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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 4

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 4

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第2章 1時間目・質問タイム

 ペンダントや宝石について知りたいことがないか、エリザベートは“質問や疑問があれば、答えますよぉ〜?”と言う。
「さて、何が聞けるやら。まったくもって解らんな。あぁ〜…とりあえず、話聞いて、他者の観察に精を出すかの」
 草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)はメモを取る準備をしようとノートを開いた。 
「先生、質問です」
「レイカさん、何ですかぁ〜?」
 真っ先に手を上げたレイカがいる方へ視線を向ける。
「宝石を扱える適性を持つクラスは、魔術師系統……ですよね?だとしたら、メイガスだけでなくネクロマンサーにも適性を持つ宝石は無いのでしょうか…?私、修練しているのがネクロマンサーなので、ちょっと気になって」
「ん〜…、ネクロマンサーにというか〜。皆さんが現在、所持可能なものしかお答え出来ないですぅ〜。それに、これから覚えてもらうことが沢山ありますからねぇ」
「今のところ、私に扱えるのはアークソウルだけということですか…」
「―…スオウさん。その…ま、まだ…希望を捨ててしまうのは早いですよ」
 しょんぼりと席に座るレイカを椿が慰める。
「えぇ…。扱える宝石があるかどうかの回答を、もらったわけではありませんし。校長も知識を得ることも大切…というふうに言ってましたからね」
 きっぱり“ありません〜”と言われてないのだから、諦めるのは早い。
 それに実戦に出るのなら、椿たちと助け合っていくこともあるだろう。
 互いに助力し合えるようになるには、今は手持ちの宝石を上手く扱えるように、頑張るしかないのだ。
「レイカさん。闇黒属性などの抵抗力を高める時に、イメージしてみては〜?仲間を守るために、ある程度…イメージも大切ですよぉ〜」
「イメージ…ですか」
 宝石を使いこなすために、新たな課題を与えられたレイカは、エリザベートが言った言葉の意味を考える。
「私も質問したいのですが…」
「はい、エルデネストさん」
「サイコキネシスで武器や爆弾を操るように、護符も同じ使い方が出来ないでしょうか?」
「うぅ〜ん。そういうスキルなどでは操れませんねぇ〜」
「そうですか…、残念ですね。…グラキエス様この宝石、見てみますか?」
「あぁ…。ホーリーソウルは、どんな色なんだ?」
 ハートナーの手の傍にある宝石が、どのような色合いなのか…。
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は指で摘むと、自分のペンダントの中にある宝石と見比べてみる。
「エルデネストの宝石も綺麗な色だ」
「グラキエス様が持っている琥珀のような宝石も綺麗ですよ」
 そう言い微笑みかけると、エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)は返してもらった宝石を、ペンダントの中に入れる。
「これで実技があった時でも、二人一緒に受けられるな」
「はい。指名されたら頑張りましょう」
「ー…エルデネスト、この前の実戦のことだが。どう思う?」
「どう思う…とは?」
「グレムリンたちは、悪ふざけをする子供のようだった…。下級相手でも、宝石や本…使い魔の力が無ければ、対処できなかったな」
 ホームセンターにある憑かれた物や、小さな動物たちから祓うことは出来なかっただろう。
 だからこそ、もっとペンダントと宝石の扱い方を学ぼうと、黒板の方へ視線を戻す。
「無理に祓おうとしたら、持ち主や…飼い主が悲しんでいたかもな」
「そうですね。魔性は突然何をしでかすか…分からない者たちですから。それよりグラキエス様、喉が渇いていらっしゃるようですね。今ご用意いたします。少々お待ちを」
 ティーポットに紅茶の葉を入れ、魔法瓶に入れてきたお湯を注ぐ。
 カップに注ぎ、淹れたての紅茶をグラキエスの方へ寄せる。
「ありがとう。…いい香りだ」
 グラキエスはカップを口元へ近づけ、紅茶の香りを楽しむと、ゆっくりと飲む。



