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リアクション
「ダリル、行くよ!」
「ああ!」
剣を構えたルカルカは誰よりも早く前線へ出て、3メートルはあろうかという巨大熊へ斬りかかる。
ダリルは『嵐のフラワシ』と『焔のフラワシ』を用いて、敵の隙を突いていく。
「君が勝手なことをするからだ」
と、メシエはリリアへ毒づいた。
「むぅ、そう言われたって……」
リリアは頬を膨らませてみせたが、メシエは相変わらず冷めた態度だ。
どうしても仲良くなれない相手だとリリアは思ってしまう。ヴュレーヴの花を介して少しでも関係が改善したらいいのだが……残念ながら、今はそんなことを考えている場合ではなかった。
安全な場所へ着き、落ち着いたところでレガートはその場に座り込んだ。さすがにチェリッシュもそろそろ地面へ降りたいだろうと考えたのだ。
しかしチェリッシュは首を傾げた。
「あれ? レガートさん、つかれちゃった?」
地上へ降りたチェリッシュはレガートの頭を優しく撫で、そっと『アリスキッス』をする。さほど効果はないものの、少女の純粋さにレガートは微笑ましい気持ちになった。
周囲の安全を確認していた咲夜は一人と一匹の元へ来て箒を降りた。
「大丈夫でしたか?」
「うん。チェリッシュは元気だよー」
と、にっこり笑う少女に咲夜はほっと胸を撫で下ろす。
叶月は舌打ちをした。
歌菜のHCで居場所を突き止め、チェリッシュとすんなり合流するはずだったのだが、たどり着いた先は戦場と化していたのだ。
「ティー、花を見つけましたわ!」
「でもイコナちゃん、今はそれどころじゃないかと……」
チェリッシュを傷つけまいと魔物から逃げ回っているレガートを見て、ティーはおろおろしてしまう。
その一方で、すぐさま戦闘へ加勢する者がいた。北都だ。
「これまでに会った魔物とは少し違うタイプだね」
と、冷静に状況を判断しながら一体の魔物に向けて『サイドワインダー』を放つ。
逃げ場を失った魔物はその場に伏し、その隙にクナイが『シーリングランス』でダメージを与えた。
「この花と何か関係があったりして」
「その可能性は大いにあるでしょうね」
魔物が逃げ帰っていくのを見送って、北都は一つ息をついた。
ライフルを立て続けに発砲すると、少しは魔物たちの敵意も薄れる。
しかし、紅鵡は気を抜くようなことはせずに、今度は木の上からこちらを睨んでいる大蛇に向けて発砲した。
歌菜は『歴戦の武術』による動きを駆使し、羽純と息の合った連係プレイを繰り出す。
魔物たちは本能で危険を察知したのか、徐々に巣穴へと逃げ帰りだした。
ようやく平穏が訪れ、あたりはしんと静まりかえる。
その場にいる誰もが風に揺れる花畑を見つめ、息をついたり、胸を撫で下ろしたり、感動したりしていた。
「よくやったな」
と、羽純は歌菜をぎゅっと抱き寄せ、キスをする。
その様子を見ていられず、叶月は視線を逸らした。あんな恥ずかしい真似、自分は一生かかってもできそうにない。
改めて、もう危険でないことを確かめると、エースはゆっくりヴュレーヴの花へ近づいた。そっとその場にしゃがみこみ、やさしく花へ手を添える。
「俺たちにここを荒らすつもりはない。それどころか、俺は君たちを守りたいと思っているんだ」
花の顔色が変わった。
「昔はたくさん咲いていたんだから、その頃の姿を取り戻すことは出来るはず……だから、ぜひ俺のところへ来てくれないか?」
やわらかな風が吹く。目の前の人間を信頼するべきかどうかと迷う、一瞬の間。
「……いいのか? ああ、絶対に約束するよ。倍の数に繁殖させて、いつかまた街のあちこちで見られるようにしよう」
エースは真摯な瞳でヴュレーヴを見つめ、にっこりと微笑んだ。
その様子を見ていたリリアはどこか羨ましそうにつぶやく。
「微笑ましいわねぇ……あんな風に見つめられたら、本当に花が大好きだって分かるわよね」
「ねぇ、私も庭に植えたいから、持ち帰ってもいいか聞いてくれる?」
ふとルカルカがエースにそう話しかけ、エースは数秒後にうなずいた。
「うん。あまり多くない数ならいいってさ」
「やった!」
ルカルカはすぐに近くの花に目を留めると、周辺の土ごと採取し始めた。
「予想よりも多くの人が来てたんやなぁ」
と、泰輔はつぶやいた。
しかし、花を必要としているのはここにいる彼らだけではないはずだ。
「よし、さっそく俺らも花摘みや」
と、泰輔はレイチェルと顕仁へ指示を出した。
「彼女たちのように、根こそぎ持っていくべきであろうな」
「そうですね。ですが、それだと時間もかかってしまいますし……」
「まぁ、この花畑の3分の1持って行ければええ方や」
その直後、誰もが泰輔の方を見てしまった。想像以上に遠くの方まで響いたらしい。
「そんなに持っていったらヴュレーヴがかわいそうだ」
と、花を愛するエースが口を挟んだ。
するとルカルカも泰輔たちを責めるように言う。
「そうよ。ただでさえ、こんなところに咲いているような貴重な花なんだから」
「本当に必要な分だけにしてくれないと、花が本当に消えちゃうよ」
と、北都も言う。
泰輔は腕組みをして考え込む。
「せやけど、いい小金稼ぎになるし……だいたいあ、自力でここまで来られない女の子たちが俺らを待ってるんや」
しかし、泰輔たちを取り巻く視線は冷たい。
レイチェルと顕仁は顔を見合わせて、泰輔の判断を待つことにした。
花畑は広がっているが、何万本というわけじゃない。この花たちが何年後まで咲き続けられるかも分からない。
泰輔は息をつくと、しぶしぶパートナーたちへ言った。
「とりあえず五十本で我慢したる。五十本や」
それでも多い方なのだが、3分の1採られるよりはマシだった。
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