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全力! 海辺の大防衛線!

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全力! 海辺の大防衛線!
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リアクション

「せいやっ!」
 薫は剣を振るい、近付いてくるスケルトンを両断する。
「一気に浄化してやるよ」
 氷藍が『鬼払いの弓』の弦を鳴らすと、周囲にいたスケルトンや落ち武者達が一瞬にして浄化された。
 二人が戦っている間に神楽が、一人祈祷する須佐之男に近付く。それを見つけた薫が動きを止め、そちらを見つめる。
「……あれ、神楽さん、何で須佐之男さんのとこに行くんだろう……?」
 だが、一度その考えを振り払い眼前の敵に集中する。 

「…………」
「須佐之男とやら。忙しいところ悪いが、質問だ。お前は何を思って、あいつを……薫の事を気にかけている?」
「……なぜ、そんなことを聞く」
「興味があるから聞いている。あいつはお前の事を支えたくて、守りたくて、いざとなれば自分を犠牲にしようとする。馬鹿で脆くて儚くて……でも、可愛げのある奴だ。他にも様々な理由があって、俺はあいつに執着している」
「…………」
「……で、お前はどうなんだ?」
 一通り喋った神楽は須佐之男を見据える。須佐之男も一度神楽を見た後、再び目を閉じる。
「ったく、くだらねぇ質問しやがんな」
「嫌なら無理に答えなくて良い」
「……んなこた知らねえよ」
 踵を返そうとした神楽だが、須佐之男の言葉に足を止める。
「知らない?」
「あぁ……。ただ放っとけねーんだよ。薫のやつは特にな。それに……」
 再度、須佐之男が神楽を見て、そしてニッと笑う。
「理由なんぞ後でくらでも出来るんだ、今だってそうだ。俺はあいつに……薫に守ってもらっている」
「……なるほど。せいぜい頑張れよ。俺も戦ってやる」
 須佐之男の話を聞いて満足そうにして薫のもとへ戻る神楽だった。

「…………」
 一方、薫の方は話し始めた二人のほうが気になり戦闘に集中出来ていなかった。
「須佐之男さんと神楽さん、どんなお話をしているんだろ……、不安で、気になって、聞いてみたいけれど……」
「薫!」
 氷藍の叫びに、はっと我に返り振り向く。目の前には落ち武者がすでに剣を振り上げていた。
「間に合え!」
 氷藍がすぐさま弓を弾き音を鳴らす。落ち武者の剣は薫に届くことなく目の前で、地面に落ちた。
「大丈夫か?」
「ありがとうなのだ……」
「しっかりしろよ。今は戦闘中だぜ」
「ごめんなのだ……」
 薫は一度頭を振って不安を消し剣を構える。
「今は、戦わないと……」
「薫、手伝ってやるよ」
 そこに話を終えた神楽が合流。
「あ、神楽さん……えっと、須佐之男さんと何を話していたのだ?」
 薫は気になっていたことをすぐに神楽に聞いた。
「別に、他愛もない話だ。ただ、薫は皆に思われて幸せ者だって再度認識させられただけだ」 
「……どういうことなのだ?」
 首を傾げる薫に神楽は笑う。
「気にするな。ただ、薫が不安になるような話しはしてない。だからしっかり前を向け」
 不安そうな顔が出ていたらしい。神楽がそういうと薫は少し考えた後、しっかりと頷く。
「……分かったのだ」
 そして、再度剣を構えなおす。
「盛り上がってるところ悪いが手伝ってくれないか? 俺一人じゃきついぜ」
 氷藍が二人声をかける。
「今、行くのだ!」
 不安事が消えすっきりした薫の太刀筋は乱れず、次々と敵をなぎ払っていく。
「そら!」
 薫が前で敵をひきつけている間に敵の隙をついて『凶刃の鎖』で攻撃し、援護する神楽。
「二人ともやるな! 俺もやるぜ!」
 弓を弾き、敵を浄化して行く氷藍。殲滅は順調に進んでいた。
「避けろ! 須佐之男!」
 そこで幸村の叫び。全員が気づいたときにはオロチの首が須佐之男の前まで到達。
「……!」
 オロチは須佐之男を飲み込まんとその口を開ける。
「やらせないのだ!」
 その間にわって入ったのは薫。その剣を持って、オロチを受け止める。驚く須佐之男。
「薫!? 俺に構わず逃げろ!」
 じりじりと押されていく薫。だが、逃げることは一切しない。
「逃げないのだ……、須佐之男さんは、我が守るのだ!」
 薫の『神降ろし』と剣の力が共鳴し、左目が白銀に輝く。
「『クサナギノタチ』……我に力を貸して欲しいのだ!! 想い慕う存在を守るために!」
 呼びかけに応じて、一段と輝く左目。
「いやあぁぁぁぁぁ!!」
 振られた剣は、オロチの首を一撃にして横に両断した。
「や、やったのだ……?」
 力を使い果たしたのか、薫がその場に膝をつく。
「薫……。ありがとよ! さぁ、守ってもらった借りは返すぜ、薫!!」
 須佐之男が祈祷を完了。
「さぁ、オロチ覚悟は出来たか!?」
 須佐之男が剣を一段と高く掲げる。そうすると、海で渦潮が巻き起こる。浅瀬にいたオロチ本体の身体がだんだんと渦に巻き込まれていく。
「海原の神として……、海よ、荒れろ」
 そして、今度は空が雲に覆われ、雷が渦の一帯に降り注ぐ。
「嵐の神として……、雷よ、轟き、暴れろ」
 そして、そのままオロチが渦の中に飲み込まれていく。
「根の国の神として……、我が敵をあの世に……堕とせ!」
 オロチが完全に飲み込まれると渦は消失。先ほどまで荒れていた天候も治まり、敵の姿はなくなっていた。
「……これで一段落、ってところか」
 様子を見ていた氷藍が呟いた。
「薫、大丈夫か?」
 神楽がすぐさま薫の元へ。
「だ、大丈夫なのだ……。ただ、ちょっと疲れただけなのだ……」
「薫……ありがとうな」
 須佐之男が今一度お礼を言うと、にっこりと微笑む薫。
「別に良いのだ……。我は、守れた……から」
「っと」
 薫はそのまま須佐之男に倒れこむと、安らかな寝息を立てていた。
「よほど疲れたんだな」
「このまま連れて行こうか。須佐之男、任せたぜ」
 神楽はそう言うと一人でさっさと防衛拠点へと戻っていく。
「……任された」
「それじゃ、俺たちも行こうぜ」
 須佐之男は薫を背負うと神楽の後を追っていった。