで表現されていくという方式です。
いつの間に、戦闘画面が横俯瞰のゲームになってしまったのでしょうか。
ボコボコボコ……。
気がついたら、御影たちのグラフィックは倒れておりました。
勇者たちは全滅した。
「……」
テュラリュラテュラリ〜と悲しげな音楽が流れます。
そういえば、まだ全員LVが低いのを忘れていました。ゲーム内では実際の強さとは違うのです。
「…………」
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