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【ニルヴァーナへの道】泣き叫ぶ子犬たち

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【ニルヴァーナへの道】泣き叫ぶ子犬たち

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第十二章 炎の友情! 燃える闘志が悪魔を討つ!

<月への港・B3F>

「っ……なんて頑丈さだよ」
「全くね……そろそろ倒れてくれてもいいんじゃない?」
 ひどく疲れた様子で、奈津と八重はそう口走った。
 バロンの提案に従い、足や膝を狙ってかなりの攻撃を当てたにも関わらず、いまだに動きが鈍る様子すら見せないデヘペロ弟。
「というか、奈津……さっきのは大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫……とは、さすがに言えないけど、大したことないさ」
 これだけの相手にも関わらず、「プロレス」であることにこだわる奈津は、あろうことか「一発くらいは相手の攻撃も受けないと」と、まともにではないものの、一撃だけ相手の攻撃を受けていたのだ。
 しっかりと防御し、勢いを殺すための手まで講じたにも関わらず、「大丈夫」と言い切れないほどの痛手を受けたのも、彼女に取っては予想外だった。

「参ったな。時間切れなんてしょっぱい終わり方は嫌なんだけどな」
 冗談めかして、奈津がそう言ったその時だった。

「魔法少女にプロレスラー……とくれば! ここは私が出るしかないっ!!」
 不意に、二人の背後からそんな声がした。
「その声は!?」
 二人が振り向くのと、声の主が光弾を放ったのはほぼ同時だった。
「ペロロゥ!?」
 顔面にその光弾の直撃を受け、デヘペロ弟の目がくらむ。
 その隙をついて、その人物――謎の魔法少女「ろざりぃぬ」こと、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は、ダッシュローラーでデヘペロ弟に向かって突き進むと、手にしていた20メートルのロープをデヘペロ弟の足にぐるぐると巻きつけ始めた。

 いかに不意をついたとはいえ、本来ならば、この程度のことでどうにかなるデヘペロ弟ではなかっただろう。
 けれども、彼はこれまでの戦いで、少なからぬダメージを足に受けていた。
 ここまでは、はっきりした形でその影響が出ていなかったため、効いているかがいまいちわかりにくかったのだが――効果は、確かにあったのだ。

 巻きつけられたロープを引っ張られ、デヘペロ弟がバランスを崩す。
「ダイアル回せっ!」
 そのかけ声とともに、ろざりぃぬはステッキを地面に突き刺し、そのステッキを軸に、身体をほぼ水平にして回転させ……。
「あの技は!」
「ほう、いい動きだ!」
 本職のプロレスラーの奈津とバロンが見守る中、倒れ込んできたデヘペロ弟の顔面に、ろざりぃぬの蹴りが炸裂する。
「マジカル☆ダイアル916っ!!」
 さすがのデヘペロ弟も、この一撃はだいぶ堪えたらしい……が、それでも、まだ立ち上がるだけの力はある。
「さあ! 今がチャンスよ!!」
 ろざりぃぬの言葉に、奈津と八重は一度顔を見合わせ、大きく頷いた。

「まずは、あたしからだっ!」
 ロケットシューズの力で、奈津が天井すれすれまで飛び上がり、天井を蹴るように身体を反転させる。
「これが……必殺っ!!」
 そこから再びロケットシューズを噴射し、立ち上がりかけたデヘペロ弟の胸元に、加速をつけ、そして全体重を乗せた必殺の拳を叩き込む。
 これだけでも威力は相当のものだが、この技はこれで終わりではない。
 さらにその状態から、持てる力のすべてを使って、バイタルオーラとボルテックスファイアを全力で放つ。
「フレアエクスプロージョンだあぁっ!!!」
 炎に包まれた巨体が、大きく後ろに弾け飛ぶ。
 だが、それでもまだデヘペロ弟は戦意を失ってはいない。
「なっちゃん!」
「ああ、八重、後は任せたっ!」
 奈津が飛び退くのを待って、ブラックゴーストに乗った八重がアクセル全開でデヘペロ弟に向かっていく。
 前輪を高く上げ、ウィリー状態での体当たり。
 その衝突の瞬間、その反動を活かして八重が跳んだ。
 その振り上げた太刀に宿るは紅蓮の炎。
「必殺! フェニックス・ブレイカァァァッ!!」
 渾身の力とともに太刀を振り下ろすと、炎は不死鳥へと変じてデヘペロ弟へと突き進み――。

 炎が消えた後には、こんがり焼けて目を回しているデヘペロ弟の姿があった。

「なっちゃん!」
「八重っ!」
 それを見届けて、二人は友情と勝利のハイタッチを交わし……それから、あることに気がついた。
「あれ……さっきの人は?」

 そう。
 二人が気がついた時には、すでにろざりぃぬの姿はどこにもなかったのであった。