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【WF】千年王の慟哭・前編

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【WF】千年王の慟哭・前編

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「そうはさせません!」

 と、燃えさかる炎が突如として契約者たちを襲った。

「誰ですか!?」

 御凪真人がそういって、視線を後ろへ向ける。
 するとそこには、天神山葛葉と辿楼院刹那の姿があった。

「君は!」
「驚きましたか? あいくと僕は不死の体なので、なかなか死ぬないんです。ただ先ほどの攻撃は堪えましたよ……回復するのに少し時間がかかってしまいました」

 傷ついてもリジェネレーションする体を持っている彼女は、そういうと笑った。
 と、いつの間にか起き上がっていたMが葛葉と刹那の隣に現れる。

「……教授は返してもらう」
「そうはいかんで」

 と、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)がゆっくりと前に出た。

「どうしても教授を取り戻したいっていうんなら、このオレ。否定人間こと瀬山裕輝を倒してからにしてもらおうか」

 そして裕輝はそういうと、突然おかしなポーズを取った。
 彼のそのマヌケな姿に、Mや仲間たちはぽかんとした表情を浮かべる。

「……」
「なんやパツキン、急に黙りこくって? もしかして自分、もうビビってしもうたのか?」
「……バカはどきなさい」

 Mのその言葉を聞いた裕輝は口元をニヤリと歪めた。

「パツキン、あんたはもうオレの術中に嵌ってるで」
「……?」

 Mが眉をしかめていると、おかしなポーズを取っていた裕輝は予想外の素早い動きを見せた。
 わざとおかしなポーズを取って相手の隙を誘った裕輝は、Mへと一直線に迫る。

「もろたで!」
「……無駄」

 Mが手を前に突き出して瞳を大きく見開いた。
 すると、彼女の念動力が見えない波動となって裕輝の体を通過する。

「なんや、なんともないで――!」

 裕輝はそういって振り上げた拳をMへと叩き込む。
 だがその拳はMにいとも簡単に止められてしまった。

「どうなってるんや?」
「あなたの能力を一時的に封じた。いまのあなたは普通の地球人と変わらない」
「――せっかく決まったと思うたのに、やっぱり今日も最低、最悪やったわ」
「吹き飛べ」

 Mは目を見開いて、裕輝をサイコキネシスで吹き飛ばす。
 あーれーと声をあげて裕輝は後ろの壁に激突した。

「おふたりとも」

 と、葛葉がMと刹那に声をかけた。
 Mと刹那は視線だけを葛葉に向ける。

「ここは力を合わせて、と行きましょう」
「了解じゃ」
「……わかった」

 3人はそう言い合うと、契約者たちに視線を向け、攻撃を開始した。

「マリアンヌさん、教授はこっちですよ!」

 と、相田 なぶら(あいだ・なぶら)が倒れている教授の前で叫んだ。
 それを見たMは、なぶらに向かって一直線に向かってきた。

「――作戦成功かな」

 なぶらはそういうと、Mに向かってバニッシュを唱える。
 彼の後ろで倒れている教授は、先ほど裕輝が色々とやっている間にシュリュズベリィ著『手記』がコピー人形で作り出した偽物だった。
 そして本物は、すでに涼介が封印の魔石に封じ込めている。
 それを知らないMは、まんまとなぶらの言葉に乗せられてしまった。

「マリアンヌ、我輩の正義の拳を受けるのだ!」

 と、木之本 瑠璃(きのもと・るり)が拳を振り上げて、神速のスピードでMに向かう。
 マリアンヌはそんな瑠璃に向かって真空波を放ち、その身を切り刻んだ。

「うぬぬぬっ、この程度では我輩は止まらぬのだ!」

 防御を捨てて攻撃にすべてをかける瑠璃。
 彼女のその執念が、Mへと伸びる拳に込めらて放たれる。
 Mはその拳をサイコフィールドを展開して防いだ。

「拳でダメならば――!」

 瑠璃はそういうと、今度は蹴りを叩き込む。
 そしてそれもダメならまた拳を――という具合に、瑠璃は拳聖必殺の連打技を次々と叩き込む。

「うおおおおっ!」

 と、そこへやってきたなぶらが、光明剣クラウソナスの一撃を加える。
 そんなふたりの同時攻撃に、Mの防御が崩れた。
 それを見逃さなかった瑠璃は、雷光のように素早く身構え、Mへと強烈な右ストレートを叩き込んだ。

