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年忘れ恋活祭

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年忘れ恋活祭
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リアクション


■宵初め〜煌く夜景と月明かり
 ――夜の帳が落ちきろうとしている展望台。ひと仕事を終え、休憩していた太郎はベンチに腰かけていた。今の時間帯だと、展望台も人がまばらのようだ。
「――さて、これからどうなるのかねぇ……」
 何を憂うのか、その眼差しはどこか遠くを眺め、まばらに散らばった宝石のようなイルミネーションを近くに見つめる。しばしの間、安煙草と付き合った太郎はその吸殻を携帯灰皿に入れると、展望台を後にしていった。
 ……また、展望台の別な所では姫神 司(ひめがみ・つかさ)グレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)がイルミネーション溢れる夜景をその瞳に望んでいた。
「すごいな、東京と違って真っ暗な中だからか余計綺麗に見えるぞ!」
 展望台の手すりから身を乗り出そうとするほどはしゃぐ司。グレッグはその様子に驚きを覚えながらも、のんびりと司を見守っていた。
 展望台で夜景を眺め、中央広場で露店やステージを楽しみ、商店街でみんなへのお土産を買う――そういうプランの元、二人は今日のお祭りに来たようだ。
 そのプランに則り、司たちは夜景を存分に眺めた後は中央広場へと移動。露店グルメや特設ステージの一芸披露を楽しもうとした――のだが。
「さぁ、こちらは特設ステージ・勝ち抜き一芸披露が行われているのですが……現在、ステージではベル盗りに精を出す魔姫さんと、そのベル盗りへ『露店グルメ大食い勝負』でなら決闘をすると申し出た司さんによる熾烈なバトルが繰り広げられています!」
 ……なぜか司は、魔姫と露店グルメ大食い30分勝負で勝負をしていた。というのも、司たちも魔姫一行にベルを寄越せと迫られたのだがそこで司が正々堂々とベルを賭けた勝負を申し出、今に至るというわけである。ちなみに、色んな露店から提供があったが一番多く提供があったのは弥十郎と斉民が作った竹容器の焼きそば(それなりに売れてたようだ)だったりする。
「……や、やっぱりこっそり奪い取っておけばよかった……かも……」
 すでに勝負は終盤戦。何でこの勝負を受けてしまったのだろう、と魔姫は少し後悔し……テーブルに伏してしまった。司は……ギリギリ、大丈夫そうだ。「勝負つきましたっ! 勝者は司さんですっ!」
 司会進行が勝者を告げると、観客席から拍手が起こる。それに応えながら、司はステージを降り、グレッグの元へ。魔姫も自身のパートナーに連れられ、ステージを降りていった。
「くっ、さすがにきついな……このままだとスカートのホックが危険だ。急いで商店街へ向かおう」
 十分に露店グルメを堪能しきったのもあるらしい、グレッグへそう伝えると二人は足早に商店街へ向かう。本当は一芸披露で歌の一曲でも歌いたかったが、今の状態では危ないと判断したらしい。
 そんな商店街では、お揃いのマグカップを4つ購入し、仲間たちへのお土産にしたとか。

 一方、エースはリリアをエスコートしながら、展望台にやってきていた。宝石をちりばめたかのような夜景に、リリアは眼を輝かせていた。
「すごいわ……空京の夜景とは全然違う!」
 しばらく二人は夜景を眺める。視線から外すのもためらわれるくらいなのか、展望台を離れる様子はない。
「――そうだエース、このベルは持ち帰りたいんだけど」
「別に構わないと思うよ? 鐘の加護があるかもしれないしね」
「え、えとその……べ、別に鐘の加護を信じてるとかそーいう訳じゃないから」
 エースの意見も聞き、リリアはベルを持ち帰ることにした。渡された当初は別にカップルって訳じゃないのに……と内心思っていたが、せっかくのお祭りなのだ、記念に貰っておこうと思い直したらしい。
 そんなわけで、まだしばらくは二人で夜景を眺めるつもりのようだった。

