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スパークリング・スプリング

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スパークリング・スプリング
スパークリング・スプリング スパークリング・スプリング

リアクション




第9章


「うう……眠い……しかしここで眠るワケにはいかない……俺がしっかりしないと……」
 春の嵐が吹き荒れる中、パートナーを背負ってフラフラと走るのは佐野 和輝(さの・かずき)である。
 パートナーのアニス・パラス(あにす・ぱらす)は、その背中ですぅすぅと寝息を立てている。
 春の嵐の影響だろうか、和輝とアニスは強烈な眠気に襲われ、辛うじてスプリングを追っているものの、身体が上手く動いてくれないという状況だった。

 しかし。

「ふふ……ここで眠ってはダメよ」
「ふうあっ!?」
 突然、眠っているはずのアニスから吐息が漏れ、和輝の耳元に吹きかけられる。
 『神降ろし』によって発現した何者かの人格が、アニスを支配しているのだろうか。
「さぁ、このまま移動よ……この身体は眠っているからうまく操れないし……」
「……人格が変わっても、事件の解決には関係なしか……やれやれ」
 しかし、襲ってくる睡魔と闘いながら走る和輝の前に、立ちふさがる集団があった。

 独身貴族評議会『ファットマッスル』の一団である。

 自前のむちむちボディ(控えめな表現)を肌色タイツで包んだその集団は、アニスを背負って存分に動けない和輝を取り囲んだ。
「……何だ、お前らは」
 少なくとこ、この状況を解決してくれる救いの神には見えない。
 仮面やマスクで顔を隠しているものの、全員がギラギラした視線で和輝を見つめているのがわかる。

「ふふふ……いい男ね。ちょっと付き合ってもらいましょうか……」
「え」


 その肌色タイツの一団は、全員が女性であった。
 独身貴族評議会には、女性メンバーも存在する。
 あまりの眠気でアンニュイな憂いを帯びたような和輝の表情に、舌なめずりをするように包囲網を狭めていく。
「大丈夫よ……ちょっとつきあってもらうだけ……何もしないから……」


 これほど嬉しくないハーレムも珍しかろう。


「……明らかな嘘だな……何かする気満点じゃないか……しかし……」


 自分一人ならば包囲網を逃れる自信はあるが、いかんせん眠ったアニスを背負ったままでは動きもままならない。
 じりじりと迫りくる肌色のむちむち集団が和輝に襲い掛かろうとした時。

「ぐわぁっ!?」
 外側から、肌色の包囲網が崩れた。
 和輝を取り囲んでいた集団の外から、別の肌色タイツの男が吹っ飛ばされてきたのである。

「な、何事!?」
 肌色タイツの女性陣が振り返った。
 そこには、別の『ファットマッスル』と戦闘を繰り広げていた御凪 真人(みなぎ・まこと)セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)がいる。

 街中で活動を繰り広げていたファットマッスルたちだが、中には相当の実力を持ったコントラクターもいる。
 そんな相手ではいかに集団であろうともかなうはずもなかった。
 真人とセルファもまた、そうしたコントラクターの一人だった。

「ふむ……邪魔ですか。他人様の邪魔をするならそれはそれ相応の覚悟を持ってやってるんですよね。
 それならばこちらも、全力で排除させてもらいますよ」
 真人は静かに言い放つ。
「そ、そうよ。また評議会の連中は街の人に迷惑かけて!!
 せっかく私と真人もいい雰囲気――いやなんでもない――みんなイイ気分になってるとこなのに!!」
 セルファもまた、肌色タイツの男達を蹴散らしている。


