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リアクション
第5章 訓練場で魔道具の使用体験Story2
「リオン、他の生徒と一緒に勉強するとかしないのか?」
非社交的な禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)が珍しく、2時間目の授業で他の者とチームを組んだのだが…。
術の発動が成功した感覚を忘れないうちに、いろいろと試したいことがあると言い出したのだ。
「気が向いたらな」
「(実戦に出たらどうするつもりだ!?)」
もしや非社交的なリオンのために、他の者とのパイプ役を務めさせられるのか?と嫌な予感がした佐野 和輝(さの・かずき)は嘆息する。
「(今まで誰かリオンの相手をしてくれそうなヤツがいただろうか…)」
少しは改善したようにも見えるが、彼女の口の悪さに対応できる人がいるか、該当する人物がいるか記憶の中を探してみる。
「(イルミンの目つきのキツイ人はどうだ?面度見よさそうなか感じがしたんだが…)」
グラルダの口の悪さはリオンと甲乙つけがたいだろうが、非社交的というわけでもなさそうだから、リオンと仲良くしてもらえないか考える。
「(リオンと違ってすごく元気な感じの魔道書もいたな。同じ魔道書だし、話し相手になってくれそうだな…)」
仲良くしてもらえそうな候補として、テスタメントにも目をつける。
即席のチームとはいえ、リオンとまともに会話出来る者たちがから、非社交的な性格を社交的にしていくためには丁度よいだろう。
「和輝、何を考え込んでいる?」
「いや、別に…」
怪しむ彼女の眼差しに、和輝は顔を背けてしまう。
「ふむ…、まぁいい。つまらない雑念があると、術に影響しそうだからな。あまり話しかけないでほしい」
「(はぁ…。今日のところは諦めるか)」
「そうだ、和輝。あの授業についてまとめたノートを、私の荷物から出してくれないか」
「えっと……、これか?」
リングファイルをリオンに渡してやる。
「これを見ながら、実技を行ってみよう。和輝、このページを開いたまま持っていてくれ」
「あぁ、分かった」
「腐を携えし天水よ。彼の者を蹂躙せよ」
リオンは和輝に持たせているファイルをちらりと見て、感情コントロールについての内容を確認する。
対象に対する不の感情を消し去り、雨雲が存在しないはずの空間で、紫色の酸の雨をトースターに憑いた魔性に降らせる。
簡単に祓われないように、魔性自身の魔法攻撃を受け付けにくくするボディ部分を溶かされる。
「力ある光よ。彼等を薙ぎ払え」
光の嵐がトースターに侵入し、魔性の身を守っている魔法防御力を低下させた部分に、魔を祓う光が触れたとたん…。
相手は“ァアーーーッ!!”と、本気の悲鳴を上げてしまう。
「今の声って何!?」
難しいことを話していそう…と思い、石の上に座っていたアニス・パラス(あにす・ぱらす)がパッと立ち上がる。
「あぁっ、魔性さん大丈夫!?」
パンを焼く部分から煙を吐き出している者に、アニスが駆け寄る。
「すゲー、痛いヨー…」
「むぅう〜っ、リオン!」
無抵抗なのにやりすぎだよっと頬を膨らませる。
「すまぬ…、少し力が入りすぎてしまったようだ。うーむ…、効力を抑えるとなると難しいな」
「いっぱい練習しなきゃだね」
「実技の時と同じように行いたかったが。あいにく護衛がいなかったからな…」
「あれは祓う必要があった者だったし…。実戦のようにと要望を出さない限り、ほぼ無抵抗なのしれないな」
「―…うーむ、そういうことなのか。気の良い相手と知ってはいたが、どのような対応をするのか、まったく分からなかったのだ」
「魔性さん、怪我は治るの?」
「これくらいなラ、しばらく経てばナッ」
ボディを溶かされきったわけでもないし、物につけないほど力を失ったわけでもない様子だ。
「ところでリオン。護衛って…、俺じゃなくて誰でもいいってことか?」
「誰でもというか…。馴れ馴れしいヤツや、学ぶ気のないものは無理だな」
