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インテリ空賊団を叩け!

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インテリ空賊団を叩け!
インテリ空賊団を叩け! インテリ空賊団を叩け!

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〜 6th phase【作戦開始・交渉】 〜


そして時間は当初に巻き戻る

赤い山猫が帆に描かれた大型飛空艇に誘導され
崖の入り組んだ谷間に誘導されたレティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)の乗る大型商船の甲板に
交渉係を乗せた小型飛空挺が着艦した

レノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)の誘導でラウンジに現れた代表の彼は
交渉役よろしく脅迫よりも交渉が似合う温厚さを醸し出していた
……最も、彼を守る9人の護衛は男女混在しているとはいえ、風貌は真逆のそれであったが

 「突然の非礼を先に謝らせて頂きたい
  我々はこの一帯を統治する、とある名家に縁のある者。その要請により物資補充の協力として
  いくつかの資材等を要求に相応しい分、提供して頂く事を願いたいのですが……」

交渉という手段にある程度慣れた物腰にレティーシアだけでなく
護衛役のダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)までもが意外そうに眼を丸くした

 (成る程……『商売』的な交渉で来られたら、通常の者は単純に断る術を持てない、と言う事ですか
  力で撥ね付けるわけには行きませんね……余程のものでないとこのテーブルは難しい)

だが交渉戦として順当だ
デリケートな定番の話の流れを受けテーブルの先陣に立とうとするレティーシアを
リブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)が手で制した

 「丁寧な挨拶は結構であるが、まだそちらが何様なのか名乗り出てはいない以上
  こちらも対等な話し合いを行う位置にはいない
  まずその名家とやら共々、自分達の名を明かすのが礼儀ではないか?
  先程我々に対して行った強制的な停泊への誘導は、ここにはびこる悪辣な空賊のそれと変わらぬ様だが?」

同じ交渉の位置に立ったとしても、相手は偽者の商人である以上、正々堂々と最後まで話は続きはしない
故に商益とは別の…【軍人】としての立場で同じ交渉の土俵に立つ
リブロが交渉役に選ばれたのはそれが狙いでもあり、臨まれたように彼女もこの場を打って出る
本来ならその矛盾を早々に突き出し、即殲滅に進みたい彼女ではある
だが、レティーシアのある意図によりそれは今は封じられていた

 「これはこれは、軍人と思しき人が船に乗船しているとは? 
  唯の商船と思いましたが、何か思った以上のものでも積んでいるんでしょうかね?」
 「私は友人としての縁で乗っているだけだ。身の程を明かさぬ輩に詮索されるいわれはない!
  それとも……お前達に積荷の内容を明かさねばならぬ程の権限があるとでも言いたいのか?
  その場合は、しかるべき証が船に掲げられるべきだと思うが、お前達にそれは見受けられない
  お前達が言った通りの者か、それとも悪辣な俗物か……まずそこを証明してもらわないとな」
 「貴様!誰に向かってその口を!」

激昂した護衛の男の一人が身を乗り出す
が、その殺気を受けてリブロの前に立ちはだかるセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)に気圧され
大人しく交渉役の男の後ろに引き下がった
 
回りくどいのは重々承知だ
だがまずは前置きを長くして、なるべく全ての元凶である【私掠船免状】を登場を長引かせる
その為に、彼らの繕った体裁の矛盾を細かく指摘する手段に出ることをリブロは選択する

もちろん、力でも負けないと言う主張も忘れない、セフィーはその容姿も含め、それに適役だった
しかもこちらの交渉台に立っているのは、ダリルがいるとはいえ基本女3人
この組み合わせで巧妙に力を示せば、向こうはこちらがどういう一団なのか読みにくくなる

稼いでいる僅かな時間の中でレティーシア達は時を待っている

本人の口から【私掠船免状】の真偽を暴くのは簡単だが
このままだと現行犯的に問い正しても、入手先を含め誤魔化される可能性がある
必要なのは偽造技術側とのパイプの有無、そしてその明確な証拠
今必死にそれを追って貰っている……作戦通りなら、そろそろ結果の連絡が来るはずだ

高度な頭脳戦…と言っても所詮お互いの【化かし合い】
長期戦すぎるとその違和感に警戒を始める恐れもある……緊張感のある場が続く中
ダリルの通信機に待ち望んだ通信連絡が入った

