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買い物禁止!? ショッピングモールで鬼ごっこ!

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買い物禁止!? ショッピングモールで鬼ごっこ!

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「どうやら偽装者は捕まったみたいだな。なら、本体の足止めをさせてもらうか!」
 そう意気込むのは玖純 飛都(くすみ・ひさと)だ。逃げ惑うフリーに翻弄されつつも、他の協力者たちと協力しながら徐々にフリーの行動範囲を限定していっている。
「どれだけすばしっこくても弱点がわかってればそう怖いこともないだろう!」
 フリーの弱点は雷に弱いということだ。自由に駆け回るフリーが目視した飛都。
「これで、チェックメイト!」
 フリー目掛けて『サンダーブラスト』を放つ飛都。しかし、黒服たちに阻まれてしまう。フリーに弱点があったとしても、それをカバーすることで永延に逃げさそうという魂胆だ。
「なんだよ、モブキャラの割には頭使ってるじゃないか。見直したよ!」
 モブキャラなんかじゃない! と言わんばかりに飛都に向かってくる黒服たち。その数を考えればこの一団を蹴散らし、『サンダーブラスト』を使ってもまた同じように阻まれる。
 そう判断した飛都は即座に作戦を変更する。他の契約者たちも雷系のスキルを使っていることを考慮に入れて、援護に回ることにしたのだ。
「さてと、モブキャラ! オレと一緒に遊ぶとしようぜ!」
 だからモブキャラじゃない! と殺気を放ち飛都に殺到する。飛都の狙い通りだった。
「そんな細かいことばっか気にしてるから、お前らはジョーカーになれないんだよ! モブキャラ!」
 『弾幕援護』を使用し、襲い来るモブキャラ、もとい黒服たちを広範囲に渡って蹴散らしていく。
 更に流暢な挑発により他の黒服たちの注意も一手に引き付ける飛都。
「そうそうその調子その調子! お前らはオレと遊んでもらわなきゃ困るんだよ」
 次々と集まってくる黒服たちに動揺することもなく、フリーがいる場所から遠ざかる飛都。
 そして、黒服たちが完全にフリーのカバーに入れない位置にまで誘導することに成功したのだ。
 それに気づいた黒服たちはすぐに元いた場所に戻ろうとする。が。
「悪いな、通行止めだ」
 それを飛都が許さない。愛用の銃を二挺構えて、黒服たちの動きを制する。
 好機到来、飛都が作り出したチャンスに応える者、あり。