「(まぁ、リオンの性格から考えると、いきなり距離を縮めようとする相手は厳しいか)」
リオンの態度を和輝なりに分析してみると、昔のような非社交的な感じとは少し違うか?と思い、少しずつだが改善してきているのかもしれない。
「(ちょっと待て。馴れ馴れしいって、どんな感じのやつだ!?)」
大人しそうな相手でも、リオンにとってはそれに該当するのか?と考えてしまい、また悩みが1つ増えてしまった。
「……そういえば、同じ退魔ならアニスの陰陽とリオンの祓魔の合体技とか出来ないかな?」
「ふむ、エクソシストと陰陽師の連携か」
「……おお〜、考え出したら面白そうだよ和輝♪」
「陰陽術と祓魔の合せ技?いや、まあ、同じ退魔の術だろうけど……アニスが考えるように上手くいくか?まあいい、時間を見て教師に聞いてみるか」
「さっそくリオンと相談だ〜♪」
和輝が教師を呼びにいこうとすると、すでにノリノリのアニスは、オリジナルの術を作ろうとリオンと相談を始めようとする。
「そうだな、気分転換に協力してやろう。案外、面白い術が完成するやもしれんぞ?」
「待て待て!考えなしに試そうとするな!ちょっ、リオンも協力するのかよ!?」
彼は逆再生したかのようにサッと戻り、アニスたちをとめようと声を上げる。
「練習相手ヨロシクね〜♪」
近くで話そうとアニスはしゃがみこみ、リオンの相手をしてくれた魔性と同じ器に憑いた者に話しかける。
「ん?エリザベートが言ってたアイデア術を試すのかヨ?」
「ううん、違うよ。あ、そうそう。この子はねぇ、式神の術でキュゥべえのぬいぐるみを式神化したQBっていうの。中身は鬼神(?)が入ってて、いわば君たちの同類なのだよ♪」
「そレ、西洋と違くないカ?」
「訳がわからないよ」
違う…とQBもかぶりを振る。
「ほら、こうやってしゃべれたり(?)するしね♪」
2匹が“違う、違う!!”と、全力で否定しているのにも関わらず、アニスは無邪気に話す。
「って……アニスは何で魔性と仲良くなってるんだよ。―…いや、あれは仲良くなろうとしているのか?いやいやいやっ、それなら人と仲良してくれって!」
人以外の相手とは仲良くなれるのに、自分以外の人は無理ってどういうことだ!と頭を抱えて悩む。
アニスとリオンが試してみた“エクソシストと陰陽師の連携”の結果がどうなったかっというと…。
魔性に協力してもらったが、全て不発に終わってしまった。
「教官、質問がある。理論的には魔に属する者は迷彩のような能力を持っているといっていいのかな?つまり目に見えないなどの感覚的、ということだけど」
「はい、他のスキルなどでは見ることが出来ないですぅ〜」
ペンダントの効力を再確認しようと質問を投げる相沢 洋(あいざわ・ひろし)に、エリザベートが振り返り答える。
「―…洋さん、私は教官ではないですよぉ。もちろんラスコット先生も教官じゃないですぅ〜」
なぜそう呼ぶのか不思議に思い首をかしげる。
一方、講師のほうは場内の見回り中だ。
「なんというか…、こちらの学校のクセというべきかな。訓練生を育成しているなら、それも当てはまるのではと思ったんだ」
「そうでしたかぁ〜。教官と呼ばれて、ちょっとビックリしましたぁ〜。では私は、他の生徒の様子を見に行きますねぇ」
ふりふりと片手を振り、エリザベートも他の生徒のところへ行ってしまった。
「わらわたちに、本の使い方を教えてくれませんか?」
乃木坂 みと(のぎさか・みと)が通りかかったテスタメントに声をかける。
「章が記されていませんね?そのままだと魔性を祓うのは厳しいですよ…。扱い方ですが、ペンダントと同じく感情コントロールが必要なのです。詠唱ワードは術のイメージと異ならない程度に、考えたもので大丈夫ですね」
「分かりました、ありがとうございます」
軽く礼を言うとテスタメントはパートナーの元へ戻る。
「前回の実験でペンダントのエレメンタルケイジに、この宝石、アークソウルを装填することで地球人以外の感覚を感じられるが魔性には通じないとあるか。洋孝、迷彩塗装作動、戦闘用イコプラも起動、そして魔性のそばにいてくれ」
