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平安屋敷の赤い目

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平安屋敷の赤い目

リアクション

 事件があった後、加夜は偶然出会った海達と会話をする事が出来た。
 そこで加夜は、彼女にとって最も残酷な真実を聞かされる。

 山葉涼司が囮になり、生きているのか分からないいう事実。

 一瞬目の前が真っ暗になりかけたが、「分からない」のであれば諦める事は出来ない。
 彼の姿を追い求めて加夜は校内を掛けずり回った。 
 心配で不安で、目にたまった涙は今にも零れてしまいそうだが、我慢した。
「涼司君を助けるまで死ねません!」
 覚悟を胸に、最後の頼みの綱である鬼を封じる武器を求めてここまでやってきたのだ。
 しかし現実は残酷だ。
「そんな……ここまできたのに……」
 探し求めた愛する人は目の前にいるというのに、鬼の仲間に姿を変えて居ようとは。
 ――でも……覚悟していた事だわ
 加夜は海から貰ってきた豆を手に、歴戦の必殺術を発動させ的確に命中させる。
「今、何回?」
 加夜の疑問に葵が答える。
「今のも含めて三発だ!」
「じゃああと16回ぶつければ!!」
 新たな豆を手に取るが、そんな彼女の周囲に餓鬼がまとわりつく。
 彼等に噛まれれば自分も鬼の仲間になってしまう。
 一瞬動きを止めた加夜の頭と臀部辺りからネコの白い耳と尻尾が生えて居た。
 超感覚を使ったのだ。
 更に歴戦の生存術で攻撃を回避しつつ、銃の中に豆込めて遠くへ追い払う。
「どうにかこのしびれ粉が当たればッ!」
 しかし加夜は事を急き過ぎていた。 
 涼司が後ろを向いている隙に間合いを詰めた。と思っていたが、それは彼の罠だったのだ。
 突然ぐるり。と振り返った涼司に加夜は武器を落とし攻撃する事も豆をぶつける事も忘れてしまった。
 涼司は手に持っていた武器を振り上げる。
「駄目ぇ!!」
 攻撃から自分を庇おうと思わず、床に落ちて居た何かを手に取っていた。
 突如その場を目を潰さんばかりの強い光が包みこむ。
 光は加夜の手から出て居た。
「それは!」
 加夜が思わず手に取ったのはあの宝玉だったのだ。
 宝玉は形を変え、小さな鏡となり加夜の手におさまっている。
 しかし強い光の放たれた間に、涼司は何処かに逃げてしまったらしい。
「そんな、涼司君……何処へ?」
 落胆する彼女の肩を、司が優しく掴む。
「今は取り敢えず置いておくのだ。
 その宝玉、そなたに反応し形を変えたらしい。
 ならばそなたが使うのがいいだろう」
「でも、どうやって」
『司、聞こえる?』
 放送はルカルカの声だ。
 監視カメラで彼等の戦いを見て居たのだ。
『ここは現実と非現実の狭間……
 集めた情報から要となる武器も陰陽の二つの力を持っているの。
 今発動したのは多分陽の力だよ。だから黒いのが攻撃できると思う。色的に!!』 
「い、色的に?」
「いいからあの黒い怨霊を滅ぼすのだ」
「でも、あの……どうやったらさっきみたいに光るんでしょう。
 また玉の形に戻っちゃいましたし」
「なんか上にこう、かっこよく上げれば多分さっきみたいにぱーって! ぱーって!」
「そうです加夜さん! ぱーって輝かせて下さい!」
「加夜、お願い!」
「加夜ちゃん、任せた!」
「わ、分かりました!」
 皆に上手い事乗せられた気がしないでもないが、加夜は宝玉を手に黒い怨霊に向かっていく。
 道はマーガレットと隆元が切り開いてくれていた。
「い……いきます! えいッ!!」
 加夜は目をつぶり、全身の力を手に集中させ宝玉を振り上げる。
 柔らかい光に包まれた宝玉は再び形を変え、鏡の形になると、強い光を放った。
「ギィイイイイイイイイ」
 悪霊の声だろうか。断末魔を残して、黒い悪霊はその場から消え去った。
「……やりました」
 加夜はその場にへたりと座り込む。
「大丈夫か?
 どうやらその鏡、強い魔力を消耗するらしい」
 後ろから来た司に支えらなんとか立ちあがる。 
 そんな初めての勝利らしい勝利に皆が湧いている中だった。
「カガチ!!」
 葵の声だった。
 カガチの前に現れた白い悪霊は彼に呪いの気を放つ。
「う……」
 カガチはぐらりと倒れそうになって、何とか押しとどまる。
 突然鼻の奥にムズムズした感覚が溢れ、頭がガンガンと殴られたような痛みを持っていた。
「ふ……えくしゅっ!!」
 盛大なくしゃみと共に、カガチの鼻からは滝の様に鼻水が流れ出した。
 女子生徒は明らかに引いた目で彼を見て居る。
「こ、これ……風邪か?」
 どうしようもなくふざけた状態だが、頭を襲う痛みはどんどん増してくる。
「やばいな」
「確かに有る意味”ヤバイ”な」
 隆元にそっと渡されたハンカチで鼻を抑えるが、鼻水は止まらない。
「小娘たちに引かれておるぞ」
「確かに……こりゃあ、キツイわ!!」
 カガチは刀を手に近くに居た餓鬼に当たるように一層増した攻撃を与えている。
 そんな彼の背中を真剣な瞳で見つめる葵。
 ――さっきはあれだけで済んだ。だが次にあんな事があれば無事でいられるか?
 悪霊はあと一匹残っている。
 仲間は増えたが餓鬼の数も少なくは無い。
 ――あの力。
 あれを使えば僕も無事では済まないかもしれない。
 でもそれでもいい。
 何時かの僕の命を契約のリスクを無視してまで救ってくれたのはカガチだ。
「恩を忘れるほど僕は阿呆じゃあないんだよ!」
 叫ぶ彼女の黒髪はみるみるうちに白銀に変わり、セミロングだった長さが更に伸びて行く。
 体躯は肥大化して歪み、唇からは牙が覗き頭には角が生えて居た。
「まさか鬼の仲間に!?」
 驚くマーガレットに、隆元は冷静に説明する。
「いや、あれは恐らく鬼神力。だが……」
 ――あの力を使えばただでは済まないはず。
 そう思い彼女のパートナーを見ると、カガチはいやに冷静な表情をしている。
「行こう。葵ちゃんの……その心意気を無駄にはできねぇ」
 カガチの言葉に、皆がうなずく。
「葵ちゃん、すぐ戻ってくるから耐えててねぇ!」
 走るカガチ達を見送りながら、葵は一人餓鬼の群れと対峙した。
「僕だって『鬼』の端くれだ。
 『半端者』達よさあご覧じろ

 これが本当の鬼の闘争だ!!」