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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 4

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 4

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第7章 2時間目・実技

「説明ばかりだと時間がなくなるし。とりあえず、誰かに実技をやってもらうかな」
 ラスコットが名簿を見ながら選んでいると…。
「(さあさあ! テスタメントを指名するのです)」
 “実技”という単語に反応したテスタメントは鋭い視線を送る。
「じゃあー…。ディンス・マーケット、小鳥遊 美羽、ベアトリーチェ・アイブリンガー、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント、エース・グランツ、クマラ カールッティケーヤ。教壇の前の…この辺に集まって。」
「はははっ、エースのハーレムか」
 呼ばれたメンバーを眺め、カルキノスが可笑しそうに笑う。
「オイラもいるよ!」
「そういやー、そうだったな」
 背的に隠れたら数に入らないかもな、という言葉を飲み込んだ。
「危ないから前列の3列目までにいる人は、後ろの席に移動してくださいねぇ〜!」
「それじゃ、放すから。これに憑いた魔性を祓ってくれる?」
 生徒たちが後ろの席へ移動すると、ラスコットはケージの鍵を外した。
「ドタマに、風穴空けてやるゥウッ」
「うわぁあ、いきなり襲ってきた!」
 小型削岩機に憑いた魔性は頭部のドリルを振り回し、クマラに遅いかかる。
 クマラはベタンッと床に倒れて避けた。
「はーはっはは、ぶぶぶ…ぶちまけろォオ」
「立つんだクマラ!!」
「エースさん、裁きの章を使ってくださいっ」
「―…分かった。やってみるよ」
 ベアトリーチェに頷くとエースはスペルブックを開き、裁きの章に記された文字をベースに術を唱えた。
 赤紫色の雨を器にされているボディーに降らせる。
 魔性は低く唸り声を上げ、クマラから彼にターゲットを変更する。
「(こいつって、時間が経つと効力が薄れていくんだっけ…)…ベアトリーチェさん!」
「…はいっ」
 哀切の章のページを開き詠唱を始める。
 器から祓うべく光の波を進入させる。
「くそぅ、ヒトリくらい…やっつけるゥウッ!」
「(なかなかしぶといな。雨の効力が薄れてきているのか?)」
 まだどちらの章の効き目もまだあるが、弱っているような感じはしない。
 戦意喪失しかかっている子供より、エースを狙ったほうがいいだろうと思われ、しつこく狙ってくる。
「泣くな、クマラ。穴が空いたら皆、お菓子食べられなくなって困っちゃうぞ」
「お…お菓子っ。それはいけないにゃん!!」
 その単語に反応し、立ち上がった少年は裁きの章を唱え、魔性の魔法防御を下げる。
「ガ……ガキのくせにぃいいィイイ」
「今すぐに悔い改めなさイ。そうしなければ、私はすぐにあなたの自由を拘束し、この私の手よりも小さき者へと変えてさしあげまショウ!」
 悔悟の章に触れたディンスが詠唱のワードを紡ぐと、銀色の重力の渦が器を囲む。
「美羽さん、テスタメントさん、今です!」
「任せて、ベアトリーチェ」
「魔性の者達に哀れみを。この者達に聖霊の導きにより祝福の道を指し示したまえ。大いなる主の愛による安らぎをっ!」
 テスタメントは美羽に続けて詠唱する。
「ウゥウウ…ァアアァアッ」
 捕らわれるものかと魔性は器から離れようとするが…。
「ディンス、渦を収縮するイメージをしてみて」
「分かりましタ!」
 講師に言われた通りに、小さく収縮させるイメージをする。
「う、動きづらい…。放せェエ」
「反省する様子しそうにありませんネ。どうしますカ?」
「そのまま術の効力を維持させて、ケージの方に移動せて」
「こういう章は、想像力も鍛えないといけないんですネ」
「はい、ごくろうさま」
 重力の魔法で体力を減退させた魔性を、ディンスがケージに運ぶと手早く鍵を閉めた。
「憑く力などを失わせてからじゃないと難しいけどね」
「次の方々を呼ぶので、お席に戻ってください〜♪」
 校長は名簿を手に、誰を呼ぼうか考える。



