空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍

リアクション公開中!

大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍
大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍 大江戸爆府☆暴れん坊ロボ将軍

リアクション

 ところ変わって、パークの外のゲートの近く。
 警備ロボットの監視の外で待機している面々は正午を過ぎた所で、待ち疲れもピークに達していた。
「もうすぐ一時なのに……まだ連絡がありませんよ」
 手ごろな大きさの岩の上に座りながら、雨宮 七日が、周囲に対して如何にも暇だと主張するように
足をぶらぶらさせたりため息をついたりと落ち着き無く動いている。
「どうしてこう面倒極まりない事柄に拘うのが好きなんでしょうね、皆さん」
「だよな、センニュウとかはっきり言ってだりーしよ」
 同意したのはシャロン・クレイン(しゃろん・くれいん)だ。
 オフィーリア・ペトレイアス(おふぃーりあ・ぺとれいあす)もそれに続く。
「矢張り解体予定だから壊れてもいいとあの元眼鏡も言ってるのだから、ゲートも外壁も跡形も残らないくらい徹底的にぶっ壊してしまえばよいと思うのだよ」
「もーーー待ちきれないよアタイ!!」
 ガルム アルハの声に、
 日比谷皐月は息を吐くと、軽く伸びをしてパートナーを見てみる。
 彼女の目から我慢の限界という意思を汲み取ると、皐月は皆に呼び掛けた。
「そんじゃ、いっちょやりますか」



「もう少し何か場を盛り上げる一言は無いんですか。ほら、月は出ているか? とか」
 と言いつつも初めに動いたのは七日だった。
 施設の出入り口、ゲート部分に向けて大魔弾 クロウカシスを使用した砲撃を――二門の魔砲で、直線上の一切合財を吹き飛ばす勢いで全力照射を――行うと、
寂れた雰囲気を一番に象徴していたアーチごと、ゲートの機械が思い切り吹っ飛び、その場に大穴が空いた。
 館内からは即座に中から警備ロボットが出てくるが、
 ゲートを見回っていた警備ロボットは全壊状態のものばかりだ。
 かろうじて数えるほど動けるものが残ってはいたもの、砲撃の直後真っ先に飛び出していった誠一がそれらに的確にとどめを刺してゆく。
 
 また、彼と共に飛び出したアルハは、手になじんだ武器のアンガーアンカーで周囲の建物の壁をどんどんなぎ払って進んでいた。
 力任せに振りまわすので、彼女の進んだ道はもはや原型を留めてはおらず、右も左も隣も向かいも無い程に崩れていく。
 勿論警備ロボット達は彼女を止めようと道に飛び出してくるが、それを待ってましたと言わんばかりにレイナに狙われ、
上から降りそそぐ雷の雨にアルハに近づく事すら出来ないまま次々と壊れて行く。
  
 伊東 一刀斎(いとう・いっとうさい)は集団の中衛に位置し、前線を抜けてきた残機を相手に応戦していた。
「自我もなく操られて戦っておるだけとは、哀れな連中じゃのう。
 兵としては優秀やも知れぬが、それではここに集うた武士(もののふ)共を止めるには不足と言うものじゃ」
 誰に向けるでもなくそう呟くと、一刀斎はまた刀を一閃させた。 

 一度目の砲撃の間にすでに力を発動させていたオフィーリアは、後衛を守る壁を形成しようと、ゴーレムを三体呼び出していた。
 ロボットが近づいてきた所に野生の蹂躙でゴーレムを暴れさせ撃退させる手筈なのだ。
 ゴーレムの間をすり抜けて来たロボットは少なく、それでも?三台は残っていたもののオフィーリアが
「俺様に接近するなんて百万年早い」
 と、聖杭ブチコンダルを文字通りぶち込み全力で蹴散らす。
 そのオフィーリアの作ったゴーレムの壁の後から、シャロンが擲弾銃バルバロスで警備ロボが群れている箇所目掛けて擲弾を撃ち込んでいる。
 攻撃の隙を塗って背後からやってきたロボットがいたが、
「喧嘩上等! かかってきな!」
 と叫ぶとそのまま蹴り飛ばし、更にサイコキネシスまで使用して距離を取り、擲弾を叩き込んだ。
 喧騒の後ろでは七日が砲撃の反動で休んでいる。二度目の砲撃には後十分は待たなければならないのだ。
 パートナーの皐月はオフィーリアと共に彼女の護衛をしていた。手にしている特殊な武器で氷壁を作ると、やってきたロボットの攻撃を受け流す。
 それを見ていた七日は冗談めかして礼を言った。
「どうもです」
「いえいえー」
 と軽いやり取りを経て居た頃……



