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 レキが聞き込みで得た情報と北都やリアトリスによりもたらされた情報を突き合わせて、通りを歩きながら探偵アルバイト組は事件について考えていた。
「ねぇ、話が違うっていうことに対して、探偵としてどう考えてるの?」
 レキが尋ねて、チムチムも興味津々な目を向けた。
「チムチムも気になるアル」
 どうったってねーとセッカは考えあぐねるように、
「期待してるとこ悪いけど、あまり大したことは考えてないわ。噂と事実が食い違っていることを確かめられて収穫だったな、ってとこかな」
「でもよく分からないな。人を襲いそうにないっていう証言はいいけど、被害者はいるんだぜ? 実際に襲ってるんじゃないのか?」
 忍が、よく分からん、と首を捻った。
「そうね。その辺りのことを明らかにしないと、狙われてるかもしれないわたしたちは安心できないわけだ。頼りにしてるよ」
 レキと忍が頷く。
「任せてよ。二人には傷ひとつつけないよ」
「いざとなったらの逃走ルート確保は任せてもらうぜ」
 頼もしい返事の二人にうんうんと頷くセッカを眺めながら、アーティが「偉そうだなあ」とつぶやいた。そこに、
「あ、よかったよかった。特になにもないみたいね」
 おーいと声を上げるルカルカがダリルとともに近づいてきた。
「どうしたの? おびき寄せは上手くいった?」
 セッカの問いに、ルカルカがううんと首を横に振った。
「そっちの成果は上がってないけど、安否確認と、それと北都たちから情報もらってダリルが、仮説があるっていうから、そのお披露目」
 レキと忍がへえ、というような顔をした。
「あんまりいい意見出てなかったんだ。だから是非聞きたいな。ね、どんなの?」
「なんだか探偵っぽくて期待が持てそうだわ、こりゃ」
 本物の探偵を前にしたこの物言いに、セッカがむ、と眉を寄せた。「だって探偵っぽいことやってないじゃないですか、丸投げばっかで」とつぶやくアーティが睨まれる。
 期待の眼差しを浴びてダリルが口を開く。
「ルカが言うほど大げさなものじゃないんだが、まぁいい。単純な話だ」
「な、なんだってー!」
「…………」
 まだなにも言っていない。
「……なんのつもりだ、ルカ」
「驚き役が必要かなーって」
「いらん」
 にべもない。
 気を取りなおして、一つ咳払い。
「通り魔を行なっている者と、弟と妹のことを尋ねる兄が別人だ、というのが俺の考えだ」


 少し離れた通りでは、真人もまたダリルと同じ考えを口にしていた。
「別人だというのなら、簡単に説明がつきますね」
 縁が探していたマイトと合流し、マイトと汐月から、二人が通り魔と思しき男に遭遇した際の話を聞いての考えだった。
「別人というのは、先ほどの男と噂話の兄が、ということか?」
 マイトが真人に問うた。
「ええ。遭遇した相手が通り魔だと前提しての話ですけど、そう考えると弟と妹のことについて尋ねてこなかったのも簡単に説明がつきますよね」
「確かに……別になにも尋ねてこなかったから、噂と違うって思った」
 汐月は少し首を傾げて言った。
「じゃあ、弟と妹を探す兄は通り魔なんてやってないってことかな?」
「それはさすがに早計に過ぎるだろう」
「そうですね、今はまだなに一つ確証ある話もできません。犯人を捕まえでもしないと」
 縁にマイト、真人が口々にコメントするのを、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が興味深そうに聞いていた。
「ふむふむ、まぁ、犯人は一人に限らせて考えることもないもんなぁ」
 十年前から一緒に調査していましたよ、と言わんばかりの態度の裕輝はいつの間にやら加わっており、縁やマイトは、
「うーん、なんか怪しいよねぇ、マイトさん」
「怪しいな。まさかホシでもないだろうが」
 大っぴらな批評に裕輝は苦笑する。
「厳しいなぁ。事件の詳細を知りたい、っていう気持ちは同じだと思うんやけどな」
「知りたい、のではなく、解決したい、だがな」
 ま、それはともかく、と裕輝が、
「二人が会ったっちゅう犯人を追うのが、一番の近道かね。確証のない話重ねてもしゃあないもんな」