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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 4

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 4

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第8章 3時間目・昇級発表

 3時間目の授業を始めようと、エリザベートとラスコットは教室の扉の前で生徒たちを待つ。
「免許を見せてください。―…、確認しましたぁ〜♪」
「今日は何人くらい参加するのかな?」
 五月葉 終夏(さつきば・おりが)は大事そうに木の聖杯を抱えながら教室へ入った。
「わたくしも持ってきましたわ。ノーンも見せなさい」
「うん、おねーちゃん」
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)たちも免許を見せる。
「席は決まってないから、適当に座って」
「なるべく見やすいところがいいですわね」
「真ん中の列にしようよ」
 パタパタと走り、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は終夏の隣に座る。
「よろしくね。終夏さんも、クローリスを呼び出していたよね?」
「そうだよ。私はスーちゃんって呼んでるけど」
「名前をつけたの?ねぇ、ロザリンドさんも?」
「カメリアさんって呼んでますよ。ノーンさんは名前を考えてみました?」
「ううん。おねーちゃんと、わたしだけなのかな?」 
「こんばんは。私のポレヴィークは、リトルフロイラインという名前をつけましたわ」
 ノーンの後ろの席にいる中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)が話しかける。
「可愛い名前だね。んー…わたしはまだ思い浮かばないよ」
「ゆっくり考えればいいんじゃないか?」
 クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)は綾瀬の隣に座り、ノーンに言う。
「そうだよね」
「もうすぐ授業が始まりますね」
 黒板の上にかけられた時計をロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が見る。
「皆さん、お席につきましたねぇ〜?ホームセンターで実戦を行ってもらった結果…。昇級した方々いますので、発表をしますぅ〜!」
 ベルが鳴り終わるとエリザベートは扉を閉めて、全員席に座っているのを確認する。
「今回、ブリーダー・ランク5に昇級した方は〜…。五月葉 終夏さん、ノーン・クリスタリアさん、エリシア・ボックさん、中願寺 綾瀬さん、ロザリンド・セリナさんですぅ〜!!」
「わーい、昇格したっておねーちゃん」
「陽太に連絡しておきましょう」
 昇級結果を報告しようとエリシアは、携帯で御神楽 陽太(みかぐら・ようた)にメールを送る。
「スーちゃんを呼ぶ時、言わなくてもわかるのかな?」
「召喚する時の血の情報で、今の出来事も知ることになりますわ」
「わかっているとしても、言葉で伝えてあげるのもよいですよね?」
「うん、私は言葉で伝えたいかな」
「俺たちも頑張らないとな」
 クリストファーもクローリスを召喚出来るようになり、ある意味パートナーと一緒に、ようやくスタート台にたったところだ。
「木の聖杯で使い魔を呼び出せる者は…。ブリーダー、テイマー、サモナー、クリエイターのランクに昇級していきますぅ〜。3時間目の昇級発表は以上ですぅう!!」
 エリザベートは名簿を閉じ、机の上に置いた。