「えー…。漆髪 月夜さん、玉藻 前さん、禁書 『ダンタリオンの書』さん、神代 明日香。教壇のところへ集合してください〜。…駆け足〜!!」
「リオン、頑張れー♪」
「あぁ、行ってくる」
 スペルブックを抱えるとリオンは走らずにゆっくりと歩く。
「皆さんには、スタンガンに憑いた魔性を祓ってもらいますぅ〜。では、頑張ってください♪」
 エリザベートはケージの鍵を開けると、サッと4人から離れる。
 魔性は器へ変形させ、何本も虫のように何本も手足を生やし、頭部とも…口とも判断しがたい形状の部分から放電させる。
「痺れちまいなァア」
「玉ちゃん、裁きの章を使って」
「ふむ。詠唱には問題なかったようだから。この間のように、唱えればよいのだな」
 月夜に言われたページを開いて詠唱し、赤紫色の雨を降らせるが…。
 魔性の動きが素早すぎて命中させづらい。
 刀真の方はというと…。
「故障させられたら、録画どころじゃないからな…」
 席で実技の様子を録画している。
「私も同じ章を使って手助けしたほうがよいか」
 逃げようとする先へ術を放ち、追い詰める。
「手足は増やせても、後ろまで見えるようなものは増やせないようだな」
 リオンが魔の守りを殺ぐ雨を浴びせる。
「攻撃の手を休めると回復してしまうぞ」
「う、うむ…」
 哀切の章の術を唱えるスタンバイをしている月夜に、玉藻も頑張らなくてはならない。
「皆がいる席に行かせるな、外へ逃がすな。こいつを祓えなければ、実戦での成果も出ないのだからな」
「(月夜が期待している…。我も頑張らねばな)」
「…玉ちゃん」
「そんな顔をするな、待っていろ」
 玉藻はカーブをイメージし、リオンが操る雨へ魔性を寄せるように描く。
 2つの雨から逃れなくなり、呻き声を上げる。
「月夜、やれ!」
「分かった、玉ちゃん」
 身動きが出来なくなった器に、哀切の章の力を注ぎ込む。
「明日香、魔性が逃げないように囲むのですぅ!」
「分かりました、エリザベートちゃん♪」
 ディンスが術を操っていたようにやればよいかと、明日香は悔悟の章の重力の力で、器から離れて逃走する体力を奪う。
「悪さをやめるなら、開放してあげますよ?」
「もう捕まるのやだ、分かったヨ」
 力なくそう言うと…、身体を拘束していた銀色の球体が消え去った。
「上手くいったみたいですねぇ〜」
「席に戻りますね♪」
「私たちも戻ろう」
 リオンは本を閉じ、アニスたちが待っている席へ戻る。
「お疲れ様、リオン!」
「他にも実技を行う者がいそうだな。大人しく見ているのだぞ」
「うん!」
 後で一緒に学ぶためにアニスも実技の様子を眺める。



「ぇーっと。ラルク・アントゥルース、ガイ・アントゥルース、ルカルカ・ルー、カルキノス・シュトロエンデ、ダリル・ガイザック、夏侯 淵。今呼んだ者、駆け足で教壇の前に、集まるように」
「それ、電動ノコギリか?」
 ケージの中で唸り声を上げている者を、カルキノスが覗き込む。
「うん、そうだね。じゃ、頑張って祓ってみて」
「軽いなー…」
 ポツリとそう言い、苦笑いをする。
 ラスコットが鍵を外すと、魔性は刃を激しく回転させながらダリルたちの足を狙う。
「これでは術に集中しづらいな…」
「ちょうどいいからダリル。ラルクとガイが裁きの章を使うまで、そのまま囮になってろよ」
「なんだと……」
 顔をにやつかせるカルキノスに対して一瞬、表情をムッとさせるが、すぐにいつもの冷静な顔に戻った。
 ラルクとガイは裁きの章の詠唱をし、ダリルに注意が向いている隙に、囲み込むように赤紫色の雨を降らせる。
「(浴びたわね♪)」
 ルカルカはニッと笑みを浮かべ、このチャンスを逃すものかと詠唱する。
 光の波は白い絹の布のように広がって器を包み込み、その中に潜む魔性へ迫る。
「先に実技をやっていた者のやり方を参考にしよう」
 逃走されないよう、夏侯 淵(かこう・えん)たちはすぐさま、悔悟の章の詠唱を始めた。
 灰色の三層の重力場を作り出し、リング状に収縮する。
 魔性は逃げ切れず、体力を失ってしまった。
「意外と早く終わったわね♪」
「囮がよかったんだろ。…こぇー顔すんなよ、ダリル。褒め言葉だぞ」
「…誰かが時々そうなることもあるかもな」
「そう言うなって。下級相手なんだし、怒るなよ。呪いだとか、かけてくるような相手じゃなかっただろ」
「ま、まぁ。無事に終わったんだし。いいじゃないの♪…今回は、発動時間の短縮は出来なかったわね?」
「経験を積まないと、難しいんでしょうな」
「うーん、そっか」
 ガイの言葉に、まだまだ勉強しなきゃいけないのね…と俯く。
「2時間目の実技はこれで終わりだね。とりあえず、いったん席に戻って」
「はーい♪」
「次の授業の予定だけど。エリザベート校長と考えた結果、強化合宿を行うことにしたよ。詳しいことは、そのうち発表するつもりだから」
「スペルブックの授業はこれで終わりですぅ!」
 エリザベートそう言うとベルが鳴り、生徒たちは教室から出る。