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リアクション
三曲目
「あ……あの、さっきから凄い音が聞こえてるんですが……ここは大丈夫なんでしょうか?」
ドアの小窓からハーメルンが顔を出し、ドクター・ハデス(どくたー・はです)に声をかける。
「フハハハハハハ! 安心するがいい、ハーメルンよ。我らオリュンポスがいる限り貴様に危害が及ぶ事は無い」
そう言ってハデスはハーメルンがいる部屋のドアを見る。
部屋の前にはハデスの特戦隊が待機しておりドアには虎バサミからドアと連動して発砲される拳銃等のトラップが仕掛けられていた。
「この鉄壁の布陣で来れるというなら来てもらいたいものだ……フハハハハハハハハ!」
「それなら……私が挑戦しても構いませんね?」
そう言って壊れた壁から現れたのはエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)だった。
「ちょっと……待ってくださいよエッツェルさん」
それに続いて堀河 一寿(ほりかわ・かずひさ)はヴォルフラム・エッシェンバッハ(う゛ぉるふらむ・えっしぇんばっは)を連れてやってきた。
だがハデスたちは一寿とヴォルフラムを見ようともせず、エッツェルの容姿に釘付けになっていた。
複数のワームが絡んだような左腕からはグチャグチャと汚い水音が鳴り、体中には幾つもの武器が刺さり、数本は完全に身体を貫いていた。
突然現れた異形の存在にその場にいた誰もが息を飲むが、ハデスはいち早く遠くに行っていた意識を戻して、
「ふん! やれるものなら見せてもらおう。いけ特戦隊!」
特戦隊に命令を飛ばし、
「ハーメルン様は部屋の隅までお下がりください」
ヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)はドアの近くに陣取ると六連ミサイルポッドを三つ解放すると全段射出した!
ミサイル全弾はエッツェルを捉え、着弾するたびに炎が上がり周囲に熱風が広がる。
それに便乗するように特戦隊とアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)がエッツェルに向かって接近戦を仕掛ける。
アルテミスは三叉の剣を抜き、エッツェルの身体を斬りつける。
特戦隊もアルテミスの攻撃に合わせるように攻撃を加えていく。
ヘスティアは続いてロケットパンチを飛ばして援護をするが──エッツェルはそれを無視するようにゆっくりと前進する。
「な……! なんで!? 確かに刺さってる筈なのに!」
アルテミスは剣を引き抜くと、剣にはべっとりと血がついているがエッツェルは全く興味が無いように前進し続ける。
「この! 何で倒れないんですか! 倒れて! 倒れてください!」
アルテミスは持てる力の全てを使って剣を振るうが、それでもエッツェルの動きは止まらない。
その光景を見ながら天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)はハデスの横でふむ、と顎を触る。
「どうも、彼と我々では戦力に差があるようですね」
「そんなものは見ればわかる。防衛システムはどうなっているんだ」
ハデスの質問に、
「全然出来ていません」
十六凪はニッコリと笑顔で答えた。
「まだこちらに来て数日しか経ってませんから防衛計画もほとんど達成していませんし……どうしますか? ハデス君」
十六凪は涼しげな表情で質問し、
「致し方ない。これだけやっても無理なら逃げよう」
ハデスはアッサリと答える。
「随分と早い決断ですね」
「善は急げと言うだろう。アルテミス! ヘスティア! 撤退するぞ! 準備しろ!」
「かしこまりました!」
ヘスティアはハデスの近くの壁をロケットパンチで破壊し、アルテミスは剣を収めてエッツェルから距離を取った。
「させるか!」
一寿はハデスに目がけて奈落の鉄鎖を飛ばし、
「特戦隊!」
特戦隊が肉の壁となって前方を塞いだ。
鉄鎖は特戦隊の一人を拘束し、足がもつれて倒れ込んだ。
残りの特戦隊は無言のまま一寿たち目がけて襲い掛かる。
「邪魔を、しないでください!」
ヴァルフラムはバスターソードを横一閃に薙ぎ払い、特戦隊を一掃する。
「あの人たちは……!」
前方を切り開いたヴァルフラムは慌てて穴の空いた壁の先を見る。
「さらばだ異形の怪物、次会った時は貴様の身体を解剖させてもらおう。フハハハハ!」
ハデスは余裕の捨て台詞を吐き、三人と特戦隊を連れて逃げおおせた。
「……逃げられた……」
一寿が肩を落としているのを無視してエッツェルはトラップを無視して強引にドアを破り、ハーメルンの前に立った。
「安心して下さい、私はあなたに聞きたいことがあって助けにきたのですから」
「え……聞きたいこと……って、わっ!?」
エッツェルの異形の左腕がハーメルンの身体を拘束する。
「エッツェルさん! なにをしてるんですか!」
「私は彼の笛の音と彼の目的が聞きたいだけです。彼を安全な所を連れて行くついでですお気遣い無く」
「あ、ちょっと待ってください! エッツェルさん!」
淡々と告げると、エッツェルは一寿の制止を振り切ってハーメルンを攫っていってしまう。
「……どうしましょう、一寿さん」
ヴァルフラムの問いに一寿は難しそうに顔を歪める。
「……ハーメルンさんがいなくなったから村の人達の洗脳も解けてるだろうし、そうなったらパニックになるかもしれないから、村人たちを助けに行こう」
「そうですね……そうしましょう」
二人は来た道を戻り、村人たちの救出に向かった。