リアクション
控えめなノックをしてアランの部屋に入ってきたのは封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)だ。 『私の名前』 むかーしむかし、『大いなる災い』とも『影』とも呼ばれる黒い龍がいました。 その龍はとても強い力をもっていて、いつもいつも悪い事をして民を苦しめていました。 ある時、天使の一族がある赤子の力を使って『大いなる災い』を倒そうとしましたが、その赤子の中に閉じ込める事しかできませんでした。 その為、民と天使の一族は長である『御柱』と呼ばれる天使の女性に『大いなる災い』を赤子ごと倒してくれと頼んできたのです。 皆から頼まれてしまった一族の長である彼女は嫌だという事ができず『大いなる災い』を倒そうとしましたが、失敗しました。 『大いなる災い』を閉じ込めている赤子は『御柱』の妹なのです、彼女には妹と共にそれを倒す事はできませんでした。 『大いなる災い』を倒す事ができなかった『御柱』は聖なる庭と呼ばれる花畑に赤子ごと『大いなる災い』を封印し、その封印を守り続ける事にしました。 『御柱』はそのまま幻となりながらもずっとずーっと封印を守り続けました。 それからとても永い年月が経ちました、皆が『大いなる災い』の事を忘れてしまうくらいの年月が……。 庭のあった場所には学園が建ち、そこの生徒が庭の手入れをしてくれるようになりました。 ある日、封印を守り続けていた『御柱』は何者かに封印を破ろうとしている事に気付きました。 彼女は封印を守ろうとしましたが力及ばず封印は破られてしまいます。 そしてそこから『大いなる災い』の力が漏れ始めたのです。 漏れ始めた『大いなる災い』の力はその学園に様々な災いをもたらしましたが、その学園の生徒達は力を合わせて一つ一つ事件を解決していきました。 そんな中、彼女『御柱』は銀髪の剣士と出会いました。 「必ず貴女とこの花壇を護りますよ。何ならこの剣に誓いましょうか?」 そんな事を言って彼は黒髪の剣の花嫁と共に『御柱』を護るために剣を振るい続けました。 そして『御柱』という役割以外の呼び名を彼女に付けてくれたのです。 名前を付けてもらった彼女は生徒達にお願いをします。 妹を救い『大いなる災い』を再び封印する為に力を貸して欲しいと。 そして、破られた封印が完全に壊れないよう力を使い、そのせいで少しの間姿が消えてしまいました。 彼女が再び姿を表すまでの間、皆は彼女の願いを叶えるために色々と頑張りました。 そして姿を表した彼女は銀髪の剣士の口付けのおかげで幻から天使に戻ることができました。 さらに生徒達の力のおかげで妹を救い再び『大いなる災い』を封印をする事ができたのです。 天使に戻った彼女は今もちょっと意気地の無い銀髪の剣士の元で幸せに暮らしています。 めでたしめでたし。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ほぉ〜♪ こんな物語初めて聞いたぞ」 「喜んでいただけたみたいで良かったです」 アランの言葉に白花も嬉しそうにほほ笑む。 「お疲れ様でした」 セバスチャンが労いの言葉とともにティーカップを手渡す。 「ありがとうございます。わぁ……苺の香りがしますね」 中身は苺のフレーバーティー。 白花は香りを味わったあと、紅茶を舌でも味わう。 「美味しいです。ああ、なんか……この物語を話したら刀真さんに甘えたくなっちゃいました」 「う? この物語はそなたの話なのか?」 「それは――」 「白花、迎えに来ましたよ(来た)」 その声に反応して、白花は目一杯の笑顔で振り向いた。 「刀真さん! 月夜さん!」 そう名前を呼ぶと駆け出して、白花は樹月 刀真(きづき・とうま)に抱き着いていた。 「ずるい……私も」 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)もそれを見て、刀真に横から抱き着く。 「……なんだ? 物語の形をしたのろけ話だったのか?」 アランとセバスチャンは顔を見合わせたのだった。 |
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