 『こちら世 羅儀!叶 白竜と共に印章偽造のアジトを発見、制圧を完了!
  印の偽造の痕跡も見つけました。すぐに画像データーを送ります!』


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場所は変わって、同時刻より少し時間は遡る

町の一角の中堅工場を思わせる廃屋にて、銃撃戦が行われていた

 「おかしいなぁ。護衛は抑えて技術者だけと思っていたのに、何か手ごわいし……」

積荷が重なるコンテナの影に隠れながら世 羅儀(せい・らぎ)はぼやく
応戦しようにも、姿を見せると障壁代わりの傍らのテーブルがたちまち蜂の巣になり動けない
手にした銃【怯懦のカーマイン】の具合を確認しながら叶 白竜(よう・ぱいろん)が答えた

 「素人だろうがそれなりの武装を与えればやっかいなんですよ
  火事場の何とやら…とか、やけっぱちって言葉知ってるでしょう?」
 「ごもっともですけどねっ!ああもうこの程度の相手に構ってられないのに!」

活路を見出すべく世が廃屋を見渡す
みれば天井の梁が銃撃の振動で落ちそうになっている、その少し先に詰まれた木箱のコンテナの塊
それぞれを見て、叶に視線を送る。察した叶が頷いた

 「派手に行きましょう!でも中身は念のため壊さないでくださいね!」
 「また無茶なハードルを!」

言いながら世が手の銃【孤影のカーマイン】で天井を打ち抜く
バランスを崩して梁が木のコンテナに激突し、派手に崩れはじめる
その光景を見ながら最大の力で【サイコキネシス】を発動させた

 「うおおおおおおおおおおお!」

異能の力で操られた木箱が、奥の組織作業員に襲い掛かる
多くの人間が巻き込まれる中、逃げ出そうとする数人の頭上に回りこんだ叶が飛び掛る
そのまま足の【ファイアーヒール】が火を噴いた

電光石火の怒涛の轟音の中……全てを終えた二人が立ち上がる
瓦礫のように高く不自然に積みあがった木箱達の僅かに空いた安全地帯に彼らはいた

 「……言う方も随分無茶しますね。着地場所ちゃんと確認してたんですか?」
 「もちろん、世 羅儀ならそれ位確保してくれると確信してましたから」

飄々とした叶の物言いに溜息をつき、静寂の中改めて世も部屋を調べることにする
案の定、木箱からは美術品が出てきた……それを手に取り調べてみる。

 「いくつかは盗難届けのあるものですね、基本は盗品の売買が主流だったみたいだ」
 「……だがこっちには偽物もありますよ、盗んだものをレプリカにして売りさばく、か
  なるほど……印の偽造もそれの副産物と言うわけでしたか」
 「でも、これじゃ印章にかかわるものを探すのも一苦労じゃ」
 「いや、問題ありませんよ。偽造用の工具はそんなに多くないようです……」

奥の工場の工具を見ながら叶が答える
ひとつひとつにアタリをつけ、そのひとつに【サイコメトリ】を発動させた

 「……これだ。近くに試作品もあるようです。
  レプリカを発見次第、連絡を取ってください。向こうもすでに交渉の最中ですから!」


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 「成る程、【ツァンダ家の私掠船免状】か……確かにその印は見たことがある」

ダリルの合図で叶達の行動の成功を確認し、すぐさまリブロは免状を出させる方向に話を展開させると
向こうも長期戦は不利と思ったのか、すんなりと伝家の宝刀とばかりにそれを掲げてきた

 「これで信用して頂けましたでしょうか?
  今後有益な貿易のためにも、こちらが必要とする物資を提供してもらいたいのです」

自分達に流れがあると踏んだ交渉係がここぞとばかりに強気に出てくのがわかった
だがこちらも機はそろった。いつまでも長く茶番を続ける必要などないのだ
反撃の狼煙とばかりにリブロにのみ任せていたセフィーが口を開く

 「……ところで知ってる?ついさっきタシガンで偽造品を売りさばく闇組織が摘発されたって。
  よく考えれば今の時期、ツァンダ家の免状を出す理由がわからないのよね?
  ちなみにあたしも持ってるのよ【私掠船免状】ほらこれ
  【ヴュルテンベルク連邦共和帝国】拝領のものだけど、これ比べると随分お粗末なものねぇ?
  ひょっとして……偽物じゃない、これ?」