「他にご質問などありませんかぁ〜?」
「はいはい、校長!」
 ビシッと片手を上げた歌菜は大きな声で言う。
「歌菜さん、今日も元気ですね。どうぞ〜♪」
「皆で協力して術を発動する際、特に気を付けることやコツがあれば知りたいです!」
「術にもよるですがぁ〜…。例として、涼介さんたちが考えたハイリヒトゥームフォルの場合は〜。宝石や章の力を、隣の術者の魔道具に流す術ですからぁ〜。受けて側に負担をかけないよう、めいっぱい力を込めて送ったりしたら、次の相手に送りきれないことも考えられますねぇ〜。かといって弱すぎると、効力が減退しちゃいますぅ〜」
「これくらい大丈夫…とか思うといけないんですね」
 自分と受けて側の力量を考えることが大切…とノートにメモした。
「オレたちの術も、なるべく平均化したほうがいいってことやね?」
「えぇ、そうみたいです」
「あまり焦って発動させても、よくないかもしれんな」
「じゃあ俺も…」
「は〜い、何ですぅ〜?」
「呪術や腐敗毒で攻撃してくる魔性を一目で見分ける事は可能だろうか?可能なら、その方法が知りたい」
 歌菜に続けて羽純も質問する。
「両方使ってくる相手もいますからぁ。一目でっていうのは、難しいかもしれません。いざという時、いつでも対処出来るほうがよいですよぉ〜」
「んじゃオレも質問!呪いに該当する術にかかった者や物を対象に、呪術を解除することがあるみたいやけど。どういった状態が、呪いに該当するんや?」
「身体の発火や凍結とかぁ〜。変身させられたり、心を操られるだけじゃなくって人格を変えられて、霊や魔性などの下僕にされたりすることですぅ〜。どちらも呪いが解除されるまで、魔道具を扱えなることがありますぅ〜。行動スピードを遅くされることなどもありますしぃ〜。酷い場合は時限タイマーがついたように、時間がくると臨死させられそうなることもありますねぇ」
 聞き逃した者にも分かるように、エリザベートは説明しながらチョークで黒板に書く。
「なんやそれ…っ」
「陣さん。エクソシストとは、そういう恐怖とも戦わなければいけないんですよ」
「だから単独で走るなってことだな」
「1人で特攻したら自爆やね…」
 単独なんて間違いなくゴートゥーヘルや…と歌菜と羽純の言葉に頷いた。
「ホームセンターの時のように、役割分担が必要というわけだな。厄介な相手が多そうだ…」
 呪いについて覚えておこうと涼介もノートに書く。
「解除することが出来れば、特に後遺症などはありません〜。ですが治療が遅れてしまうと、どんどん呪いが身体を蝕んでいきますからぁ。強化されたホーリーソウルの力で、解除するまで時間がかかっちゃいますぅ〜」
「(わたくしも立派なエクソシストになれるように頑張りますわ)」
 ミリィも話を聞きながら、シャーペンや色ペンで書き込む。
「うわ〜…。いやな呪いがいっぱいあるよ」
「臨死する可能性もあるみたい。私たちもなるべく仲間と連絡取りやすくしないとね、弥十郎…」
 連絡手段を失ったらやばいかも…と斉民が呟く。
「ん〜と……。変身されられちゃう時は、例えばー…オコジョやヘビに姿を変えられることとかですぅ〜…。変身しちゃうと、さきほども説明した通り、場合によっては魔道具を使えなくなることもありますしぃ〜。だんだん人の言葉を発したり、言葉の理解出来なくなっちゃいますぅ〜。呪いで魔道具が消えたように、封印されることもありますがぁ〜…。呪いを解除すれば、全て元通りですぅ〜。もちろん、着ていたお洋服もですよぉ〜」
「ふむ、封印イコール奪われるわけではないのか」
「敵の手に渡る心配はないみたいですわ」
「オコジョは可愛いけど…。ヘビとかにされたらイヤね…」
 もし自分が変身させられたらどうしよう…と歌菜が想像してしまう。
「可愛い姿でも、呪いは呪いだ」
「羽純くん…。もし変なのにされても、私だって分かってくれるわよね?」
「アークソウルがあればな」
「ひどーい!分かるって言ってくれたったいいじゃないのっ」
「歌菜から寄ってきてくれればわかる。(…はずだ)」
 半泣きになっている彼女の頭をぐりぐりと手で撫でてやる。
「精神や思考を乱して操るような呪術や…、人格分裂させられることも…ですねぇ」
「家はそういう家系のはずだがさぼりすぎたか?細かいことがわから無すぎだな」
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)も生徒たちの質問を聞きながら学ぶが、魔道具や呪いについての説明など、知らないことだらけだ。
「うーむ。ここはパラミタなのだからな。知らぬことがあっても、仕方ないのではないか?」
「ぅ…、そうなんだけどな」
「一から学ぶ者が、そなただけだとは限らぬのだろう?」
「確かにな…。情けないが、真面目に話を聞くところから始めよう」
 樹や章たちも今日、初めて授業を受けるようだから自分たちだけではないことが、せめてもの救いだ。
「しかし呪いとは……。随分と厄介な術を使うものがいるのだな」
「強化したホーリーソウルで解除出来ると、校長が言っていたようだが?」
「清浄化のスキルを使えるなら、扱えますよ」
 甚五郎と草薙 羽純の会話を聞き、前の席にいるエルデネストが後ろに振り返り2人に教える。
「わらわも器の修練を積めば、扱えるようになるのだな?」
「えぇ、そうですよ」
「―…ふむ、なかなか興味深い。わらわのクラスのメイガスなら、いくつか扱えそうかの?」
 すでに生徒たちが持っている宝石が、自分も扱えるようになるのかと、エルデネストの手元にあるペンダントを見る。
「甘い言葉や、容姿のよい娘などの姿で、寄ってくることもありそうなのだが…」
「騙されて呪いにかかるのは愚か者…というわけではないでしょうね。私たちのように、抵抗する力を得ていないのですから」
「美しい者には…なんとやらかの」
「偽りの言葉に耳を貸すな、ということか…」
「だが頭で理解しているつもりでも、相手は容赦なく仕掛けてくるからな。だからこそ、チームで行動しなければいけない」
 宝石使いが呪術にかけられると、他者の治療が遅れてしまう。
 本使いは敵を祓うために程度、近づく必要もあるから、彼らをサポートすることも必要。
 チームを組むとは、そういうことだ…と甚五郎たちに涼介が教える。



