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魔剣スレイブオブフォーリンラブ

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魔剣スレイブオブフォーリンラブ

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「ククク……今頃、我が何をしているかと地上の者たちは考えを巡らせている頃だろう」

 シャンデラ宮殿の内部に入ったオーバーホールは、不敵な笑みを浮かべていた。

「はいはい、さっさと階段登りましょうね」

 しかし、パートナーの鳳美鈴は、あくまで素っ気ない返事をする。
 彼らは300階あるというシャンバラ宮殿を登っている最中であった。

「が、美鈴よ……先ほどから延々と階段を登ってばかりであろう? 多少は話でもして気を紛らわせないとやってらないのだよ」
「人に見つからないように移動するにはしょうがないでしょ? それとも、何? バトルでもしながら登りたいの?」
「そういう訳ではないが……」
「それよりオーバーホール? あなたの計画で本当に魔剣スレイブオブフォーリンラブは破壊できるの?」
「フフ……よくぞ聞いてくれたな。ああ、我がこの魔剣のシャンバラ教導団からちょろまかした最新装置を使って材質調査を行い、
硬度を確認したところ、成人男性が魔剣を振りかぶりながら高層ビルの屋上から飛び降り、地上にいる仲間の剣とぶつけ合えば破壊出来ると計算が出たのだ」
「それ、何回聞いてもイマイチ信用できないんだけど……」
「フフ……この世の真理というのはいつも凡人には想像も及ばないところにあるのだよ」
「ははは……」

 美鈴は乾いた笑い声をあげながら、パートナーと共に階段を登り続けていた。
 そして、永遠と登り続けること数時間――

「あ、ようやく屋上よ!」

 美鈴が指差す先には、シャンバラ宮殿の屋上へと通じる扉があった。

「……ハア、ハア。駄目だ、もう一歩も歩けない……美鈴、屋上まで運んでくれえ……」
「ったく! あと数メートルだってのに何をだらしない事言ってるの!」

 美鈴はそう言ってオーバーホールの臀部を蹴り上げる。

「……ッ! これが、我に神が与えた残酷な運命なのか……!」
「変な事言ってないでさっさと登りなさいっ!」

 再びの蹴りを恐れたオーバーホールは、一転して素早く階段を駆け上がる。

「……ククク、我は運命に打ち勝ったぞ!」

 シャンバラ宮殿、その最上部に降り立ったオーバーホールの前には、雄大な景色が広がっていた。

「わあ、凄い綺麗ね」

 空京市内、それを一望できる場所がここであった。が、しかし、という事はもちろんそれ相応の高さを伴っているという事でもあり……

「……俺、飛び降りるのやめた」

 屋上の縁に立ったオーバーホールは、米粒のような街の様子を眺め、体をぶるぶると震わせながら言った。

「うひゃーたしかにとんでもない高さだね、って! ここまで来たのに何を寝ぼけた事言ってるの!」
「そ、そういえば、自分が高所恐怖症だったことをすっかり忘れてた……」

 唇を青くしながら、オーバーホールがやっとのことで言葉を絞り出す。

 その様子を、恐ろしく醒めた目付きで美鈴が睨んでいた。

「あなたがここから飛び降りなかったら、新しいフォルダ13の中身を学校中にバラまくわよ……」
「そ、それだけはやめてください……」
「だったら! さっさと魔剣を振りかぶって縁に立ちなさい!」

 オーバーホールは仕方なく美鈴の命令に従い、屋上の縁へと立つ。

「な、なあ……10まで数えてから俺の背中を押してくれ」

「ったく、分かったわよ」

 美鈴は了解して数を数え始めた――

「1、2、3……」

「うわあ、怖い! 怖い! 怖すぎるぅっ!!!」

「4、5、10……」

「え? 5の次は6じゃ????」

 問答無用で、ドカンっとオーバーホールの背中が蹴り飛ばされた。