「うにゃ〜!! うるしゃ〜い!!」


 そこに、肌色タイツの女性陣に囲まれていた和輝の背中のアニスが寝ボケて動いた。
 無意識に『稲妻の札』をばら撒いて、周囲に雷を呼び寄せる。

「きゃーっ!!」
「うわぁーっ!!」

 アニスの雷と真人の魔法で次々と倒される肌色タイツのマッスルたち。
 足元でうごめく集団を見据えつつ、真人は言った。

「まったく、迷惑な行為はやめていただきたいものですね」
 そこに、アニスを背負った和輝も同意する。
「ああ、何なんだこいつら……妙な集団だな」
 そこに、セルファも口を開いた。
「ん……こういう事件があると便乗して騒ぐ奴らなんだよね……いくらやっつけても沸いてきて、うっとうしいんだ」
 真人はセルファの横にさりげなく並び、その言葉を継いだ。

「まったく……せっかくセルファと二人っきりなのですから、そっとしておいて欲しいものです」
「え?」
 突然の発言にとまどうセルファ。真人は、普段はこういうことを口にするタイプの男ではない。
「ちょ、ちょっと何言って」
「え? いやだってせっかくセルファと二人きりなんですよ? もっとこう……イチャイチャしたりしたいじゃないですか」


 どうやら真人さん、こっそり春の嵐の影響を受けていたようです。


 「ま、真人!! 何言ってるの!! 人前でそんな……恥ずかしいじゃない……」
 あまりにも堂々とした真人の態度に、セルファはすっかり赤くなってうつむいてしまった。
 そんなセルファの態度もまた、今の真人には通じない。
「はっはっは、どうしたんですかセルファ。照れてるセルファも可愛いですね」
「ちょ、もうやめ……」
「いや、いつものセルファも可愛いですけど」
「……」
 もはやほめ殺しに近いものがある。恥ずかしすぎて何もできなくなってしまったセルファを横目に、和輝はため息をついた。

「やれやれ……勝手にやってくれ。こっちはこっちで事態を何とかしないと……」

 目下の騒動の原因と思しきスプリングを追おうとする和輝。だが、その先には更なる騒動が待ち受けているのだった。


                    ☆


「ふっふっふ……さぁ、大人しく俺様とつきあってもらおうか!!」


 声高に宣言するのは木崎 光(きさき・こう)
 独身貴族評議会のメンバーとして『独身子爵』という地位のある彼女は、今日も順調にひとり身をこじらせていた。
 今日の彼女のターゲットは同じ独身貴族評議会のメンバーである。
 春の嵐にやられて急激に恋がしたくなった彼女は、もうほとんど誰でもいいという勢いでアタックを敢行している。
「そう、俺様は気付いたのさ……評議会に所属しているということは、そもそも恋人がいる可能性がゼロだということ!!
 つまり俺様のよりどりみどりだぜ!!」
「……あ、そうですね」

 その場にいた肌色タイツのファットマッスルは答えた。
 彼の表情は語っている。

 ところで、それが俺に何の関係があるのか、と。

 光は紛れもない女性である。
 あるのだが、不幸なことにその外見は完全に男子。
 現状として、男性にしか見えない光がモテない男子である評議会のメンバーにアタック宣言をしていることになる。
 たまたまその場に居合わせた評議会の男の理解が遅れているのも、まぁ仕方ないと言えるかもしれない。

「ちっ、鈍いヤツだなぁ。おまえ今、俺様と目が合っただろ?
 街角での運命の出会いだよ、いいから俺様と付き合え!!
 今日から恋人同士だ、な!!」
「……あ、そういう意味!?」
「他にどういう意味があるんだよ!? 何だ、照れ隠しか!?」
 強引な光の理論にようやく頭脳が追いついた肌色タイツ。
 その末に、彼の出した結論は、


「いや俺、ホモじゃないですし」


 で、あった。


「俺様だってホモじゃねーーーっ!!!
つか女だーーーっ!!!」



 一瞬にしてブチ切れる光。
 瞬時にして繰り出したソニックブレードが肌色タイツを吹き飛ばす。
「げふぅっ!?」
 それで光の気が治まるわけもない。二度、三度と技を繰り出して逃げる肌色タイツを追いかけていく。
「ひぃーーーっ!!!」
「このやろーっ、モテないくせにハイパービューティー天使なこの俺様の!!
 セクシーダイナマイトボディに食いつかないなんて!!
 実は本当にホモだろう!! 貴様のようなヤツがいるから少子化が進むんだ!!
 ホモは罪だ、罪悪だ!! 断罪してやる!!!」

