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お花見その3(ふたりだけの世界・例外あり)

「おーい、アゾート! あんたも花見に来てたのか」
「ん? あぁ、キミはこの間の、えっと……」
ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)。ヴァイスでいいぜ」
「そっか、ヴァイスくんもお花見?」
 ヴァイスとセリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)の持つ大量の荷物を見ながら、アゾート・ワルプルギスは笑顔で首を傾ける。
 荷物の中身は、ほとんどヴァイスの手作りの弁当だ。
「あぁ。いつも花見の時期はバイトとかで忙しくて、自分が客になる事なんかめったになかったからな。ついはしゃぎすぎて、弁当作りすぎちまったんだ。そうだ」
 ぽん、と手を叩く。
「よかったらアゾートも一緒に弁当食わないか?」
「え!? いいの!」
「いやむしろこんだけの量だから食べてくれると助かるぜ」
「わーい、じゃあお邪魔しまーす」
 桜のよく見える場所を確保し、いそいそと敷物を広げる3人。
「紫色の桜って、不思議なカンジだねえ」
「あぁ。けどこれはこれで面白いかな」
 ヴァイスの脳裏に、幼い頃の思い出が蘇る。
 兄貴がこっそり連れて行ってくれた花見。
 ネオンに照らされたあの夜の桜も、紫色に見えたっけ……
「おい、ヴァイス、大丈夫か」
「え……?」
 セリカに言われるまで、気づかなかった。
 自分が、涙を流していることに。
 身体の奥が、不思議に痺れていることに。
「んぅ……セリカ、見るんじゃねえ」
「いや、けど……わっ」
 文句を言おうとしたセリカの言葉が止まった。
 セリカの胸に、ヴァイスが飛びこんできたから。
 そのまま、顔をぴたりと胸につけたまま動かない。
「ヴァイス……」
「ヴァイスくん……」
「……んだよ、見るなよ」
 拗ねたように恥じらうように、自分の顔を隠すヴァイス。
 セリカとアゾートの視線を感じ、身体が熱くなる。
「いいんだ」
「ん?」
 セリカの手が、ヴァイスの頭に乗せられる。
「俺になら、いくら甘えたって…… いや、甘えて欲しい」
 セリカのためにも。
 それを叶えられずに死んだ彼のためにも。