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リアクション
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は空を見上げ、飛び立つ三機のイコンを見送っていた。
無意識に胸に当てていた手を握りしめる。
落下する隕石の膨大な熱量にどこまで効果があるか分からないが、三機には直前にそっとファイアプロテクトをかけてあった。
「酒場を守りたい“想い”が強いほど、隕石を跳ねのけられる」
確かにそうなのかもしれない。
だとしたら、詩穂の想いが皆に伝わっていればきっと……と思う。
振り返って蒼木屋を見れば、いつもの佇まいとは違う雰囲気を感じてしまう。お客も店員も避難しており、誰も居ない寂しさだけが残っている。
「絶対、絶対みんなで守れるよね。そしてまた、楽しくて賑やかな蒼木屋が戻ってくるよね」
誰に言うともなく、そっと呟く。
「ぜってー負けねえからな、俺が先に壊してやるよ」
「あら、飛翔術が使える私の方が有利ですよ。ラルクくんは飛べないじゃないですか!」
横からそんな会話が聞こえて、詩穂はがくっと肩を落とした。
話しているのはサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)とラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)だった。
その様子を白砂 司(しらすな・つかさ)が黙って見守っている。
どうやら、どちらが先に隕石を壊せるかで張り合っているらしい。
「俺にはこれがあるのさ!」
ラルクが取り出したのはプロミネンストリックだった。
「ローラーブレード?」
「プロミネンストリックだよ! 格好良いだろ? これで隕石まで一直線さ」
詩穂が辺りを見回す。
だが、二人が乗ると思われるイコンはどこにも無い。
「まさか二人とも、イコンも無しで隕石を壊しに行くつもり!?」
詩穂が思わず問いかけると、両者は当たり前と言わんばかりに肯定した。
唯一用意をしていない司の方へ目を向けるが、
「サクラコのたっての希望だ。尊重くらいはしてやろう。……ま、危なくなったら無理にでも呼び戻すがな」
と、にべもない答えが返ってきた。
目の前が暗くなり、よたよたと倒れ込む。
軽い準備運動をしている二人の目は、疑いようも無いほどに本気だったのである。
「落ち着くのよ詩穂、今は隕石に集中しないとだもんね」
詩穂が自ら言い聞かせ、立ち直った時には飛び立つ寸前だった。
司がサクラコを担いで宙に向かって構え、投げ出す用意をしている。
その横ではプロミネンストリックを装着したラルクが、いつでも発進できる体勢を取っていた。
「二人とも隕石の位置は大丈夫か? 行くならしっかりとぶち当たってこい」
「大丈夫大丈夫、ダリルがしっかりと隕石の把握をしているからな。予測ポイントはしっかりと頭に叩き込んであるぜ!」
「私も問題ありません。さあ、行きましょう」
司は黙って頷くと、サクラコの指差す方に目標を合わせる。
ラルクは少し違う場所を見ているので、それぞれが目指す隕石の欠片は別なのだろう。
詩穂が慌ててファイアプロテクトをかけるが、その瞬間に、二人は凄い勢いで飛び出していった。
……ちゃんとかかっただろうか?
詩穂は再び肩を落とすと、Space Sonicへと向かって歩き出した。
まだ細かい破片を撃ち落とす作業が残っているのである。
◇
司に初速を稼いでもらったサクラコはラルクよりも先に、イコン大もある大きさの隕石へたどり着いていた。
轟々と燃え盛る火の玉が、異常な速度で眼前に迫りくる。
「こ、この大きさなら十分! 相手にとって不足無しですね!」
眉を吊り上げ、気圧されないように精神を集中する。
そして放つは必殺のビーストタックル。
「超感覚は伊達じゃない!」
渾身のタックルが隕石へとさく裂する。
サクラコの強靭な肉体が固い岩盤を突き破り、粉々に砕いた。
◇
「やっぱり直に見ると迫力が違うな。手加減なしでいかせてもらうぜ!」
ラルクの顔に自然と笑みが浮かんでくる。
隕石が目視できる距離まで近づくと、正面に見据えたままバックに加速した。相対速度を合わせるためである。
ラルクの目的は体当たりではなく、打撃による迎撃を目的としているからだ。
全力で下がるが、隕石は異常な速度で近づいてくる。
「うらぁ!! こんな石コロぶっ壊してやる!!」
七曜拳の構えから、次々と拳が繰り出されていく。
そして連撃の後は滅殺脚を使った連打が隕石に叩き込まる。
割れて飛び散る破片も容赦なく、破壊し、砕き、粉砕していく。
ラルクが動きを止めた時、周囲には石ころサイズの欠片さえ残っていなかった。
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