校長室
ハードコアアンダーグラウンド
リアクション公開中!
『さぁ先程は場外で激戦が繰り広げられたが、リング上でも激戦が繰り広げられているわ!』 『場外ではまだ立ち直れていない選手が多くいるからな。ベルトを狙うのは今がチャンスだろう』 「貰ったぁ!」 高速のブレーンバスターで、ルイを投げるとアキュートは首を掻っ切るポーズを取り、コーナーへと駆け上がる。 コーナートップ、天井を両手で指さし、ルイにダイビングヘッドバッドを敢行する。 「させませんよ!」 ルイが起き上がり、アキュートが着地する場所には何もない。 「ぐおぉぉぉぉ……!」 頭を押さえ痛がるアキュート。するとルイが飛び上がり、アキュートの延髄に一撃を叩きこむ。 「ぐぅッ!?」 重い一撃に、アキュートが膝をついた瞬間、顔面にルイの膝が突き刺さった。 『筋肉から閃光走る! シャイニングウィザードォーッ! そのままルイ選手、梯子に手をかけた!』 リング中央に建てられた梯子を、ルイが上る。頂上まであと少し。ベルトは手を伸ばせば届く位置にある。 「そこまで慌てなくてもいいんじゃないか?」 「ぬっ!?」 ルイの頬に、鈍い衝撃が走る。前には息を切らせたアキュートが居た。 「面白い! ですが、ここで引き下がりませんよ!」 お返しとばかりにルイがアキュートの頬を張る。そしてアキュートの頭を、脇に抱えた。 『おっと、このまま雪崩式のブレーンバスターか!? アキュート選手堪える!』 『梯子上の高さから落とされたらひとたまりもないであろうな。ここは堪えたいところだろう』 「……く……ククククク……」 だが、アキュートは笑っていた。 「笑うとは余裕ですね! だが、次も耐えられますか!?」 「耐える必要なんてない」 そう言うと、アキュートはルイの身体を抱え、側方に体重を傾ける。つられて梯子が傾き、バランスを崩し、 「ぬ!? うぉッ!?」 そのまま倒れる。完全に倒れきる前に、梯子はロープで止められる。その衝撃で、頂上にいた二人は場外へと投げ出される。その先には、 「やれやれ、人使いが荒い奴よ……」 組み立てたテーブルと、それを集めていたウーマがいた。 「しかし、これほどまでにテーブルを集めてどうすギョッ!?」 ルイとアキュートが、テーブルへと突っ込んできた。その衝撃で全てのテーブルが盛大に破壊された。 衝撃で倒れた二人は起き上がれない――否、アキュートが立ち上がる。 歓声を浴びながらアキュートは満足げに笑っていた。が、笑顔のまま、前のめりに倒れ込んだ。今度はそのまま起き上がる事は無かった。 『テーブルの墓場にルイ選手とアキュート選手沈んだぁーッ!』 『あれはしばらく起き上がれないだろう! リング上はチャンスだぞ!』 『おっと、その隙にセシル選手が梯子を立て直し、悠々と上っていく……おっと!? ここでドラゴ選手が梯子に梯子を立てかけた!? ここからどうする!?』 クラウディアが持参した梯子を、梯子へ立てかけると、その梯子を駆け上がった。 そしてまだ上っている途中のセシルへと向かい、飛ぶ。身体を回転させ、ニールキックを放った。 落下するセシルとクラウディア。受け身を取ったクラウディアと違い、ニールキックのダメージもあるセシルは起き上がれない。 「フエゴ・トルナード!」 クラウディアは叫ぶとセシルを引き起こし、パワーボムの体勢に入る。だが、普通のパワーボムではない。セシルの足の間に彼女の腕をクロスさせて通すと、クラウディアはその腕を掴んで抱え上げた。 このまま落とすとクロスファイヤーと呼ばれるボム系の技であるが、クラウディアはその場で旋回をし、そのままリングへ叩きつけた。受け身が取れない上、旋回で勢いをつけられ、更にタイミングを外された。セシルは大の字になり、起き上がれない。 