 「た、助けてーーーっ!!!」

 もはやカップルを襲うどころではない、と逃げ出す肌色タイツ。
 そのままどうにか光の追撃を逃れ、物陰に隠れた。

「ち、どこに逃げやがった!!!」

 何を逃れた肌色タイツ、物陰からこっそりと様子を伺いつつ、一人ぼやいた。
「……行ったか……まったく酷い目にあった……ん、あれは?」
 どうにか光をやりすごした肌色タイツの目に映ったのは、とある数人の女性である。

 それは、鳴海 玲(なるみ・あきら)とそのパートナーの集団であった。
「だから、俺はそういう趣味はないんだって!!」
 玲は春の嵐にあてられてすっかりその気のパートナー達から逃げ惑っている。
 言い寄られるのはいつものことだが、今日は特にしつこい、と辟易しているところだ。

 肌色タイツの目には、玲一人が三人の美少女に言い寄られているように見えた。

「ちっ……なんとうらやましい……よし……」

 ひょいっと、玲とパートナー達の間にボール状のものを投げつける肌色タイツ。
「ん、なんだ!? ――うわっ!?」
 ボールは玲たちの眼前で爆発し、あっという間にピンク色の煙幕を張って、玲たちの視界を塞いだ。


「ふっふっふ……ひとりハーレムなどあまりに羨ましい……ちょっと代わってもらおうか……!!」


 意外な早業で玲を連れ去った肌色タイツ。人気のない路地裏に玲を放り出し、睨みつけた。
「おい、何すんだよあんた!!」
 肌色タイツに負けじと睨みつける玲。そもそも平凡や家庭に育った玲、それほど腕に自信のあるほうではない。
「ふん、女3人をはべらせておいてよく言う……女性同士など非生産的なことより、もっといいことを教えてやろうというのだ、なぁ?」
 じりじりと迫る肌色タイツに対し、玲は叫んだ。
「女同士!? フザけんな、俺は男だ!!」
「ほう……そうなのか……最近は外見だけじゃわからないなぁ……。
 しかし……」
 玲の顔をじろじろと眺める肌色タイツの男。イヤな視線だ、と玲は思った。
「なかなか可愛い顔をしてるじゃないか……どれ……この際男でも……」

 特別男色の気はなかったハズの肌色タイツだが、玲は外見的には女性、この際ちょっと手を出してみようという気持ちになってしまったとしてもまぁ不思議はない。

「な、何言ってるんだよあんた、そういうのはもういらねぇって!!
 男の娘とか男とかに言い寄られるのはもうたくさんだ!!」

 抵抗する玲だが、うまく身体に力が入らない。さきほどの煙幕に何か仕掛けがしてあったのだろうか――。

「ふふふ、どうせ抵抗などできはしない……どうせ叫んでも助けなど来ないのだ……楽しんだほうが得だぞ……」

 と、その肌色タイツの肩をぽんぽんと叩く者があった。
「ん?」
 振り返った肌色タイツが目にしたのは、玲のパートナー、瑞穂 薫(みずほ・かおる)和泉 空(いずみ・そら)、そしてクリス・クロス(くりす・くろす)である。

「……みなさんお早いお帰りで」
 そもそもパートナーは何となく相手の居場所が分かるものだ。単独で相手を連れ込むのは不適当とも言える。
 薫は肌色タイツの男を余裕のある表情で見つめた。
「……ふふふ……玲様をかどわかすとは、いい度胸ですわね……」
 空もまた、可愛らしい笑みを浮かべながら、じりじりと肌色タイツとの距離をつめる。
「さっきハーレムが羨ましいとか言ってたね、じゃあちょっとだけ、体験してみる〜?」
 クリスも同様に、不敵な笑顔で告げた。
「いいわ、あんたにご主人様の代わりが務まるかどうか……」