 展望台の別な所では、ベンチに座って後藤 又兵衛(ごとう・またべえ)黒衣 流水(くろい・なるみ)の二人……いや、又兵衛の頭の上にわたげうさぎ姿の獣人・天禰 ピカ(あまね・ぴか)が乗っかっているので三人(?)のようだ……が、告白以来の初めてのデートで町を巡った後、夜景を眺めている。のだが……どうにも、ここまでで会話らしい会話がない。デートの様子を観察するピカが時折「ぴきゅう」と、隠し持っていた干しニンジンをかじりながら鳴くだけだ。
「なあ、流水……楽しいかい?」
 沈黙を破るかのように、何気なく流水の手に自分の手を重ねながら尋ねる又兵衛。その行動に流水は顔を真っ赤にし、俯き加減に頷いて「ドキドキ……します」と返した。
 ……又兵衛は『愛』というものに関して、とても鈍感だ。事実、こうやって流水と恋人同士であるという自覚がまったくない。だが……なぜかはわからないが、抱きしめてあげたいという気持ちがふつふつと湧いているのもまた事実である。
「楽しいならそれでいいんだがね……ちょっと、いいか?」
「あ、はい――ひゃうっ!?」
 ――又兵衛はそのまま流水の手を引き寄せ、腕の中に抱きしめる。そしてそのまま、額に口付けをした。
 思わぬ行動にピカも「ぴきゅっ!?」と干しニンジンを口から落としてしまう。いつもは頭を撫でる程度しかしなかった又兵衛がこんな大胆な行動に出るとは思わず、見守ることしかできなくなる。
「……俺はどうして、あんたにこういうことをしたいのかまったくわからない。でも、してあげたいと思った……」
 耳元でそう囁く又兵衛。流水は完全にドキドキしっぱなしで、甘えるようにその胸にすっぽりと入っている。
(わ、私だって……後藤さんをドキドキさせてみたい……)
 恋する乙女の力は、さもたくましいものらしい。流水は意を決すると、又兵衛の頬に口付けを落とす。この行動に、これまたピカは驚いているようであった。
「今の……ど、ドキドキしましたか……?」
「……よくはわからないが、悪くはない感じはした」
 そう返す又兵衛ではあるが、反応は悪くない。目標を達成した流水は恥ずかしさのあまり、又兵衛の胸に顔を埋めて、しばらく抱きしめられたまま……鐘の鳴る時間まで過ごしたという。そしてその様子を、ピカは見下げる形で見届けたのであった。

「はぁ、はぁ、はぁ……また逃げられちゃったね」
 ――展望台へ移動した魔姫一行。大食い勝負でお腹を一杯にさせた魔姫の代わりにパートナー三人で頑張っていたが、今回のターゲットだった勇刃と天鐘の二人は、フローラ達に気づくや否や勇刃が天鐘をお姫様抱っこし、『バーストダッシュ』で一気に空中へ走り、空飛ぶ箒パロットを手早く取り出してそれに乗ると、そのまま空へ逃げていってしまった。
「もう時間もないし、そろそろかなぁ〜……」
 タイムアップが近いようで、フローラも小さく溜息をつく。だが、ベルの数は結構多いようで、トップになれるのも時間の問題といった感じだ。
「……あれ、姫っちどうしたの?」
 三人は休憩している魔姫のいる茂み方面に向かうと、魔姫はある方向をじっと見ていた。その先には……茂みから瑠璃と和輝の様子を見るなぶらの姿が。
「ああいや、あの人も一人なんだなぁって思って、見てたのよ」
 ……元はと言えば、一人身だからと始めたベル盗りではあるが、一緒に楽しめる人を誘って一緒に祭りを楽しみたい、という気持ちもないわけではない。そしてそれは、パートナーたちも同じ気持ちのようで……?
「――せっかくだし、誘ってみようかしら。ワタシたち四人全員で」
「あたし、賛成ー!」
「これだけベルあれば一位はほとんど確定だし、私も問題ないよ〜」
「まきまきが言うんなら、私も付き合うわ」
 全会一致。というわけで魔姫はなぶらに声をかけようとしたが……なぜか、逃げられた。
「……なんだかわからないけど、追いかけるわよ!」
 突然逃げられたことに高飛車な心が響いたのか、魔姫はパートナーたちへそう声をかけるとさっそくなぶらを追いかけ始める。
「ふぅ、なかなか見合う男がいないな。……ん?」
 と、商店街や中央広場で新たな出会いを見つけようと行動していた蓬栄 智優利(ほうえい・ちうり)が展望台入口へとやってきた。すると、ちょうどなぶらが酷く驚いたような顔をして智優利の横を通り過ぎていく。続いて、魔姫一行も勢いよく通り過ぎていった。
「――よくわからんが、どうやら一人身の男のようだったな。あの者なら『舎弟』くらいにはできそうだ……よし!」
 歯ごたえのありそうな相手を見つけた、と思ったのか智優利も身を翻し、なぶらを追いかけることにしたのだった……。