「ダイヤル回すよ! まじかる☆916!」 直後、クラウディアの顔面を九条の619が捕らえる。吹き飛ばされたクラウディアを九条が引き起こすと、ブレーンバスターの体勢で捕らえる。 「まじかる☆スリーアミーゴス!」 そう九条が叫ぶと、高速のブレーンバスターでクラウディアを叩きつけ、離さず身体を捻り立ち上がり、再び高速ブレーンバスター。3度、リングへ叩きつけられたクラウディアも仰向けになり起き上がれない。 そのまま、梯子を中段まで上ると、梯子を背にし、飛んだ。空中で身を縮め、振りかかる前に身体を広げるフロッグスプラッシュ。 「これでろざりぃぬは勝利を頂くのよぉッ!?」 起き上がった九条を待ち受けていたのは、毒霧。顔が、視界がピンクに染まる。 「頂くのは美羽だよ!」 口元をピンクに染めた美羽が駆ける。そして、九条の顔面にシャイニングウィザードを叩きこんだ。 虚を突かれ、九条が仰向けに倒れ込む。 「チャンスだよ美羽!」 場外からコハクが叫ぶ。今、リングで立っているのは美羽だけだ。 後は梯子を上り、ベルトを取るだけ。それで終わりだが、 「美羽、危ない!」 コハクが叫ぶ。美羽が振り返ると、そこに立っていたカンナが毒霧を噴射した。 「うわっ!?」 思わず膝を着く美羽。カンナは見栄を切ると、美羽の側頭部を蹴りぬき、意識を刈り取った。 『おぉっと!? 場外からろざりぃぬ選手のセコンドのカンナが美羽選手を蹴りぬいた!』 『カンナのバズソーは最新式の丸ノコ。あれを食らっては簡単に起き上がれないだろうね』 『選手達は倒れたまま起き上がらない――おっと!? 場外から翼選手が復活して梯子に駆け寄る!』 『翼選手だけではない。極道選手も後を追っている』 肩で息をしながら翼が梯子を上る。その対面では、青白磁が後を追っていた。 「そう簡単にはやらせんわ!」 拳で翼の頭を殴るり、よろける彼女の頭を抱え、青白磁が力を籠めて雪崩式ブレーンバスターを狙う。 しかし翼はそれを踏ん張ると、青白磁の脇を殴った。 「あぐッ!」 痛みに手を放すと、翼は少し梯子を上り、飛び上がった。身体を捻ると頭を足で挟み肩車のような格好になると、勢いをつけてのけ反った。 「おぉぉッ!?」 勢いに堪えられず、青白磁の上体は大きくのけ反り、梯子から手を放すとそのまま顔面からリングへと落下していった。 『なんと梯子上からのリバースフランケンシュタイナー!』 『あの高さからでは受け身をとってもダメージは大きい! これは翼選手がチャンスである!』 回転し着地すると、翼は再度梯子を駆け上る。 「くっ!」 身体を引き摺りながら青白磁は苦痛に耐え苦し紛れに梯子を倒すが、同時に翼が飛び上がり、ベルトを掴む。 足場の無い状態で、翼はベルトにぶら下がると繋がっているワイヤーを外す。 震える手で、少々時間はかかりながらも、ワイヤーからベルトが外れた。 支えがなくなった翼は、そのまま落下すると背中からリングに着地する。 一瞬息が止まりつつも、翼は起き上がり高々とベルトを掲げた。 ――ゴングが、鳴り響いた。 『ここでゴング! 勝者天野翼選手! ベルトを防衛したわよ!』 『最後の最後で経験が生きたのだろう。だがどの選手もチャンスはあったと俺は思うぞ』 その時――ガシャン、とガラスの割れる効果音が鳴り響く。 それに続き、入場ゲートに現れたのはシン・クーリッジ(しん・くーりっじ)。 『おっと!? いきなりあらわれたのは一体何者!?』 『あれ……何しに来たんだろ?』 学人が首を傾げる。彼にも解っていないらしい。 『ふ、ふふふ……』 そんな中、シンが無線マイクのスイッチを入れ、口を開く。 『――クーリッジ伝三章十六節曰く』 シンが、一瞬間を置くと、がっくりと肩を落とした。 『寝過ごしちまったんだぜ……』 最後の最後で登場したオチ要員だった。