「私の七尺の妖刀をとくと味わって下さいませ」
「ボクの突き込みに耐えられるかな?」
「確かめてあげる」

「え?」
 肌色タイツは戸惑った。なにかがおかしい。
 3人がそれぞれの下半身を追おう衣服をはだけさせると、外見からは想像もつかないような物体が現れる。
「え、アレ、何? それはナニ? というかみんな女じゃないの?」
 そういえばさっき玲は言ってなかっただろうか。
 『男の娘とか男とかに言い寄られるのはもうたくさんだ』と。

「――!!」
 気付いた時にはもう遅かった。
 人気のない路地裏で追い詰められたのは肌色タイツの男の方だったのだ。


「たーーーすーーーけーーーてーーー!!!」


 路地裏に、哀れな男の悲鳴がこだまするのだった。


                    ☆


 評議会の活動も、終焉に向かおうとしていた。

 街のあちこちで活動していたメンバーは、駆けつけたコントラクターに次々と殲滅されていった。
 そもそも、そのコントラクター自体も春の嵐にあてられて、少々おかしなテンションになっているのだから始末が悪い。

 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)もそんなコントラクターの一人だ。

「……おかしいな」

 一般人に迷惑をかけていた評議会のメンバー、ファットマッスルを目の前に、恭也は呟いた。

「妙に銃を撃ちまくりたい気分だ」

 実際にやったら犯罪者だが、呟くまでならセーフだ。
「いやいや、街中で突然こんな気分になるなんておかしいだろ」
 と、辛うじて残った理性が恭也に呟かせる。まったくその通りだ。

 だが撃ちたい。それが恭也の素直な感情だった。
 そんな時だった。恭也の目の前に一般人を追い掛け回すファットマッスル、肌色タイツの男が現れたのは。

「……なんだ、いるじゃねぇかちょうどいいのが。撃っちまっても文句いわねぇおあつらえ向きの的が」

 と、呟いた時にはもう撃っていた。
「いたたたた!!!」
 どうやら、撃たれた側もコントラクターだったらしい。ダメージは大きいが、即死はしないで済みそうだ。
「うひゃひゃひゃ!! いいねぇ、もっと撃たせろよ、なぁ!!」
 春の気にあてられて、最高にハイテンションになっていく恭也。

 と、そこに更なるカップルが現れた。

「お待ちなさい……!!」

 建物の屋上、ちょっと高いところから声を掛けたのは、結崎 綾耶(ゆうざき・あや)である。
 その声に、恭也が答える。
「あん? なんだい、邪魔しようってのか……!?」
 せっかく人がハッピーになってるってぇのに、と恭也は綾耶を睨みつける。
「ひぃっ、誰か知らないがそこの人! 助けてくれ!!」
 肌色タイツは助けを求めた。心優しい女性が、敵であってもせめて手心を加えるべき、と説きに着てくれたに違いないと。

 だが、綾耶は静かに首を横に振った。

「いいえ……そうではありません」
 ちゃき、と綾耶はプティフルスティックを構えた。
 嫌な予感がした。綾耶はその可愛らしい瞳をまっすぐに見据えて、真剣なまなざしでこう叫んだ。

「私は綾耶、結崎 綾耶。全ての人類の敵、独身貴族評議会に地獄を見せる女です!!
 そもそも人様に迷惑をかけないと恋愛活動もできないような人々は、今ここで死なせてあげたほうが本当の親切というものなのです!!」


