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冒険者の酒場クエスト

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冒険者の酒場クエスト

リアクション

 相沢 洋(あいざわ・ひろし)相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)が駆るシュトルム・ブラウ・イェーガーは、魂剛の後方数キロの位置を飛行形態で飛んでいた。
 魂剛が隕石に一撃を加えたのちに砲撃を加える手筈となっている。

「本当に大丈夫だろうな、クソガキ」

 洋は出撃前のことを思い出して不安になっていた。
 その原因は洋孝の精神状態である。

「洋孝、操縦スキルは持っているということですから信じてますけど。
 失敗したらネクロマンサーに転職してアンデッドにして使役し続けますからね」

 出撃前の格納庫。
 最終調整で慌ただしくなっている中、乃木坂 みと(のぎさか・みと)はシュトルム・ブラウ・イェーガーの横に立ち、操縦席で目を輝かせている洋孝にくぎを刺していた。

「うわー、データで見たのと同じだー。500年先の国軍ではS−01の異界対応能力を研究してS−03改が配備されていたかなー」

 だが、肝心の洋孝はまったく耳に入っていない様子でパネルをいじっている。

「火器管制にレーダー系統の基本は一緒だね。武装が反応弾とか対消滅ミサイルじゃないのが残念だけど……あいたっ」

 話を聞かない洋孝の頭に、みとのげんこつが落ちる。
 痛いよばっちゃん、と頭を抑える少年にもう一つ落ちた。

「褒美はマンガ肉に特製ステーキセットだ! 絶対に生きて帰るぞ!」

 不毛な無限連鎖のやりとりへ洋が声をかけると、涙を浮かべていた洋孝の様子が一変した。
 普段から陽気な少年ではあったが、それ以上にハイテンションとなったのである。

「マンガ肉に特製ステーキ! いいなー! 500年後では天然の肉は将校しか食えない貴重品だぜー! 肉! 肉! 肉!!」

 そんな浮ついた洋孝の状態は、隕石に接近している現在も続いていたのだった。
 心配ではあるが、間もなく先行した魂剛が隕石と当たる頃だ。

「洋孝! 火器管制システム確認しろ! ミサイルにレーザーバルカン! なんでもいい!」

 洋の不安とは裏腹に、命令と同時に武器が展開されて発射準備となる。
 そして、モニターを凝視していた洋孝が叫んだ。

「隕石と魂剛が接触! 砕けなかったけどかなり大きな傷がついてるよ」
「そこに集中して一斉射撃だ! かまわん、弾薬と銃身がぶっこわれるまで撃ち続けろ!」

 無数のミサイルが尾を引いて発射される。レーザーバルカンは冷却が間に合わないほどの連射に悲鳴をあげるが構わない。わずか数秒で撃ち尽くす。
 洋は隕石を映すモニターを睨むように見続けた。
 隕石を爆炎が包み、全体に伸びていたヒビが太くなっていく、そして大きく三つに割れた。

 ◇

 マグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)パワード・マグナとなり、リーシャ・メテオホルン(りーしゃ・めておほるん)を収納した。
 空を見上げると、かすかに光る点が大気にぼやけて輝いている。
 同じように御神楽 陽太(みかぐら・ようた)エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)イーグリット・アサルトから隕石を追っていた。
 エリシアの顔を照らすモニターでは、隕石の進路と速度が常に更新されていく。
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)シュヴェルト13から隕石の姿を見ていた。
 ダブルバズーカを握るマニピュレータに力がこもる。
 先行した魂剛とシュトルム・ブラウ・イェーガーの姿は既に遠く、レーダー上でしか確認できない。

「いよいよだ、俺たちの手に蒼木屋の未来がかかっている」

 内に秘めた闘志を静かに燃やすマグナは、イーグリット・アサルトとシュヴェルト13の方へと視線を向けた。

「蒼木屋はわたくしも昨年末にバイトしていた店。壊させるわけにはいきませんわ」
「環菜もこの件に関してはすごく心配しているみたいです。絶対に食い止めましょう」

 エリシアと陽太がそっと胸の内を吐き出す。

「蒼木屋が無くなったらオレも困るからな。ヴァイシャリーだと、素行不良がどうとかで学園が煩いし!」
「……すごく個人の事情だよね!」

 シリウスの本音にサビクが突っ込みを入れる。
 だが、蒼木屋を守ろうという皆の気持ちは本物だ。
 三機のイコンは互いを見て頷くと、頭上の凶星へと力強く飛び立った。

「相手は隕石、強大な質量をもった無慈悲な天災よ。私にはただ祈ることしかできないけれど、それでも言わせてもらうわ。……死なないでね」
「もちろんだ。隕石が落ちれば蒼木屋だけじゃない、他にも被害がでるだろう。守るべきものはたくさんある。死んだらそれも叶わなくなるからな」

 マグナがそう言って笑うと、リーシャも安心したように微笑んだ。
 先行した二機が成功した場合、隕石はおそらく分裂している。
 どのように割れるかというは実際に確認しないと分からない。
 相対速度から計算して、その後の迎撃は俺たちの役割が重要となる。
 マグナはぐっと拳を握った。

「たかが石ころが一つ。止めてみせる、いや……押し返してやる!!」

 そう声に出したとき、隕石についての情報が入ってきた。