「――ッゥ!」

 Mは体を仰け反らせて吹き飛ぶ。
 だが空中で態勢を整えると、なぶらたちに向かって真空波を放った。

「瑠璃、俺の後ろへ隠れて!」

 なぶらは混沌の楯を構えてそういった。
 襲い来る真空波がなぶらの体を切り刻むが、彼は持ちこたえる。

「……!?」

 と、宙に浮いていたMは突然地面に引っ張られるように落下していく。
 見れば、熊楠孝明が奈落の鎖でMを戒めていた。

「君も教授と同じように大人しくするんだ」

 考明はそういうと、等身大のマリオネットたちに命令を下す。
 マリオネットたちは主の言葉を忠実に従い、Mを拘束するために動き出した。

「マリアンヌ殿はやらせん!」

 と、刹那がマリオネットたちの動きを阻み、打ち倒す。
 そしてMを拘束している孝明に向かっていくと、手にした得物で斬りかかった。
 その攻撃を躱すために、魔法を解かざる終えなかった孝明。
 戒めを解かれたMは、素早くその場から上空へと飛び上がる。

「これ以上戦うのはやめてください!」

 白く輝く光の翼・昂翼のアネモイをはためかせ、Mの元へとやってきたレイカ・スオウ(れいか・すおう)が叫ぶ。
 そして手にしていた2連ショットガン『シャホル・セラフ』の銃口をMへと向けた。

「マリアンヌ、この状況はあなたたちWFにとって圧倒的に不利です。それがわからないあなたじゃないでしょ?」
「私は私に与えられた使命を遂行しているだけだ。その過程で私がどうなろうと、目的が達成されればそれでいい」
「そんな……あなたは使命を果たすためなら命もいらないというの」
「そうだ。私の命はすでに私のものではない。ウィアード様のものだ」
「ウィアード……そいつがあなたたちWFの黒幕なのですね」
「答える義務はない――!」

 Mはそういうと、サイコキネシスでレイカを吹き飛ばす。
 だがレイカは、アネモイの光翼を羽ばたかせ、空中でその身を翻すと、再びMへと向かっていく。

「悲しいですけど、あなたを止めるにはこの方法しかないみたいですね」

 レイカは手にした2連ショットガンのフォアエンドを前後に動かし、銃弾を発射する。
 Mは炸裂したショットガンの弾をサイコフィールドで防いだ。
 と、接近したレイカが再びフォアエンドを前後させ、Mに銃口を向けた。

「グレイシャルハザード!」

 シャホル・セラフの銃身内に施された魔術式『厭わぬ者』が、冷気の魔術を増幅し、強力な一撃を銃口から放った。
 至近距離から放たれたその一撃で、Mもレイカも吹き飛び、ふたりは地面へと落下する。

「オーバードライブ」

 と、ヴァイス・フリューゲルが装備していた武装をすべてパージしてつぶやいた。
 彼女の体はフル稼働する動力のエネルギーにより赤く発光する。

「攻撃、開始」

 二丁のユル=カタブレードを手にしたヴァイスは、桁外れの運動能力を発揮し、地面に膝をついているMに向かっていく。
 と、そんなヴァイスの姿に気づいたMは真空波を放った。
 だが、その攻撃は相手を捉えることができない。
 そうこうしているうちに、ヴァイスはMに接近。銃撃と近接攻撃を織り交ぜた連続攻撃でMを攻め立てた。

「スピードなら負けませんよ」

 と、禍津殺生石を呑み込みパワーアップしている天神山葛葉が、疾風迅雷の動きでヴァイスの前に現れた。
 彼女はマグマブレードでヴァイスの攻撃を受け、そのまま相手を押し返す。

「パワーなら、どうだ!」

 と、大剣ヴァナルガントを振り上げた桐ヶ谷煉が、そこに現れた。
 彼はウェポンマスタリーの剣技、アンボーン・テクニックの魔力による身体強化、サイコキネシスで大剣を加速させた奥義を放つ。

「くらえッ! 真・雲耀之太刀!」

 強烈なヒロイックアサルトが、Mと葛葉を襲う。
 その一撃で、ふたりは別々の方向へと吹き飛んだ。

「……くっ!」

 顔を苦痛で歪めたMは、フラフラとしながらも立ち上がる。
 と、その時。
 周囲をまばゆく照らす強烈な閃光が、皆の動きを止めた。
 各所で戦いを繰り広げていた者たちも、その強烈な閃光に顔を覆う。
 そして、その閃光の出所となっている千年王の像の方へと皆一様に視線を向けた。