 ……さて。なぜなぶらが突然逃げたのかというと……ほんの少しだけ、時を遡らなくてはならない。
 展望台へやってきた和輝と瑠璃の二人を見守っていたなぶらは、茂みでこっそり見守り続けていた。
「さっきの店で買ったのだ……ぷ、プレゼントなのだ!」
 瑠璃はどうやら、アクセサリーショップで購入した赤いピアスを和輝にプレゼントしたようだ。気になる人からのプレゼントに、和輝も恥ずかしそうにしている。
「えと、俺からも瑠璃さんへ、その、プレゼントを……」
「ん? 我輩にもプレゼントくれるのだ?」
 お返し、とばかりに和輝も瑠璃へカーバンクルという名のガーネットを手渡していった。
「瑠璃さんの日々の成果が実りますように、という願いを込めてこれにしてみたんだ」
「おぉ、ありがとうなのだ! これは大切にするのだ!」
 どうやら気にいってくれた様子。なかなかいい雰囲気に見守り中のなぶらも思わずガッツポーズを取ってしまう。
 ……が、その時である。
 和輝たちの近くでは、同様に展望台へベルクとフレンディスの二人がきていた。ベルクはフレンディスの性格を考えてか、覗き魔のいそうな茂みのほうへ『その身を蝕む妄執』を使い、露払いをする。……それがなぶらに直撃したらしく、なぶらは見てはいけない感じの幻覚を見てしまい、その場から逃げ去ってしまった。その後に続き、なにやら四人組がなぶらの後を追いかけていってしまう。
「マスター、どうなされました?」
「ん、ああ何でもない。……ってフレイ、なんだそれは?」
 ベルクがフレンディスのほうへ振り向くと、フレンディスは持っている物をベルクへ手渡す。……どうやらそれは、マフラーのようだった。
「あの、今日はとんかつ祭に連れてきていただきありがとうございました。これはそのお礼です。――私がここでこうやっていられるのも、全てはマスターに会えたおかげなのですから。来年も……いえ、この先もずっと私の大好きなマスターでいてくださいね?」
 無垢な笑顔でそうベルクに伝える。……言われた本人からしてみれば、なんというか複雑な気持ちである。大好き、というのがどういう意味なのか。あまりにも透明すぎて、意味を見ることができなさそうだ。
「……ったく、俺のモンになるっつーのに了承して契約しただろーが。――一生だ、一生いてやる」
 進展があるようで、ない……。そう感じたベルクはさすがにこれ以上の踏み込みはやめることにした。天真爛漫なフレンディスによって、毒気が抜かれたのかもしれない……。

「――ほら見てごらん、ブルーズ。地球の月がまん丸だよ」
 ……別のベンチでは、黒崎 天音(くろさき・あまね)ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)の二人が座っていた。その傍らには、露店で買った郷土肉まんとベーコンと野菜の温かいスープが湯気を立てて置かれている。そして西の夜空には地球の月、はっきり見えるほどに浮かんでいた。
 二人がお祭りへ来たのには特にこれといった理由はない。強いて言うならば、のんびり過ごすため……だろうか。
 今年は色々とあったブルーズだが、こうやってのんびりとできることにホッとしている様子のようだ。
「そうだな。……冷めない内に食べたほうがいいと思うぞ?」
「そうだね。折角あつあつを買って来たんだから、冷めない内に食べてしまおう」
 ブルーズに促され、天音はブルーズと共に肉まんやスープを食べ始める。……温かさが身体に染み入る。
「――そういえば、ブルーズが小さい頃はこんな景色もなかっただろうねぇ。パラミタが変わっていくのはどんな感じだった? それとも、ドラゴンにとっては数年の変化はたいして気にならないようなものなのかな」
 天音からの言葉に、無言で考えるブルーズ。ややあってから、言葉を紡ぐ。
「……我の一番の変化は、お前と過ごすようになってから、一年という区切りで時を過ごすようになったことかもしれん。それに――食べ物の温かさなど気にしたこともなかったがな」
 ブルーズはそう言うと、スープを飲んで感慨にふける。……それからお互い、口には出さないもののこうやってパートナーが隣にいること、こうやって温かい食べ物を分け合えていることが大事であることを感じているようだ。
「それにしても、今年も色々とあったねぇ」
「ああ、そうだな……2021年、今年も色々な思い出ができた――」
 天音の言葉で、ブルーズは思い出す。今年一年のことを……。

 ……。

「――む、何故か祭りの灯りやイルミネーションがすごく滲んで見えるぞ」
「色々辛いことがあったんだねぇ……そっかそっか、ブルーズも大変だったんだねぇ」
「誰のせいだ、誰の」
 思わず涙ぐみそうになった、ブルーズを襲った出来事の数々。その大部分には天音が関わっていたりする。
「……お、箒で空を飛びながら告白しようとしてる人もいるみたいだ。となると……そろそろ鳴るのかな?」
 天音がそう口にした瞬間――時計塔から、告白する者たちの後押しとなるべく町全体へ鐘の音が走りだしたのだった。