魔性に憑かれていない者として、宝石が洋孝に反応するのは当然だが、逆に魔性の反応がないはずだ。
「えー。標的役かよー」
相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)は眉をハの字にし、不満げな声を上げた。
「漢なラ、的にならければいけない時もあル。たとエ、ズタボロになろうともナッ」
「ぇええー、男の子の役割って、損で酷いことばかりなの!?ヤダよっ。そんな時は全力でスルーしたいよ!」
潔く的になったらいいと言われ、洋孝はイヤイヤするようにぶんぶんとかぶりを振る。
「むぅ、いいけど…迷彩塗装展開、イコプラ起動!こっちからも攻撃するよー」
いつでも的になる、という意味ではないが、洋のために協力する。
「みと、前方、洋孝、並びに随伴イコプラ部隊だ。イコプラの方は壊していい。洋孝には少々手加減。魔性の方にはダメージを与えるな」
「そっか。少々なら…って、いいわけないよっ。じっちゃん、どんだけハバネロなんだよ!」
「何か聞こえたようだけど。誰がハバネロだって…?」
「じっちゃん以外に誰がいるのさ」
「やれやれ。魔道具を使う授業でなければ、少々から変更するところだったな」
ペンダントに宝石を入れ、フッと不適な笑みを浮かべる。
「うわぁんっ」
「ちょっとしたパラミタジョークだ」
「それってブラックジョークの間違いじゃないの!?」
「お喋りはそこまでだ。命中しないように、ちゃんと避けろ」
理不尽な洋の言葉に、洋孝は自分にも当てない努力をして!と心の中で叫んだ。
「ただ壊されて終わりなのはいやだからねっ。ほらほら!ビットユニット!アターック!」
やられる前にやろうと、迷彩塗装しておいたイコプラでBB弾を発射する。
「(むっ…イコプラには反応しないようだ)」
弾が洋に届く寸前、ぎりぎりでわかせたが、宝石はイコプラに対しては反応を示さないようだ。
炊飯器に憑いた魔性は反撃する様子を見えず、ほぼ傍観している。
「索敵能力を強化、洋孝が好きなロボットアニメの必殺技ですか。理論的には合体って危険な技なんですけど…って聞かないですよね。一応、対爆用にパワードスーツを着てきましたが」
みとは合体イコール、破壊されて爆発なオチもあるのでは…と思い、巻き込まれないように着てきたようだ。
「砲撃砲台ですか。理論的に索敵能力と組み合わせれば砲台であれば理論上可能ですね。もっとも防衛戦力がないのが問題ですが」
用意するのが厳しいし、実戦でエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)の要望が認められるかは分からない。
「魔力充填開始します」
「洋孝様、これより砲撃します。死なないでください。以上」
「げ…ばーちゃん。エリス、待て待て!その砲撃!暴発とかじゃないよね!」
滅されるんじゃという身の危険を感じた洋孝は顔面を蒼白させる。
「そは魔を払う書なり、そは魔を沈めたる書なり。我が力よ。我が手に集え。我が主の指し示す者を打ち払う力を示したまえ」
「我らは敵を裁く者なり。我らは魔を討つ者。我らは魔を払う者。魔力は我が手に宿れ、我が書に集え…」
みととエリスはハイリヒ・バイベルの効力を試そうと、洋がペンダントを向ける方角を見据える。
「宝石の反応が鈍くなってきたな。洋孝、あまり離れると試せないじゃないか」
「それってかなり近距離だと思うんだよね。おもいっきり直撃するし!」
「これも修練を積み、もっと遠くの者を探知するための訓練だ」
「(この…ハバネロ魔術士ーーーー!!!)」
直撃をくらってしまったが…。
幸い砲撃というほどの威力はなく、ほとんど痛みは感じないし、魔性も無傷だ。
「イコプラも無事だね!よかったー…」
大事な宝物を派手にぶっ壊されることなく、ほっと安堵の息をついた。
「やはり章の力が必要みたいです…」
無傷に近い洋孝を見てエリスは嘆息した。
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