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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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 安宿では、料理が出来る間、ノーンが持って来たお菓子を食べたり遊んだり賑やかに時間を過ごしていた。

「せっかくだから、何か賭けようぜ。お金はまずいからお菓子でも」
 忍がテーブルにあるトランプなどを手に取りながら言った。

「あ、いいね。やるやる。絵音ちゃんも」
「……うん」
 セレンフィリティは真っ先に答え、みんなの言葉が少しずつ染み込んできて少し暗くなっている絵音も誘った。
「面白そうだな。俺もするぜ」
 ウォーレンも加わった。
 とりあえず、この四人でゲームを始めた。

 部屋の隅では小さくなった三人組がしみじみとしていた。
「サミエはこの年で亡くなったのよねぇ」
 イリアルは、小さくなった自分の両手をじっと見た。

「イリアルさん達、大丈夫か?」
 陽一は悲しそうにしている三人が気になって声をかけた。

「本当は分かってるんだ。三年も経って見つからないってことは死んでるって」
「でも、もしかしたら誰かに助けられてるんじゃないかって。記憶喪失になってて俺達のことを忘れてるだけじゃないかって」
 ハルトとナカトは陽一に自分達がこれまでずっと抱き続けた悲しみを話した。目には涙はないが、心が大泣きしていることは分かる。
 三人は自分達の姿で5歳で亡くなったサミエを思い起こし、胸の奥が悲しみで苦しくなってしまったのだ。どれだけ若くてどれだけ苦しかっただろう。必死に自分達に助けを呼んだんだろうと。

「……それだけ大切だったんだな」
 元気にする励ましの言葉は浮かばないが、何とかしたいとは思う。三人が絵音と今後も会えるようにしてあげたいと。

「お姉ちゃん達も遊ぼうよ。ほら、こんなに勝ったんだよ」
 ゲームを楽しんでいる絵音がたくさんお菓子を手にイリアル達を呼んだ。

「5歳児に負けるなんて。俺ってどんだけ運が無いんだよ」
 絵音と反対に忍は悔しそうな顔をしていた。
「もう一回やろうよ」
「残念だな」
 セレンフィリティは再戦を言い、ウォーレンは手に入れたお菓子をほおばっていた。ちなみに二人はそこそこな戦績を残していた。

「あれ、お兄ちゃん羽があるんだぁ。飛べるの?」
 絵音は、ウォーレンの背中にあるコウモリの羽に気付き、興味津々。
「おう、飛べるぜ」
 そう言ってウォーレンはほおばっていたお菓子を最後まで食べ切ってから軽く室内を飛んで見せた。
「すごい、すごい」
 嬉しそうに絵音は手を叩いた。
「あたしね、歌が歌えるよ。ナコ先生に上手だねって褒められたんだよ」
 今度は絵音が自分の特技を紹介した。褒められたことがよっぽど嬉しかったのか表情が緩んでいる。

「是非、聞かせて下さい」
「いいよ」
 みとの言葉で絵音は幼稚園で習った明るくて元気な歌を歌った。
「上手ですわ」
 みとの拍手に絵音は嬉しそうに照れた。

「私も歌うこと大好きだよ」
「俺も好きだぜ」

 歌うことが大好きなノーンとウォーレンが名乗り出た。

「わぁ。聞きたい、聞きたい」
 絵音の希望で二人は歌い出した。
 まず、ノーンが幸せいっぱいの歌を奏でウォーレンは、歌だけではなく民族的なダンスも披露した。
「すごい、すごい」
 絵音は嬉しそうに聴いていた。 

「……大丈夫かのう」
 あまりの騒がしさにルファンは少し気になっていた。声を聞きつけて自分達のように訪れる者がいたらまずいと。それでも絵音が帰りたがるまで待とうと思っていた。

 廊下で監視をしている二人の耳にも室内の歌声はしっかりと届いていた。
「何か、幸せになるね〜」
 アニスはほんわりと少し幸せそうな表情になって聴いていた。
「どんどん、騒がしくなるな」
 外出の次は賑やかな歌声。どんどん騒ぎがエスカレートしていく。もうそろそろ絵音の心が帰ることに向かえばいいのだがと思っている。
「平気だよ〜、アニスと和輝がいるもん」
 和輝の様子を見てアニスは緩んだ顔を引き締めた。
 二人は、もうしばらく見守る続けることに。