 その鐘の音に合わせ、ある告白をしようとする男がいた。クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)である。クロセルの目の前にはシャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)がおり、シャーミアンの表情は鐘の音の伝説を知ってか、どこか照れくさそうなものだった。
「えっと、この鐘の音と共に告白をするといいことがある、ということなので……告白させていただきます」
 こほん、と一つ咳払いをしながら真面目な表情でまっすぐシャーミアンを見つめるクロセル。その視線に、シャーミアンはドキッとしてしまう。
 しばらくの間沈黙が続くと、クロセルはいよいよ告白に移る……!
「それじゃ、勇気を振り絞って……えと、ですね。シャーミアン、実は俺……」

「――キミが大切にしてたヌイグルミをウッカリ壊してしまいました、ゴメンねっ!」

 ……流れる、沈黙。謝罪の意だろうか、クロセルはシャーミアンにたいむちゃんなりきりセット(たいむちゃん等身大ヌイグルミの成れの果て)を差し出した。
「……ちょっとでも」
「え?」
「ちょっとでも真面目に捉えてしまった某が阿呆であった……そこに直れぃっ!! 今日という今日は許さん、鉄槌を下してやるっ!!」
 果てしないほどの怒気を察したクロセルは、すぐさま逃亡開始。『捕らわれざるもの』を使い、のらりくらりと逃げ回る。
「空京たいむちゃんの仇ーーっ!!!」
 シャーミアンはそれを捕らえ、断罪を下そうと『正義の鉄槌』でクロセルをぶちのめそうと必死に追い掛け回す。
 追いつ追われつの大逃亡劇は、始まったばかりのようだ……。

 ――鐘の鳴る少し前。展望台から少し離れた、町の裏手にある開けた土地。昔は屋敷が建っていたらしいが今はその面影もなく、月明かりが注ぐだけの場所となっている。
 そこには一組の男女の姿があった。氷室 カイ(ひむろ・かい)雨宮 渚(あまみや・なぎさ)の二人であり、その表情はどちらも神妙な面持ちだった。
「……聞いてくれ、渚。俺の――取り戻した記憶の全てを……」
 渚と向かい合ったまま、カイはゆっくりと言葉を吐き出す。――彼は、自分の名前と戦い方以外の記憶を失っていた。だが最近、その記憶を完全に取り戻したのだ。そしてその記憶は……今、目の前で固唾を飲んでカイの言葉を待つ渚にとって、とても苦しいものになる。
「――俺の記憶の始まりは、鏖殺寺院のメンバーとしての生活だ。その頃に受けた任務に、“ある少女の拉致”というのがあり、それを実行した。……標的となった少女、というのは……渚、お前のことだ」
 発せられた言葉に、渚は言葉を失う。だが、カイは記憶語りを続けた。
「その任務の際、俺はお前の両親を殺した。そしてお前を捕まえようとした時……お前の力が暴走し、俺はそれに巻き込まれた。――気が付いた時にはすでに記憶を失い、何も覚えていなかった……。――お前の幸せ奪ったのは、俺だったんだ! 今更許してくれ、とは言わない。憎んでくれたって構わないし、何だったら、この場で殺してくれたって構わない!! 本当に……すまなかった……!」
 罪悪の吐露。記憶を言葉にしていくに連れて、普段は冷静なカイの感情は激を帯び、カイの目からは自然と涙がこぼれていた。そして、崩れるようにして地面にヒザと手を付けると、顔を伏したまま渚に全てを伝えた。
 ……しばしの沈黙。怒りに震えてるだろう渚へ、カイが顔を向けようとしたその時……。
「えっ……」
 ――渚は、懺悔をするカイを正面から優しく抱きしめる。そして、その存在を確かめるかのように、ギュッと抱きついた。
「……カイがお父さんとお母さんを殺した人だってのは、なんとなく気づいていたわ。だからこそ、記憶を取り戻して欲しくなかった……あなたが苦しむのはわかっていたから。――カイ、私はあなたを恨んでいないわ。今まであなたの一番近くにいて、あなたを見てきた。そしてあなたを愛した。……この気持ちをなかったことにはできないし、あなたは十分すぎるほど自分を犠牲にして私や他の人を救ったわ……」
 愛しさのこもった渚の抱擁は、カイの罪悪心を緩やかにほぐしていく。それは、まさに天使の抱擁といわんばかりのものだ。
「それに、私の両親を殺したのがあなただったからこそ私は憎まずにすんだ。だから……だから、もう苦しまないで! あなたが私の幸せを奪ったというのなら――あなたが私を幸せにして! ずっと……私のそばにいて欲しい……」
 ――いつの間にか、鐘の音が遠くから響いていた。カイの罪の告白、そして渚の赦しと愛の告白……二人の言葉を浄化するように、鐘の音は響き渡る。
「……渚、ありがとう。ならば――俺は自らの罪を背負って生きよう。お前と共に……お前の、そばに! だから渚……俺と結婚してくれ」
 カイのその言葉に、渚は涙ぐみながら頷いていった……。