彼女の話の内容と出された別の【私掠船免状】の姿に一変して男達の空気が変わる

ただ偽物か疑うだけなら、ある程度はぐらかせる物であろうが、明らかに闇組織の摘発が動揺を誘っている様だ
見れば護衛の一人がさり気なく情報の確認を行っている様だ
それでもここまで進んだ流れを崩すわけにもいかないのか、交渉役の男は歪んだ笑みで言葉を返してくる

 「な、何を良くわからない事を……あまりにごねるのであれば、反抗行為と判断しますよ!
  港を仕切るツァンダ家の名の下、有意義に商売を続けたいのであれば……」
 「じゃ、その名のあるツァンダ家の方に直々に出てもらいましょうか?」
 「な……何をわけのわからない事を……」

未だ笑い続けていた男の顔が、みるみる固まっていく
リブロ、そしてセフィーの前にレティーシアが立ち、下ろしていた髪をいつもの様に後ろに束ねて髪留めで止めた
その面影に空賊側の数人がようやく事態を飲み込んだらしく、いっせいに青ざめた

 「レティーシア・クロカス。故あってツァンダ家を取り仕切らせて頂いております
  私掠の勅命を請ける程に、我がツァンダ家に縁があるのならご存知……と思いましたが?
  念のため、印章を確認させていただきましょうか?こちらとも……ね?」

彼女の手には、先ほど叶から送られた偽造工作機の金型から取った印章のデーター画像があった

 「貴様!はめやがったなぁっ!」

男の背後に控えていた護衛の女空賊が緊張に耐え切れずに、怒号と共にレティーシアに襲い掛かる
ガッキィィィン!という音と共に傍らのセフィーが剣を受け止めた

 「さっきの続きだけど……そういうわけであたしも私掠OKなのよ
  あんた達のと違って本物の連合印章入りのね。
  さあ、どうする?今ならお互い血を流さずに船と積荷を失うだけで済むけど!」

剣を押し戻し、白狼の毛皮の外套を翻し女空賊を挑発する

 「狼を怒らせると痛い目だけじゃ済まないわよ…?」

その光景を見て交渉役の男も交渉決裂と判断し、懐から銃を抜き出す
だがそれより遥か先に、リブロの影に控えていたレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)
偽りの【私掠船免状】ごと一刀両断に男を斬り捨てた

 「オール・ハイル・リブロっ!」

彼女の声が合図となり【交渉決裂】の合図として赤色の信号弾が船外に発射される
それが戦いの合図となり、途端に船内&外共々怒号と喚声が響き渡りはじめた

斬られた交渉役の男の姿を皮切りに
背水の陣のごとき、ラウンジにいた空賊が各々の武装を抜き放つ
あるものは襲い掛かり、またあるものは退路を取るべく出口に殺到するが
レノアが間髪入れずに対応せんと【ダッシュローラー】で疾走し
すれ違いざまに剣撃を浴びせながら退路を断つべく立ち塞がった

 「くそ!なら!せめてツァンダの頭を!」

逆に頭を潰さんと空賊3人がレティーシアめがけて襲い掛かってきたが
彼女の目の前に迫る凶刃をティー・ティー(てぃー・てぃー)の【無光剣】が全て受け止めた

 「大人しく投降すれば痛い目に会わずに済みますよ?
  抵抗すればその分、罪が重くなると思って下さい」
 「今更そっちから仲間に攻撃しておいて何をっ!なめるな小娘!!」
 「抵抗しますか…残念です」

男の一人の返答を受け、彼女の【歴戦の武術】が空賊3人に炸裂し、それぞれが大勢を崩す

 「今です!ウェルさん!!」
 「承知した!!ここからが本番だ!!」

物陰に待機していたマクスウェル・ウォーバーグ(まくすうぇる・うぉーばーぐ)の二丁の銃弾が炸裂し
空賊達の手から武装が弾きあげられた



 「おっと、何処へ行く気だい…?」

また強引に出口から脱出を図る連中の前にオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)が立ち塞がる

 「生憎と俺は……慈悲なんてねぇからな、諦めな!」
 「図に乗るな女傭兵!」
 「そりゃあんたも同じだろ!?賊も傭兵も戦えば同じだってな」

一人の女空賊が激高し、オルフィナと相対し火花が散る!
この重要な場にいる事を許されただけでなく、この状況で臆さず切り込むあたり実力者らしく
猛烈な【バトルアックス】の連撃を全力でオルフィナの【バスタードソード】が受け止める