「皆さん頑張ってください!」

 工事と警備関係者を無事に外に連れ出すべくフレンディスとベルク、加夜らは茶屋で待っていたリース達と合流すると、
そこからほど近い非常口を目指して走っていた。
 マーガレットが前、フレンディスとベルクが左右、加夜後ろと、弱っている関係者を囲み四人で守りながら進む陣形を取っている。 
 リースは空飛ぶ箒で彼らの上からなるべく最短かつ敵の少ない道を選ぶ為に、歩くのもキツいらしい関係者達を鼓舞しつつ
空からの支援を行っていた。
「えっと……確かモニュメントの横の建物の中にあるのが外に通じる非常口のはず」
 リースがここへ来る前に頭に叩き込んだ館内の地図を思い出し、目的の建物を見ようと目を細めていると、
関係者用の扉の一つが急に開き、中から警備ロボットがキャタピラを勢いよく回し下に居る仲間達を目指して走って来るのが見える。 
「マーガレット!」
「け、警備ロボが!!」
 リースの声は残念ながら関係者の恐怖の叫びでかきけされてしまったが、マーガレットは既に一歩早く動いていた。
 彼女の手から放たれた火術は、警備ロボットの目の前で強い光を放ちながら燃え上がる。
 マーガレットはロボットがカメラに映る映像が解析出来なくなった事で動きを止めている間に駆け寄ると、
持っていた刀で思い切り横殴りした。
 ここに入ってすぐにマーガレットが武器として拝借してきた偽刀は、一般的に模造刀の素材に使われるアルミや、竹光ではなく
木刀を塗っただけのものだったので、攻撃の重さに折れる事なく立派に目的を果たしてくれた。
 ロボットは優秀な野球選手に打たれたボールの様に遠くへ、バッターの狙い通りの方向へ吹っ飛んでいく。
「お願い!」
「引き受けました!」
 フレンディスは巨大なロボットが眼前に吹っ飛んでくるというのに瞬き一つせず、腰から忍刀を抜くと逆手に持ち、
ロボットが当たった感触に足に踏ん張りを利かせると、そのまま正眼に返す。 
「ロ、ロボットがまっぷたつに!」
 加夜の足元に転がるロボットは勢いで斬れ、丸い頭と手らしき部分と、キャタピラ部分で真っ二つに割れてしまっている。
 吹っ飛ばした本人も流石に割れると思っていなかったらしく、マーガレットも驚いて指を刺して驚いている。
「そ、それニセモノだよね!? おもちゃなのに何で」
「私も良く分からないんですが……なんだか上手くいきました」
 にっこり笑顔を見せるフレンディスに、その場に居る全員がコケそうだ。
「分からないって……フレイ」
「あ!」
 フレンディスの手の中で、模造刀が二つに割れてしまったのだ。
「やっぱり駄目でしたか」
「お、おおおお」
 呑気な声で反応する彼女に、周りは口から音を出す事しか出来なかった。

 束の間和んでいた空気。そんな彼らのからリースの声が降って来る。
「なんで? 建物が……モニュメントが……」
「リース、どうかしたの?」
「わ、わかりませんただ……

 何も無いんです!
 先にあるはずのものが全部無くなっているんです!」
 彼女の見ているものをみようと、その先を見た時。
 轟音が鳴り響いた。
 七日の二度目の砲撃の音だった。


 リース達の前で、目の前にあった書き割りや建物が崩れ、消えていく。
 攻撃は警備ロボットも町人ロボットも差別無く行われ、後に残るのは少しの残骸と建物と一緒に抉られた地面だけだ。
 何がなんだか理解できないまま、リースは地上へ降りると、彼らを制止しようと精いっぱい声を張り上げる。
「ま、待って下さい皆さん! 関係者の方はもう助かったんです!だから攻撃は――」
 突入してきた中で先頭を走っていた八神は全く聞く耳を持たないのか、リースの横を走っていく。
「ホストコンピュータの所へは高円寺さん達が行きました!」
 フレンディスの声も届かない。
「止まって下さい!!」
 最後にやっと加夜の声に反応して、誠一が突然動きを止めた。
 三人が胸を撫で下ろした時だった。
 誠一が加夜達に向かって走って来る。彼女達を敵と判断し、排除する気なのだ。
「待――」
 弁解の余地なく目の前に迫った八神が急に目を見開くと動きをピタリと止めた。

 気を失い地面に落ちた彼の後ろから加夜にはよく見なれたシルエットが現れた。
 それはまぎれもなく彼女の愛しい婚約者

「涼司くん!!」

 山葉 涼司だった。
 予想外の人物が現れた事で、動きを止めた突入部隊を前に、山葉は一度周囲を見て、それからもう一度彼らを見てため息をつくと、
息を吸い込んで一喝した。
「おまえら、やりすぎだ」



 その後、日比谷らが帰還し、リース達が工事と警備の関係者を病院へ連れて行くと、
 何も無くなったかつてエントランスだった場所には加夜と山葉だけが残された。
 一通りの報告を終えた加夜がふと疑問を口にする。
「それで涼司くんはどうして――」
 ここに居るのか?
 と、問う前に疲労が祟った足は主に反抗して膝を揺らした。
 倒れそうになった加夜を当然のように抱きとめると、山葉は彼女の疑問に答える。
「用事が思ったより早く済んだだけだ。それに――加夜が心配だったしな」
「……涼司くん……」
「……きてよかったみたいだな」
 頑張り屋さんな性格は好きだが、頑張りすぎるのは数少ない短所だと思う。
 先程も、内心実は心臓が止まる思いだったのだ。
「無事でよかった」
 山葉は彼女の華奢な肩に顎を乗せると、安堵の溜息を吐いた。