「他に質問はありますかぁ〜?」
「あの…。護符は投げつけるか、壁や床に仕掛けるということですけど、コレに他の宝石などの効果を付与することはできるでしょうか」
 斉民は片手を上げて、エリザベートに質問する。
「今の宝石では無理ですねぇ〜」
「(手持ちのものじゃ、付与出来ないみたいね…)」
「それよりも…。ワタシたちが持っている宝石を、もっと上手く扱えるようにならなきゃ、斉民」
 ドンマイッと弥十郎が、斉民の肩をポンッと軽く叩く。
「ワタシも質問していいかな?」
「はい〜」
「アークソウルで地球人以外の気配を感じれるけど、魔性は魔性、魔道書なら魔道書と独特の波長とかありそうだよねぇ。例えば、魔性は『赤色』とかイメージしたら、色分けとかできるのかなぁ」
「色というかぁ〜、それっぽいイメージなら可能ですねぇ。でも〜、扱い鳴れないと、厳しいと思いますぅ〜」
「じゃあ、実技時になったら試してみようっと♪」
 パートナーをチラリと見て、ニコッと笑みを浮かべる。
「何その顔。なんか企んでる?」
「ううん、別に♪」
 実験のことを話したらキレられて強力拒否されるかも…と思い、実技の時まで黙っておく。
「ねぇ。この宝石って、そういう使い方もありなんだ?」
 弥十郎の後ろの席で聞いてきた清泉 北都(いずみ・ほくと)が、彼の背をつっついて聞く。
「今聞いてみたら、ありみたいだよ。探知するには、実戦での経験が必要みたいだけどね」
「人間レーダーにでもなるつもりなの…」
 どんだけこだわるの…と斉民がため息をついた。
「うんいいね、人間レーダー♪」
「ぇー…どんだけなの」
「目標があるのも、いいことだよ」
「そういうもの?突っ走り始めちゃったから、見守るしかないわね」
 アークソウルを眺めながら目標を見つけた弥十郎を、斉民は眉を顰めて見る。
「校長。章の時は自己流のスペルのワードで発動に影響が出ましたが、こちらでは何か注意点はあるでしょうか?」
 リオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)は片手を上げ、詠唱によって宝石に影響があるかどうか聞いてみる。
「そうですねぇ。例えば〜ホーリーソウルで、護身用の光輝属性の魔法攻撃を発動させる時、その影響がある可能がありますぅ。今日もオヤツを食べられますように〜、とか祈ると雑念として…効力が微妙になる可能席がありますねぇ」
「ふむふむ…。まったく関係ないワードもよくないということですね」
 リオンはエリザベートの答えをノートにメモする。
「詠唱ワードは祈りの言葉とな…?何でもよいというわけではないのか」
「それと、感情のコントロールも必要みたいだ」
 草薙 羽純と甚五郎も、ノートに書きながら学ぶ。