「邪魔者はいなくなったわね! やるじゃないあの人! あの二人組みも偽装者を捕まえてくれたみたいだし、いいチームワークじゃない!」
「そうね、それじゃもう私はいいわよね。あっちで休んでるわ」
「ちょ、ちょっとちょっと!? むしろこれからが本番じゃない!」
「無理、限界」
「そんなことないって! それにあたしはセレアナの身体なら、一生このままでもいいかも、なんて思ってみたり」
「……嬉しいけれど、やっぱりギリギリでレオタードまでよ。さっさと片をつけましょう」
 そう言いながらフリーを追い詰める最終段階に入ったのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だ。
 【銃型HC弐式】で事前に中庭エリアの見取り図をダウンロード、更にサーモグラフィ使用で追跡しやすくなるようにする。
「それだけ仕事が出来るのに、普段こんな格好なのが惜しいわね」
「セレアナも似たようなものじゃない?」
「私は妥協してるのよ。だからビキニだって却下したでしょ」
「そだっけ? まあそんなことよりあのガキンチョ、捕まえないと!」
 中庭エリアを駆け回るフリー、その姿を見るにそこまで歳を取っているとは思えない十代の少年だ。
「さすがに手錠をかけるのはあれよね」
「あの歳じゃ、言葉も知らないものが多いかしらね。口責めは効かなさそうね」
「でもまっ、とりあえず訳のわからないハッタリでもしておきましょうか!」
「ハッタリ?」
「……こーら! そこの悪がき! 早く捕まらないと! お仕置きよ! お仕置き!」
「そ、そんなこと言われたって知らないもんねー! 変な衣装の姉ちゃんたちには捕まらないよ!」
「ふっふっふ、私たちが伊達や酔狂でこんな格好をしてるとでも? この格好はね! あんたを捕まえるのにとっても役立つのよ!」
「な、なんだってー!」
 驚きのあまり立ち止まるフリー。
「う、嘘だ! そんなの嘘だよ!」
「本当よ? ただどんな効果なのかは言わないわ。あんたにバレたら意味ないものね!」
「う、うぅ?……」
「……よくもまあ、口からでまかせが出るものね」
「変な格好って言われっぱなしもあれだからね。ちょっとだけ仕返しよ。それでこれがとどめ!」
 セレンフィリティが『天のいかづち』をフリーの近くに落とす。精神的に追い詰められたところに弱点である雷を目の当たりにしたフリーは動けなくなってしまった。
「イエーイ! ミッションコンプリート! コングラッチレイション!」
「……あんまり私の体ではしゃがないで、自分で見てて不気味だから」
「そう? 可愛いと思うけど、でさでさっ。久々にビキニを着たじゃない? これを機にセレアナも私とおそろいのビキニに乗り換え」
「却下」
 セレアナが歩き出す。無論、フリーのところへと。
「あーちょっと?」
「今回のことで確信したわ。ビキニは絶対にない、ってね。……ん?」
 遠くの方で鼻血を出して倒れている男を発見するセレアナ。実はこの男、レストランエリアで捕まったはずの『偽装者』でこっそり逃げ出していたのだが、
セレアナINセレンフィリティのビキニ姿に悩殺されて倒れてしまったのだ。
 そんなことも知る由もないセレアナは首を傾げるばかりだった。

「……雷を落とすべきか迷っていたら、他の方がやってくれたようですね」
 複雑な心境を抱えるのは火村 加夜(ひむら・かや)だ。雷が苦手な人物に、雷を落とすのはどうなのか、と心優しい加夜は考え続けていた。
 勿論、鍵がなければ雅羅を救出することも出来ない。セレンフィリティがやった事は決して間違いではなく、この場においては正しいことだ。
 それでも素直に喜べない。そんな気持ちを抱えていた。
 しかし、フリーが先ほどから放心したように動かない。異常を感じた加夜はフリーに駆け寄る。
 加夜が近づいても何の反応も示さない。余程先ほどの事が衝撃的だったのだろう。今は何も出来ないでいるのだ。
「……大丈夫です。もう、怖くありませんからね」
「……あっ?」
 そっとフリーを抱きしめる加夜。抱きしめられて、ようやく声を絞り出すフリー。
「よーし、よーしです」
 フリーの背中をさする加夜。フリーの姿がパートナーの姿と重なって見え、つい普段やっていることをフリーにしてしまっていたのだ。
「こ、怖かったよぉ……」
「もう大丈夫です。雷はもう降りませんから」
「うわあああああん!」
「怖かったですね、ごめんなさい。でもあなたにもいけない部分はあるんです。反省しましょうね?」
「う、うんっ……!」
「いい子でよろしいです。……鍵は持ってますか?」
「あ、うん。……これ、絶対渡すなって言われてるけど、お姉ちゃんにあげる」
「ありがとう。すごく嬉しい」
「え、えへへ」
「悪い子はいねぇーがー」
 やってきたセレンフィリティの言葉にビクンと体を固くさせるフリー。だったが、セレンフィリティは済まなそうな顔をしてフリーに話しかける。
「いやー悪かったわね。ちょっと脅かしすぎちゃったわ、もう大丈夫?」
「う、うんっ。僕も、ごめんなさい」
「ううん、わかればいいのよ! それはそうと鍵は……」
「ここにあります。失くさずに持っててくれました」
「うむ、えらい!」
 加夜に抱きしめられたままのフリーの頭をなでなでするセレンフィリティ。とても捕獲された者の状況とは思えない。
「それでは他の逃走者の所へ参りましょうか」
「そうね、そうしましょう」
 そう言って、他の契約者たちも集めて次の逃走者が残っているエリアへと向かうのだった。