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我が子と!

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我が子と!

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〜 2nd phase 〜


 確認対象を別フィールドに移行 
 ……コアの精神に揺らぎが見られるが状況に影響なし 
 引き続き各サンプルの観察を実行 

 フィールド:ショッピングエリア 
 5名のサンプル及び2体のマテリアルを確認 
 1名程、条件に適合せず……しかし関係性の補修で修正済み


街の中心にそびえ立つ一際大きなショッピングモール
そこの中を1時間程前より上から下から、ウロウロと動き回る4人の女性の姿があった

どこから見ても巨大な注射器にしか見えない小型飛行艇に搭乗していたり、光学迷彩を駆使したり
はたまたカメラを手にしているモノモノしい姿に、通り過ぎる人達は一瞬警戒するが
すぐに彼女等の視線の先にいる者達の姿を見つけ、笑いを噛み殺しながら黙って去っていく
それは……買い物籠を手に、メモとにらめっこする3人の女の子達の姿であった

ちなみに追跡している【彼女達】という認識も、少し違う
約一名程ではあるが……多くの者の誤解を生む姿……いわゆる【女装】姿が混ざっているわけで
そんな事は意に介さず、当の本人…佐野 和輝(さの・かずき)は不安げに誰に言うとでもなく呟いた

 「やっとここまで辿り着いたけど……
  大丈夫かな?悠里達、ちゃんと店までたどり着けるかな……」
 『アニスさんもいるんだから大丈夫ですよぅ。
  もうちょっといつもみたいに落ち着いたらどうですか?和輝さん』
 「だだだって、さっきだって公園に寄り道してたじゃないか!
  君やレティさん達だって、心配だからみんなでついてきているんだろう?」
 『私達は面白そうだから見てるだけですよぅ?
  心配なのは和輝さんの方ですよぅ、見るからにストーカーですよぅ?』
 「そんな飛空艇で飛んでる君に言われたくないよ!って、あああああああ!」

たしなめる様に上空から入ったルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)の通信に
半ば本気で食って掛かる和輝だが、心配の種が移動したのを見てすぐに移動を開始し始める


…………事の始まりは数時間前に遡る

自宅スペースが近い和輝とルーシェリア、そして娘の悠里の3人と
リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)とそのパートナー
レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)と娘のユウキの3人はパーティーをする事になった

折角だから食事は子供の好きなカレーを作ろうという話になった所で
自分達で買い物に行きたいという悠里やユウキ、そして娘達二人の主張を汲み
折角だからと一大イベント【はじめてのおつかい】を決行することに決まったのだが……

 『え?悠里だけでお買い物?――危ないよ!!
  ……もう、お姉ちゃんが一緒に行くなら良いけど……』

………と、悠里の姉であるアニス・パラス(あにす・ぱらす)が突如子供たちの同行を進言
改めて、子供達3人で家を出た所で…ついに心配のあまり和輝が家を飛び出し
彼を止めに後を追ったルーシェリア達も、子供達3人の予想外の様子がつい面白くなってしまい
結局、全員で後を追う流れになったという

 「アニスちゃんもまだ子供ですしねぇ
  見てくださいよ、さっき公園に寄り道した時の女の子に作ってもらった花飾り
  ユウキよりも嬉しそうですよ?」

子供達の姿をカメラに収めながら楽しそうにレティシアが後ろに話しかける
その声を聴いて後方から【光学迷彩】を解いたリアトリスが姿を現した

 「そんなに面白がるものじゃないよ、レティシア
  彼女がいてくれたから公園でユウキが転んだ時【ヒール】で手当して貰えたんだし。
  いちいちカメラで全部取るなんて悪趣味だと僕は思うよ?」
 「悪趣味とは失礼ですねぇ。これもあちきの我が子への愛なんですよ?
  楽しい事も大変な事もみんな大切な思い出になるんです。全てが貴重な時間ですよ」
 「そんな……別に老い先短いわけじゃないんだから」

苦笑しながら自分をたしなめるリアトリスの言葉に、レティシアはカメラを下して彼女の方を向く
以外にも真剣な顔にリアトリスはちょっと驚いた

 「……楽しい時間はすぐに過ぎてしまうんです。だから少しでも大切にしないと」

いつも能天気なパートナーから出た言葉の真意が別にあるのか、リアトリスは読み取れない
だが案外、子を持つと人というものは思った以上に変わるのかもしれない
その最たる同行者の様子を遠くに見ながら、リアトリスは溜息をつく

 「そうだね、君の好きにしたらいいよ。少なくとも彼よりはずっとマシだしね」

その視線の先には、心配のあまり飛び出そうとして
とうとう飛空艇から降りたパートナーに関節技で抑え込まれている和輝の姿があった

 「る、ルーシェリア。頼む行かせてくれ!!娘のピンチなんだ!!
  知らない人の前でユウキちゃんにつられてフラメンコを……っ!」
 「まぁまぁまぁ只の大道芸の楽隊さんですよぅ。楽しそうじゃないですかぁ。
  ここは自主性に任せて、子供達に任せるですぅ☆」
 「って、いたたたたたたっ!?ちょっ、折れる折れる!折れるから!!」



……ショッピングモールの喧騒の中、何やら遠くで場違いな叫びが聞こえた気がしてアニスは首を捻る

 「な〜んか聞いたことがある様な声なんだけど……、まいっか」
 「アニスおねえちゃん!演奏終わったよ!」

アニスの前に演奏に合わせて楽しそうに踊っていたユウキと悠里が戻ってきた

 「見てた?お姉ちゃん!ユウキちゃんって踊るのすっごい上手なんだよ!」
 「そうかそうか。ユウキちゃんはホント踊りが好きなんだね」
 「フラメンコっていうんだよ!ありがとう、見ていいよって言ってくれて」
 「なんのなんの、お姉ちゃんは楽しい事は何でも知っているのだ!
  公園だって楽しかったでしょ?悠里は花冠が上手だったもんね」
 「【はるかちゃん】が教えてくれるの上手だったんだよ、また会いたいなぁ……」
 「よしよし、だったら帰りにもう一度公園に行ってみよう!」
 「駄目だよ!そろそろちゃんとお使いしないと!カレーが食べられないよ!」

ユウキの注意に本来の目的を思い出したアニスが我に返る

 「にゃは〜!そうだった!急いで買わなきゃ!ユウキちゃんはしっかりしてるなぁ」
 「そりゃあお父さんとお母さんの子だもん」
 「……悠里だってしっかりしてるもん」

頬を膨らませる悠里が可愛くて、思わずアニスは妹とその友達の頭を精一杯撫でてやる
そして声高らかにより一層元気に叫ぶのだった

 「うんうん、二人ともエライエライ!
  さ、では本当の目的を果たすのだぁ!あらためて、いざ買い物にしゅっぱ〜つ!」