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邪竜の眠る遺跡~≪アヴァス≫攻防戦~

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邪竜の眠る遺跡~≪アヴァス≫攻防戦~

リアクション

 騨達が移動を開始した所で、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が鼻歌まじりに機晶爆弾を取り出した。
「さぁ! 派手にあります!」
 吹雪は両手に持った機晶爆弾を、敵に向かって投げつけた。
 爆音と共に大量の泥が飛び散る。
「一斉射撃用意!」
「了解した」
 鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)が吹雪の隣に立ち、ミサイルを構えた。
「全力でいくであります!」
 吹雪のバズーカと二十二号のミサイルが土煙の中へと飛び込んでいった。
 聞こえてくる爆発音は、確実に敵への着弾を告げていた。
「吹雪、もう大丈夫そうだ」
「む? そうでありますか?」
 攻撃をやめると徐々に白煙が収まり、正面の敵が一掃されたことがわかった。
 吹雪達は素早く残弾の確認と装填を行い始めた。
 そこへ夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)が近づいてきた。
「自分に用でありますか?」
「ああ、正面をおぬしに任せたいのだがいいか?」
「いいでありますよ」
「頼む。では、わしらは左右を担当しよう」
 話がまとまった所で甚五郎は、自分のパートナー達を呼び寄せた。
「わしらは彼らに正面を任せて、他の方角から向かってくる敵を迎え撃つことにする。異存はないな?」
 甚五郎の質問にパートナー達は首肯する。
「うむ。それではわしは左翼を担当する」
「それではワタシは右側を担当します」
「頼む」
 ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)はヤル気に満ちた表情で、手を挙げて立候補していた。
「では、妾は警戒と援護に当たろう」
「ワタシは後方に注意しつつ、いざという時の罠を仕掛けておきます」
 草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)に続いてブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)が役割を決めた。
「それでは作戦開始!」
 甚五郎の合図で各々が各自役割を果たすために動き出す。

 左翼を担当することになった甚五郎はトゥーハンディッドソードを手に向かってくる≪機晶ドール≫を薙ぎ払う。
「結構数がいるな」
 【絶零斬】で≪機晶ドール≫を一気に氷漬けにしたものの、さらに次が現れる。
 囮役を引き受けたものの、あまりこの場に居座るのは得策ではない。
 甚五郎は考えた。そして――
「……よし、気合で切り抜けよう」
 敵に向かって突撃していった。
「やれやれ、あやつは……仕方ない妾が穴埋めをするかのう」
 羽純は【ディテクトエビル】を発動して周囲を警戒しつつ、甚五郎の脇を抜けてきた≪機晶ドール≫を【天のいかづち】で貫いた。
「そっちの準備はできたか?」
 敵の勢いが衰えた所で、羽純は後方で罠を仕掛けているブリジットを振り返った。
 ブリジットは作業をする手を一端止めて、答える。
「もうすぐ完了します」
「そうか。ちゃんと退路は残しておくのだぞ」
「了解です」
 ブリジットはせっせと罠づくりに専念する。そんな時、ふいに目線をあげると、森の奥を歩く≪徘徊するミイラ≫と目が合ってしまった。
 ≪徘徊するミイラ≫はブリジットの存在に気づく、身体の向きを変え、――クラウチングスタートのポーズをとった。
 呆然と見つめるブリジット。
 ≪徘徊するミイラ≫は指先を地面に突き立て、尻を高く上げると、今にも走り出しそうな気迫を醸し出す。
「なんか走ってくるみたいですね……ミイラなのに」
 そしてブリジットの予想通り≪徘徊するミイラ≫は、地面を蹴ると、綺麗なフォームで走り出した。
 ブリジットの元へまっすぐ向かってくる≪徘徊するミイラ≫。
「仕方ありません」
 ブリジットは機晶姫用レールガンを取り出すと、≪徘徊するミイラ≫の左肩に狙いを定めた。
 怯むことなく、そのまま直進してくる≪徘徊するミイラ≫。ブリジットはある程度距離が縮まるまでじっと耐えた。
 そして――
「そこです!」
 トリガーを引いた。
 機晶姫用レールガンから放たれた電磁加速をくわえた弾丸が、≪徘徊するミイラ≫の左肩を直撃する。
 衝撃でふら付く≪徘徊するミイラ≫。すると、ブリジットが≪徘徊するミイラ≫の傍にあった木の根元に仕掛けてあったロープを狙い打った。瞬間、ロープに繋がっていた巨大な岩が≪徘徊するミイラ≫の頭上から落下してきた。
 ≪徘徊するミイラ≫が押しつぶされ、死体に戻る。
「やれやれですね」
「どうやらミイラの方も集まってきたみたいだのう」
 ブリジットが羽純の見つめる先に視線を向けると、ホリイが集まってくる≪徘徊するミイラ≫に苦戦していた。
「もうっ、シツコイですね!」
 ホリイは盾で身を守りながら、槍で確実で突いていく。
 だが、次々と向かってくる敵に対応が追い付かず、囲まれてしまう。
「まずいですね……」
 ライチャススピアを掴む手が汗ばみ、額からも大量の汗が流れる。
 腐臭を放つ≪徘徊するミイラ≫が、言葉にならない音を発しながらホリイに近づく。
 ホリイはこの場を切り抜けるため、【バニッシュ】を放つ準備をしはじめる。

 その時――背後の≪徘徊するミイラ≫達が空中に舞った。

 振り返ると、そこには二十二号が立っていた。
「引きつけ役はもう充分だ。
 一端、この区域から離脱する。準備をしろ」
「おおっ!? 了解です! 助かりました!」
 二十二号は大柄な体格を活かした豪快な格闘で≪徘徊するミイラ≫を吹き飛ばしていく。
 ホリイは背後を二十二号に任せつつ、甚五郎の元へゆっくり後退する。

「この区域を離脱するために置き土産を用意するぞ」
「了解であります」
 甚五郎の掛け声で、吹雪が機晶爆弾を足元に仕掛けた地雷もどきを用意し始める。
 すると、ブリジットが甚五郎の肩を叩いた。
「どうした?」
「当機ブリジットの自爆を承認しますか?」
「いや……いいからおぬしも手伝って来い」
「………………………………了解しました」
 ブリジットがすごく残念そうにしていた。

 地雷もどきが完成した。
「よし、始めるぞ!」
 ギリギリまで引き付け、ホリイと羽純が【バニッシュ】で目くらましをかける。その間に生徒達は後方へと全力で走った。
 そして、目くらまし追いかけてきた敵が――

「ふせろぉぉぉぉぉぉ!!」

 生徒達が飛び込むように伏せた瞬間、激しい閃光と共に爆音が周囲の木々をなぎ倒した。