 「やるじゃねぇか!…だけどお前は俺には勝てないぜ!何故なら!」
 「!?消え……うっひゃぁぁぁ!?」

隙をついて空賊の目の前から彼女の姿が消える、予想を越えた動きに戸惑った瞬間
優しく胸を触る感触を感じ、女空賊は素っ頓狂な声を上げた

 「お前が女だからだ……お?良いモンもってんなお前、それだけ負けを認めてやろっか?」
 「ふ、ふざけるなこの変態っ!!」

背後から胸を触るオルフィナを必死で振りほどこうとした女空賊のバランスが崩れる

 「安心しな、慈悲がないってのは命の事じゃねぇからさ。後でトコトン泣いて喜ぶ程可愛がってやるよ」

そんなオルフィナの言葉とともに【ブラインドナイブス】が至近距離で炸裂した!


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ラウンジでの乱戦を引き金に、小型艇を見張っていた空賊も事態を察し
ある者は母船への退避を、そしてある者はラウンジへ仲間の救出をしに動き出す

それらの対応に船内で警戒していたルカルカ・ルー(るかるか・るー)達も行動を開始した

 「ダリルから戦闘の連絡があった!各自応戦の準備よろしく!
  セレン!デッキ側の対応よろしく」
 『オッケ!敵影を確認!ずっと待ってたのよ〜派手に行くわよ!』
 「ダリル!レティーシアに確認!敵の船、落としてもいいかなっ?」
 『問題ない、彼女は任せろ、じきラウンジの鎮圧も完了する、俺もすぐに後を追う!』
 「わかった!ちょっち行って来る。みんなは下がるか自衛するかしてて!」

通信を切り、デッキから離れる小型飛空艇目指して走りながら【ベルフラマント】を深く羽織る
すぐに効果で姿が消え、死角から攻撃された空賊が飛空艇からデッキに放り出された
奪った小型飛空艇を空賊母船に向け、スロットルを全開に捻りながらルカルカ・ルーが叫んだ

 「さっさと敵の船を落とす!いっけぇぇぇぇぇ!!」



その姿を窓から見ながらセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は廊下を疾走していた
その横を弾幕を掻い潜りながらセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が追走する

 「セレン、追撃の数が増してるけど平気?数は5人……ギリギリの数ね」
 「大丈夫!つまんない交渉してる間に船の構造は十分把握したから!
  二手に分かれて例のポイントに誘導する!3人お願い」
 「いいですけど……多分あなたの……」

セレアナの言葉が終わる前に、セレンフィリティは移動速度そのままに後方を向いて追跡者を挑発する

 「ちょっと!あたし達相手にその程度なんてどういう神経してるのかしら!?
  いいモノ持ってるのに腕がそれじゃ残念ね!きっと○○○の○も■◆なんじゃない?
  見せかけの○◆▼△なんてガッカリだわ、この変態!!」
 『……テメェが言うなこの露出狂!!』

途端に追いかけていた空賊達が顔を真っ赤にして声をそろえて怒鳴り返す
そのまま、戦力を分断するべく二手に別れたセレンフィリティ達を追いかけていく
……残念な事に、セレアナの側には誰も後を追わなかったのだが

 「ちょっ!?なんで全員あたしばっかり追いかけるのよ〜!!?」

奥に消えていくセレンフィリティ達一行を見送り、セレアナが呟く

 「……そりゃ、ちょっと言葉が酷いからじゃない?」

まぁそう簡単にやれれるパートナーじゃないのはわかっている
後は予定の戦いやすい場所で合流し、迎撃すればいいだけだ
あれだけ頭に血が上っていたら、落とすのも容易
きっとそんな彼らに彼女はもっと酷い言葉を放つに違いない

 「そうね……多分こんな感じかしら?
 『あはは! こんなショボイ銃撃をマトモに食らうなんて、あんたらマジで空賊? 
  ていうかショボイ紙切れに頼るからこの程度か!』………………間違いないわね」

台詞すら予想出来るほどのパートナーとの長い付き合いを呆れるように実感し、セレアナは走り出す
そして、彼女の予想の言葉は一寸違わず数分後、セレンフィリティの口から放たれる事になるのだった