「質問とか疑問があれば〜、答えますよぉ〜」
「何か聞いておきたいことない?」
「では、質問しますわ」
 エリシアは片手を上げる。
「―…じゃあ、エリシア」
「召喚者の能力や工夫次第で、使い魔の発揮できる能力を上昇させることが出来ますの?」
「使役する者の経験によって香りが届く範囲が広くなったり、強い呪いにもかかりにくくすることも可能になるよ」
「範囲を広げすぎると、精神力の消耗も激しくなるということですわね…。当然、呪いは弱いものもあれば、強いものもあるでしょうし…」
 今のキャパシティでは広範囲の能力は厳しく、仲間が術の餌食にならないように守るためには、もっと実戦経験を積む必要がある。
「俺も聞きたいことがあるんだけど…」
「―…質問かな?」
「うん。初めての召喚で、しかもクローリスの召喚経験無しで、進化したクローリスを呼ぶのはリスクが高くなるのかな?そしてこれまでの召喚の注意点の他に、何か特別注意する点はあるかな?」
 進化したクローリスをすぐに扱えるようになるのだろうか…と、クリストファーが質問する。
「呼び出せないっていうリスクはないね。注意する点があるとすれば…。例えば、ポレヴィークの扱いには慣れていても、初めてクローリスを扱う場合、クローリスの効力が届く範囲などは見習いの人と同じだってことだね。成長前の使い魔の能力を引き出せていたとしても、成長させて増えた能力は、すぐに引き出せるわけじゃないよ」
「進化後に増えた能力…。つまり下級の呪術までしか、かかりにくくすることが出来ないってことだね」
 クローリスが進化前の状態で、遠くまで香りを届けることが出来ても、追加能力をすぐに上手く扱えるわけではないようだ。
「成長前の能力は、成長後で扱っても問題なさそうだけど。新たな能力は、そうもいかないのか…」
「使役する者が使ったことがない使い魔の能力を、使うのってやっぱり難しいんだね」
 彼が質問した会話を、クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)がノートに書く。
 まったく使えないということはないが、強い呪いから仲間や人々を守るためには、実戦に出て扱いに慣れないといけない。
「ボクたちの精神力と経験って、魔法攻撃や魔法防御の代わりのようなものかな?」
「そういう通常の能力が高くっても、ここじゃあまり意味がないみたいだし。扱う魔道具によって、成長の度合いも異なるんだろうね」
 扱うことは問題なくっても、キャパシティの差は当然、広がっていくのだろうとクリスティーに言う。
「魔道具を使えても差が出るのは仕方ないね。授業に出ないと知識の差もあるし…」
「能力の差はどうしようもないけど。実際の現場となると、座学のように先生たちにたくさん聞いたりしている時間はないから。新しく来た人にボクたちが教えてあげる知識を、ここで学ぶことも大事だよ」
「歩きながらでも、知識ならわけてあげられるからね」
 簡単に教える程度なら問題ないかも…と、ノートにまとめながら頷く。
「あ、あの…」
「何ですかぁ、ロザリンドさん」
「そういえば、使い魔の強化については、使い魔にとってはどのようなものなのでしょうか?私たちにとっての、練習を積んで新しい技を覚えたり力が強くなるような感じなのでしょうか?」
「例えばクローリスなら…。今回、呪いにかかりにくくなる能力が使えるようになりましたよねぇ?香りで効果を得るだけじゃなくって〜、クローリスの花びらを香水にして下級の呪いがかかりににくくなりますぅ〜。強い呪いに対して抵抗力をつけるなら、複数の花を出してもらって…作ることも可能ですよぉ〜。修練を積むことで、いろいろと花を出せるようになるんですぅ〜!使い魔と一緒に作ることも出来ますがぁ〜…。術者だけで作れるようになれば、いろんなパターンで抵抗薬的に作ることも可能ですぅ〜」
「使い魔と一緒に、私たちも成長していく感覚なんですね。今までそういったことに、関する記述とかあったりするのでしょうか?」
「書物的な記述はありませんよぉ〜。魔道具を開発してきた私たちの経験が全てということですぅ〜。なので図書館とかに、そういったデーターはありません〜」
「なるほど…。離れた仲間に渡して使ってもらうことも出来そうですね」
「とはいっても…作った香水の効果がなくなる時間が、術者と使い魔の能力によるんですぅ」
「それも修練が必要ということですか…」
 カメリアに香りを遠くに届けることも大事だが、皆に配るためのものも必要かもしれないと考える。
「エリザベート先生」
「はい、終夏さん」
「スーちゃん…クローリスの成長をユフィールにお願いした時に、チャプレットを使ったんだけれど。その時の様子がとても印象的で、チャプレットと使い魔について、もう少し詳しいことを聞けたら良いなと思ったんだ」
「チャプレットの花には、花の使い魔の能力を引き出す魔力があるんですぅ〜。ユフィールさんの力を借りないと、成長させることは出来ませんけどねぇ〜。呼び出す者の力になりたいから、花びらを受け入れる…という考えも、出来るかもしれませんねぇ?」
「(そういう考え方も…ありなのかな)」
 終夏は小さく頷き、スーちゃんもエリザベートが言うように、そうだったのかな…と考えてみる。
「校長、私も聞きたいことがありますわ」
「何でしょうかぁ、綾瀬さん」
「私の使い魔であるリトルフロイライン…種族としてはポレヴィークになる訳ですが、先日ふとした事でレベルと言いますか、ランクと言いますか、以前より少し成長した模様ですの」
「綾瀬さんも授業を受けにきていましたよねぇ〜♪」
「そこで疑問に感じたのですが『エクソシストになりたての者が、最初から高いランクの使い魔を扱う』と言う行為は可能なのでしょうか?」
「可能ですけど、実戦に出ていない者が扱う場合は〜…。ポレヴィークの扱いに慣れた者と同じように、強い守りの能力や腐敗毒を解除する効果のある効果の高い薬草を出せるわけじゃありません〜。使い手が薬草も扱いなれると、煎じてお薬を作れますぅ〜。使用期限は、術者の熟練度によりますけどねぇ〜」
「扱い始めた頃は守りが劣ったり、毒を解除出来ても即効性はない…ということですの?」
「はい、そうですぅ〜。守りを修復する時も精神力を使いますし、特に下級以上の者に対しては、効果を維持しづらくなっていますぅ」
「―…扱う経験者と、エクソシストになりたての者では、能力の差があるのですわね」
「他に質問などがなければ〜。使い魔の新たな能力などについて、説明を行いますぅ!」
 そう言うとエリザベートはチョークを手にする。