 と、宣言する綾耶さんは今日一番のぐるぐる目なワケで。


「ひいいいぃぃぃっ!?」

 思わず逃げ出す肌色タイツだが、それを黙って見逃してくれる綾耶ではない。
「――遅いです」
 肌色タイツに一瞬で回り込んだ綾耶は、即座に荒ぶる力を発動させ、構えたプティフルスティックで攻撃を繰り出す!!
「さぁ、敵は排除、排除です!! 目!! 耳!! 鼻!!」
「ぐぎゃああぁぁぁっ!!!」
 叫び声をあげる肌色タイツ。さらに、恭也の銃撃が襲う。
「おお、やるじゃねぇか姉ちゃん!! 最高にハイ、ってやつだぁーっ!!」
「のおおおぉぉぉ!!!」

 その地獄の惨状をぼにゃり眺めているのは、綾耶のパートナー、匿名 某(とくな・なにがし)である。

「あー……綾耶はやっぱり可愛いなぁ……」
 この状態で可愛いという感想が出てくるあたり、やはり春の嵐の影響でおかしくなっていると言わざるを得ない。
「うーん、できることなら即座に持ち帰って全身余すことなく可愛がりたいところだが……」
 よっこいしょ、と某は立ち上がった。
 せっかくだから、綾耶の手伝いでもするか、と肌色タイツに襲い掛かる。
「えーと、耳、目、鼻だっけ?」
 と、則天去私を順番に叩き込む某。だが、そこに綾耶の指導が入る。
「違います某さん、目です! 耳です!! 鼻です!!!」
「え、鼻だろ? 目だろ? 耳だろ?」
「違いますってば、目ですって! 耳ですって!! 鼻ですって!!!」


「うぎゃあああぁぁぁ!!!」


 もはや叫び声をあげることしか出来ない肌色タイツである。

 そして、街のあちこちで繰り広げられる戦闘に終止符を打つべく、街の上空を飛び回っている少女がいた。
 秋月 葵である。

「よっし、そろそろ集まってきたね……!!」
 彼女は、上空から各地の戦闘にすこしずつ手を出して、戦場を街の一角に集めていた。数だけはいる評議会のメンバーを一度に集めて一気に殲滅する作戦である。
 真人や和輝が退治していく相手も、光が追い掛け回す新たな肌色タイツたちも、綾耶と某、恭也がひたすらに痛めつけているメンバーも、街の一角に集められようとしていた。

「……よし……私もなんだかフワフワしてるけど、街の平和を守るために頑張るよ……!!」
 何とか集中して、魔力を研ぎ澄ます葵。狙うのはもちろん独身貴族評議会。


「いっけぇー!!!」


 渾身の力を込めて放たれる数発のシューティングスター。
 それは狙いを過たず、正確に敵を打ち抜いていく――筈だった。

「え?」
 まず、葵が耳にしたのは自分よりもさらに上空からの叫び声だった。


「あにゃあああぁぁぁっ!!?」


 葵のシューティングスターによって召喚されたのは、ナン・グラードによってブン投げられて、アヴドーチカ・ハイドランジアの必殺バール治療によって星になった猫の獣人、山田であった。

「あーれえええぇぇぇ!!」

 そして、茅野瀬 衿栖と四葉 恋歌によって星にされた蘭堂 希鈴も後を追って飛来する。

「うわあああぁぁぁっ!!?」

 さらに、瀬山 裕輝によって星になっていた扶桑の木付近の橋の精 一条もまた墜落してきた。


「こ、こんなの呼んでないよーっ!!?」


 自分の魔法により次々と飛来する流れ星たちに、葵は戸惑いの声をあげた。

 しかし、山田や希鈴、一条は次々と戦場の評議会の上に落下し、巨大なクレーターを作っていく。
 中でも、ヨーグルトの効果で太った流れ星、一条の威力は絶大であった。

「うぎゃあああぁぁぁっ!!?」

 まるで爆弾が落ちたかのような衝撃が周囲を遅い、評議会のメンバーを完全に鎮圧した。

「ま、まぁいいか……結果オーライってことで……でも……」

 呟く葵だが、これで今日の事態は解決しないことは彼女にも分かっていた。
 ふと、まだ止まない春の風を頬に感じて、空を見上げる葵だった。


「スプリングちゃん……大丈夫かな……」